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▼芳香の色
親しい学友の買い物に付き合って、雪のちらつく中、白亜の町並みを歩いた。
今回の目的は間近に迫っている決戦日に関する品定め、
もとい、ホワイトデーに贈る品を探すことだ。

学友には交際してまだ日の浅い恋人が居る。
僕も何度か研究棟の渡り廊下で見掛けたことのある顔だ。

その彼女に似合う香油を見付けたいとの要望で
街の裏手にある香油薬屋へ足を運んだ。
へたにショッピングモールやデパートを探しまわるよりも
こうした専門店に直接赴く方が合理的だろう?


…しかし噂には聞いていたが、実際に足を踏み入れると凄い場所だな。
香油の以外にも香木や線香のたぐいが狭い店内にひしめきあっていて
その至るところに甘い香りが立ち込めている。
客がそれぞれに香を試すたびに白い煙が燻っていた。
あまり長居をすると酔いそうだ。


等間隔で棚に並んだ小瓶のなかから気になるものを適当に選び、試しに嗅ぐ。


僕がほんの数秒、乾燥したタツノオトシゴに目を向けていた隙に
学友はというと「媚薬」とラベルの貼られた瓶を凝視していた。
近付きざまに「妙なことは考えるなよ」と釘をさすと
慌てて言い訳をしてきたがどうだかな。

結局、購入品はラベンダーの蒸留水に決まった。
香油じゃないじゃないかという突っ込みは無しなんだそうだ。
別に何も言っていないぞ。


まあしかし、あの落ち着いた香りなら学友の恋人にも違和感なく纏えるだろう。


僕も何かホワイトデーの品を考えておかないといけないな…

個人的に今日見た限りでは気絶から復帰させる通称「気付け薬」が目を引いた。
アンモニア、薔薇水、どの薬が一番手早く効果があるのか興味がある。

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