☆★STAR★☆
まさかの5人
「し、慎吾さんッ!!?」
スキンヘッドに顔にある傷が印象的な強面の男性、強烈的な外見をしたこの方は国文慎吾さん、姉の中学時代の元カレだ。
「歩夢くん!?」
慎吾さんも三白眼を広げて驚いた顔をして俺を見た。
「歩夢せんぱーい」
そして、少し遠くから俺を呼ぶ声がして、俺・姉・慎吾さんの三人が振り向くと浜田君が駆け寄ってくる。
「歩夢先輩が迷子になってないか心配で出てきました…ッって、慎吾さんッっ!!!?」
しかし俺と一緒にいる人物を確認して浜田君の声が裏返った。
こんな浜田君の声は始めて聞いた。
「何で純哉くんまで?」
浜田君を確認した慎吾さんも少し驚いた顔をしていた。
俺達4人は廊下でお互いの顔を確認しながら暫し無言だったが、姉が口を開いた。
「廊下で立ってると他のお客さんが来た時、迷惑になるから、とり合えず皆、中に入りなさい」
姉達がいた個室に案内された。
そして、またしても俺は度肝を抜かれた。
個室にはもう一人、俺の知っている人が居たからだ。
「なっ、長澤さん!?」
「あれ?歩夢君!?アーミンに呼ばれてきたの?…アーミンもたまには社長孝行してくれるじゃん〜♪」
「違うわ、今偶然、廊下で会ったのよ。アタシが社長の為にわざわざ歩夢を呼ぶわけないでしょ?社長孝行して欲しいなら、もっと給料増やしてよ」
熱燗をチビチビ飲んでいた長澤さんに対して即答する姉。
社長に対しても姉の態度はデカかった。
「もっと給料増やしてって言うけど…、アーミンがこの前スタジオで起こした乱闘事件を揉み消すのにいくら使ったか分かってる?弁償や慰謝料、根回しに使った金額を合わせると結構な痛手だよ?」
長澤さんは、またしても熱燗をチビチビ飲みながら言う。
ってか、ネーちゃん…乱闘事件なんかおこしていたのか…。
「あれは、あの男が悪いのよ!」
「流石に俳優さんの顔面に右ストレートするとは思わなかったから驚いたよ。彼、イケメン俳優なのに前歯が折れてたじゃん?…まぁ、でも面白いのが見れたから俺個人としては全然OKなんだけどね」
「「「いいのかよッ!?」」」
話を聞いていた俺・慎吾さん・浜田君が思わず突っ込みを入れてしまった。
「いいのよ!」
長澤さんの代わりに姉が答えた。
そして姉は俺達を席につかせると長澤さんの隣に座り片手だけで社長のお猪口に手酌をした。
豪快に酒を注ぐから中身が零れて社長である長澤さんの指を濡らしていたが、姉も長澤さんも全然気にしていなかった。
長澤さんたちの対面側で、左右を慎吾さんと浜田君に囲まれた配置の俺だったが、思わず身を乗り出して御酒が零れたテーブルをお手拭で拭いた。
ネーちゃん…上司にお酌をする気配りをする事も確かに大切だが、あなたが酒をこぼしてビチャビチャになったテーブルも拭いてくれ!
テーブルを拭いている俺の手の上に長澤さんの手が重なった。
「ありがとう歩夢君、あゆむ君は誰かさんと違って天使だよ。悪鬼と血を分けた兄弟とは思えないくらい可愛い」
そう言った長澤さんの手を姉が抓りながら…
「その悪鬼って確実にアタシの事ですよね社長?そんなイヤらしい手つきで歩夢に触ってんじゃネーよ」
姉は、俺の手を撫でていた社長の手を強引に剥がした。
「歩美先輩、有難う御座います」
その瞬間何故か浜田君が姉に対してお礼を言った。
浜田君の発言を聞いた長澤さんは眉尻をピクリと動かし対面にいる浜田君を見ると
「やっぱり君も?」
と、少し低い声で浜田君に言った。
すると浜田君もなんだか黒いオーラを放ちながら
「はい、俺達ライバルのようです。何せ魅力的ですから敵は沢山居ますが、俺、オッサンには負けませんよ?」
口元だけ笑って見せた。
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