FirstMain Diary Link Mail
▼新生活の手引き書
春から拓朗と同居をすることにした。
一日二日の宿泊はともかく、誰かと長期に渡って生活を共にするのは初めてだ。
なので正直…少し心配もしている。

例えばお互いのプライバシーは守られるのか、だとか
喧嘩をした場合に(僕達はたまに意見が食い違う)行く先はあるのか、だとか
家事の分担はどうするか、僕の書棚を置くスペースは確保できるか、
冷蔵庫のプリンを監守するには?玉子の保存場所はどうする。
靴下の畳み方は統一するべきか?
二人とも留守にした場合の猫に餌を与える人間は?

ざっと思い付くだけでも問題点が溢れて止まない。

近しい仲とは言えど、一定の規律は必要だろう。
…などと考えてしまう僕は
杏子のEメールに書いてあったとおり「石頭」なんだろうか。


しかし現実的な話、家賃が半分浮くのは魅力的だ。
まあ、僕はそれほど金遣いは荒い方ではないと思うが
この不安定な時代、貯蓄はできるだけしておくに越したことはないからな。


それに、これだけ書いておいて言うのも何だが
あの男のことは気に入っている。
そうでなければ誰が好き好んで
二年前の約束を律儀に守るものか。


まあ確かに、話をしていると多少能天気過ぎるところはあるし、
無駄に心配性で見当違いなことを口にしたり
品の無い下ネタじみたことをのたまったりもするが
根は真面目な努力家で面倒見の良い真っ直ぐな男だ。

気に入っている。

僕は神経質で短気な性格なので
すぐに皮肉や小言を口にしてしまうわけだが
縁を切らずに済んでいるのは
拓朗が気性の穏やかな人間だからなのかもしれないな。

…いや、きっとそうだろう。

よくよく考えてみれば付き合いの長い人間は皆そうした奴等ばかりじゃないか。

[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!