☆★STAR★☆
ピッチャー
浜田君はゆっくりと地面に額を近づける・・・
俺がそんな浜田君に目を奪われているとき、頭上でゴッ!!と、鈍い音がした。
そして俺の足元に中身の入ったスチール缶のジュースが一本転がっていた。
浜田君も俺も転がる缶ジュースを唖然とした顔で見ていたら、俺を拘束していた不良さんが前方向へ崩れ落ちた。
ナイフは握られたままだった。
「「!??」」
当然、俺も浜田君も何が起きたか分からず呆けていると・・・・
「スミマセーン!ジュースのプルタブを開けようと思ったら手が滑ってしまいましたーッ!!大丈夫ですかー?」
と、大声を出しながら何十メートルも離れた所から手を振りながらコチラへ向かって走ってくる黒スーツの男性。
俺も浜田君も思ったはずだ。
どんな開けたかしたら缶が飛ぶんだよッ!!ってか、あんな遠くから缶を投げたのかッ!!?
・・・と。
浜田君は立ち上がるとズボンを叩き、ゆっくりと俺の元へ来た。
「あゆむ先輩!お怪我はありませんか!?俺が油断したばかりに歩夢先輩を危険な目にあわせてしまった…本当に申し訳御座いません!!」
苦しそうな顔をして俺に謝罪した。
「大丈夫だよ!俺無傷だし、ちょっと怖かったけど全然気にしてないからそんな顔しないでよ。逆に足手纏いな俺のせいで嫌な思いをさせてゴメン」
「そんなッ!あゆむ先輩は謝らないで下さい!」
「じゃあ、浜田君も謝らないで?結果的にお互い無事だから、それで良いじゃん!」
俺が笑顔を向けると浜田君は無言で俺を抱きしめた。
強く、強く俺を抱きしめた浜田君はすぐに俺から身体を離すと泣きそうな笑顔で
「あゆむ先輩には敵わない。本当に偉大です」
と、言った。
そして、缶ジュースを不良の頭にヒットさせたスーツの男性も少し息を切らせて俺の元まで来た・・・・
「やぁ!真輝歩夢さん!!昨日ぶりですね」
爽やかな笑顔で、かけていたメガネを外した彼を見て俺は一瞬誰かわからなかったが・・・
「あっ!慎太郎さんッ!!!」
俺は声をあげて驚く。
え?何で!?と、驚いていると浜田君も疑問の表情をして
「誰?知り合いですか?」
と、俺に聞いた。
「あぁ、うん。こちら、慎太郎さんと言って俺も実はよく知らないけど・・・姉の事務所の社員さん?」
俺が微妙な紹介すると浜田君は小さく頭を下げて挨拶した。
そして、浜田君は慎太郎さんを見ると
「明らかに狙って投げましたよね?助けてくれてありがとう御座います。事務所の社員さんって、就職先それで良かったんですか?プロの球団にいても不思議ではないくらいの凄い命中力と尋常じゃない肩をお持ちですよ?」
浜田君は地面に転がっていた、缶ジュースを拾い上げて慎太郎さんに渡した。
スチール缶は凹んでいた。
慎太郎さんは浜田君からジュースを受け取ると笑顔で
「ありがとう。やはり狙って投げたのわかりました?…乱闘事件を起して辞めちゃったけど昔、少しだけ野球をやっていたんだ。ちなみにピッチャー」
慎太郎さんは肩をグルグルと回して上機嫌で答えた。
俺はどこからツッコミを入れて良いのか迷った。
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