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▼一人の夜と洋酒
乃梨に貰ったチェリー酒のボンボンを銀の皿に盛り付けた。

…やっぱりな。

公園通りのレストランでこれを受け取ったときから
食器は絶対にこの皿にしようと考えていたんだ。

これを書いている今、部屋の隅にともした蝋燭の炎が
銀皿の縁を飾った薔薇の彫りに反射して美しい。
僕の予想に狂いはなかった。


読みかけのまま栞を挟んでいた『老人と海』を開きながら幾つかつまんだが、
ブランデーの香りが口の中に広がって美味しかった。
残りは明日いただこう。


…しかし食の好みというのはいつ変わるんだろうな。

僕は元々アルコールの入った菓子はそんなに得意じゃなかったんだ。

まだ父さんが生きていた七つか八つの頃に、
書斎の机の引き出しをこっそり開けて
金の包み紙に巻かれたチョコレートをくすねたことがある。
ウィスキーボンボンだとは知らなかったものだから
口に放った瞬間に吐きそうになった。

懐かしい話だ。

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あきゅろす。
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