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☆★STAR★☆
げこう


やっぱりバイク最高!
風を切って進む感覚が気持ち良くてテンションが上がる。

杉田君は市街地とは逆方向の道を走っていた。
この方向だと多分、海へ行くのかな?

夕焼けに反射してオレンジ色に輝く海を見ながらバイクで潮風を抜けて走ったら凄く気持ち良いんだろうなぁ〜。
俺は今から向かうであろう場所へと思いを馳せていた。


それにしても杉田君って俺よりも年下なのに良い体してるな。
羨ましいぞコンチクショー!
はぁ〜・・・俺も筋トレとかしよう・・・。

腹筋が自然に割れているとか憧れだよね。

俺は何気なく杉田君のお腹を触った・・・そしたら杉田君が一瞬ビクついた。

信号待ちになった時に杉田君が後ろを振り向く

「歩夢ちゃん?!」

「あっ!ごめん、運転に集中できなかった?・・・腹筋とか羨ましいなぁ〜と思って、つい触っちゃった。俺も杉田君みたいに服越しに触っても筋肉があるって解るくらい男らしい体になりたいよ」

「・・・歩夢ちゃんは、そのままで良いと思う」

「えぇ〜?でもやっぱり男なら筋肉つけて強くなりたいじゃん?」
「ふぅ〜ん」
杉田君は賛成も否定もせずに信号が変わったからまた前を向いて走り出す。

身長も高くなって、体も逞しくなったら彼女とか出来るかな?・・・きっと出来るはずだ!
俺のアホな妄想が始まる。
スーパーマンみたいにムキムキになって美女とかをお姫様抱っことかしたいじゃん・・なんて事言ったらアホだと思われるから言葉にしないけど、今の俺が美女をお姫様抱っこなんかしたら絶対腕がプルプル震えると思う。そもそもこんな細い腕や体では、女性を抱き上げる事すら出来ないかもしれない。

やはり男なら目指すはダンディーだZE★

将来はムキムキマッチョの胸毛モッサモサで褐色肌の逞しいダンディーになってやる!未来の俺のアダ名は【ゴンザレス】、スーパー逞しい男!!・・・と妄想するが、頭の隅ではそんなこと無理なのも承知のうえだ。
そもそも俺の父さんは色白で、身長は高いものの体系は細身だ。しかも胸毛なんて一本も生えていないツルツルボディー・・・つまり遺伝的に俺が理想とする男性になれる確立は非常に低い。
しかも悲しい事に唯一望みの有る身長だが、俺は中三以来1センチも伸びていない。
毎日牛乳とマグネシウムを摂取しているのに、身長は伸びずに骨密度だけが健康的になっている気がする。

・・・なんてこったい。

はぁ〜

俺は小さくため息をつくが、それすらもバイクのモーター音にかき消されてしまう。

腕に伝わる杉田君の男らしい体に俺は再び溜息をついた。

今朝、俺を軽々と抱き上げた杉田君が少し憎たらしく思えた。身長だって俺よりも高いし、俺よりも年下なのに大人っぽいし、カッコイイし・・・何より女子にモテるッ!!

神よッ!何て不公平なんだ!よくよく考えてみたら杉田君もキングも慶斗も加藤も、友達皆俺とは間逆じゃねーかよ!

イケメンなんて女の目に映らない存在になってしまえ!俺が天才だったらイケメンだけが透明化して見える何かを開発してやる。・・・その“何か”すらも想像できない俺はやはり天才とは程遠い存在だ。

まぁ・・・ただ単に全ては、同性として劣等感を勝手に感じてしまったカッコ悪い俺のジェラシーなんだけどね。

俺の心が馬鹿馬鹿しい嫉妬で渦巻いているときだった。

「歩夢ちゃん!右見てッ!」

杉田君がモーター音に負けじと叫んだ。言われた通りに右を見てみると・・・


「わぁ・・・すごい」


思わず声が漏れた。
傾いた太陽が水平線をキラキラと照らしている壮大な海が一面に広がる。
赤とオレンジのグラデーションを描く空と、宝石のように光る水面があまりにも綺麗で、幻想的だった。

杉田君が防波堤の側にバイクを止めて俺に手を差し伸べる。

「ありがとう杉田君」

俺は杉田君の手を握ってバイクから降りようとしたら、かなりダサイ事にステップから足を踏み外してしまった。

「うわぁッ!」

地面に激突するっ!と思って目を瞑った俺に予想していた衝撃は無かった。

ゆっくり瞼を開くと俺は杉田君の腕の中に居た。

「助かった。・・・ありがと杉田くん」

「歩夢ちゃんのドジっ子〜♪」
目が合った杉田君は笑いながらさらに俺を強く抱きしめた。

「ちょっ!離してよ杉田くん!・・・ぅワッ!!」
いきなり杉田君に抱き上げられて、落書きだらけの防波堤に座らされた。

「見て歩夢ちゃん、今が一番綺麗な時だから」

杉田君が水平線を見たから俺もそこを見た。


「・・・!」


本当に綺麗だった。
赤く染まった空と黄色く光る太陽、逆光で黒く染まるカモメが光に吸い込まれていく様に飛んでいく様。

夕焼けの美しさをココに凝縮したんじゃないかって位綺麗で、すごく幻想的な暖色に染まった世界

俺は隣にいる杉田君を見てさらに息を飲んだ。

潮風に靡くサラサラの赤髪が、夕日に照らされて光っている端整な彼の顔が、あまりにもこの世界と融合していて・・・美しかった。


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あきゅろす。
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