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☆★STAR★☆
3

姉に腕を引き上げられて俺はよろめきながら起ち上がった。

すると反対側の手首を座ったままの浜田君に掴まれた。


「歩夢の手を離しなさい。連れて帰れないじゃない」

言葉通り姉は上から目線で浜田君に言うが、彼は無言で俺の手首を掴んでいた。

対面側にいる長澤さんがそんな俺達を見て、手に持っていたお猪口をテーブルに置いた。

「帰るなら、アーミン一人で帰れば?あゆむ君はおいていきなさい」

長澤さんはテーブルに肘をつくと頬杖をして姉に告げた。

その言葉に便乗した浜田君は俺の手首をグイグイと引っ張る。

姉も負けじと俺の腕を引っ張る。

俺はまるで綱引きの綱状態・・・


「歩夢先輩、帰らないで下さい。もう少し一緒にいましょう?」

寂しそうな顔をして俺を見上げる浜田君…。


そんな事を言われても、か弱い俺が猛獣ゴリラ女の姉に逆らえる術も無い。

そりゃあ俺だって、愛しの寿司をまだ食べていないから今帰るには惜しい…、だがしかし、姉は帰ると言ったら帰るタイプの人間だ。

「あたしが帰るって言ったら帰るのよ。もちろん歩夢も連れて行くわ!」

ほらね。

「あんたら野獣どもの中にウサギ一匹残して置けないでしょ?愚弟でも一応は私の弟なの!まだ、歩夢を喰わせる訳にはいかないのよ」


ウサギって俺の事?

・・・姉が声を張り上げて言うと、長澤さんが挙手をした。

すると姉が発言を許した。…どっちが上司だかわからない。


「“まだ”って事は、いつかは喰っても良いのかい?アーミン公認で自分のモノに出来るって事?」

「…好きに解釈して構わないわ。ただ、本当に弟を大切にしてくれる輩じゃないと認めないわよ?歩夢争奪戦の勝者は誰になるのかしらぁ〜♪楽しみだわ」

鼻歌まじりの姉。

「歩夢先輩を大切に思う気持ちなら誰にも負けません!って、事は歩夢先輩は俺と結ばれる運命にあります」

結ばれる?
俺と浜田君がッ!!?

何を言っているんだ。

俺は話についていけずに、ただ唖然としていた。


・・・すると浜田君の発言を聞いた長澤さんが鼻で笑った。

「青臭いガキが何言ってんだか。大切にする!って言うのは簡単だよなぁ〜、愛する相手を養えるくらいの金をテメーで稼げるようになってから出直して来い」

「オッサンは黙ってて下さい」

「俺はオッサンじゃねーよ糞ガキ!ピチピチの23歳だッ!ガキは家帰ってママの乳でも吸ってろボケ」

「んだとッ!?ジジィッ!!」

俺の腕を離した浜田君はテーブルの下に手を差し入れた。

ま…まさか……ちゃぶ台返しをするつもりなのかッ!?
昭和の親父みたいにドッカーン!と、テーブルをひっくり返す気なのかッ!?

だが、すかさず慎吾さんがテーブルを抑えてくれた。

ひとまず散乱は免れた事に俺は息をはいた。

しかし、何だか非情にヤバイ雰囲気です!
浜田君と長澤さんがテーブルを挟んで険悪ムード…、今にも核戦争勃発な危機感が漂っている。

それを見て、慎吾さんが必死で二人をなだめている。

さすが慎吾さん、見た目は一番ヤクザっぽいが誰よりも出来た人間だと思う…それに引き換え姉ときたら……喧嘩しそうな二人を見て目をキラキラと輝かせている。

おそらく姉はその戦争が見たいのかもしれない。

真輝歩美は魔女…いや、正真正銘の悪魔だと思います。


「…悪魔」

俺が軽蔑の眼差しで横にいる姉を見て、小さな声で呟くと

「ありがとう。自分の性格が歪んでいる事は自覚してるわ。…そう言うアンタは小悪魔ね!さすが我が弟、男どもを無自覚に骨抜きにするなんて凄い才能だわ」

などと、意味不明な事を言われた。

「俺のどこが小悪魔なんだよ?悪魔の弟だからって同じ魔族にしないでくれ!俺と姉は一つも似てないと思います」

「確かにアタシはアンタと違って、ダサくもないし、田舎臭い顔してないしナイスバディで溢れる魅力が留まる事を知らないけど、アンタも私と同じく真に輝いて周りを魅了する素質があるのよ?…悔しいけど、歩夢は私以上にスター性が有るの」

「はぁ?!何言ってるの?ネーちゃん…寝言は寝てから言ってよ。俺が姉よりスターせいがある?そんな訳無いだろう、馬鹿馬鹿しい」

「馬鹿はアンタよ!いい加減自覚しないさい馬鹿!アタシが言うんだから間違いないわよ馬鹿!そろそろ覚悟を決めないと、急に襲われて傷心するのはアンタなんだからね!?この愚弟めッ!!」

姉に胸ぐらを掴まれた。

く…首が苦しい!

「暴力ヘンターイ!・・・じゃなくて、暴力はんたーい!」

俺は目前の姉に震える声でささやかな抗議をした。

「なさけないッ!女に胸ぐら掴まれて抵抗の一つも出来ないの?・・・馬鹿アユムッ!帰って特訓よッ!」

「と、特訓って何!?」

胸ぐらを掴んでいた手を離してくれた姉は、再び俺の手首を掴んだ。

女は女でも雌ゴリラの姉は、片手で襖をピシャンッ!と乱暴に開けて俺を外へと連れ出す。



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