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turn>> LEN





「ねぇねぇレン!?」


僕の片割れと同じ姿のリンは、まるで僕の知るリンとは違っていた。


無邪気とはこの子の様な事を、本当は言うのだと思った。


だって、あまりに目の前にいるリンは子供みたいなんだ。

僕の言葉や周りの言葉に、一喜一憂してはコロコロ表情が変わる。

よく笑うし、とても元気だし…


言ってしまえば14歳には見えないんだ。


僕はそんなリンの様子に、いちいち反応してクスリと笑う。


「あー!!リンは子供だとか思ってるんでしょ!?」


ほらまた、そうやって頬を膨らめて怒ってみせる。

見てて飽きないな。


「いや、思ってないよ。」

「もーどっちのレンもそうやってリンを子供扱いする!!」


そう言えば、僕の片割れもこんな事で怒っていたっけ。

でもやっぱりどこか違うな。


「いや、リンは素直で可愛いなって思ってただけだよ。」

「可愛いー?」

「うん。」


僕が頷けば、リンは少し恥ずかしそうに眉を上げて笑う。


本当に素直だなと、心から思う。


「レンもこっちのレンより、素直だよ!!」

「僕が?」

「うん!!こっちのレンはすぐ怒るし、カッコつけだし、リンを子供扱いするんだよー!!」


こっちの僕もどうやら、僕より随分と感情豊かのようだ。

少しだけ羨ましい。


「リンと『レン』は愛されてるんだって、見てるだけで解るね。」


そう言えば、キョトンとした顔で首を傾げる。

この体に入って感じたのは、この家の人達の温かさ。

小さな頃を少し思い出すような、優しい空気。

そして何よりリンの『レン』への温かい思い。


「リンは『レン』の事、大好きなんだね?」


僕の問いに、ちょっと目を丸くして次に歯を見せてへへと笑う。


「うん!!大好き!!」


何の迷いもなく、思った事を口にする。
そんな姿はとても愛しく思う。


「『レン』もリンの事を大好きなんだと思うよ。」

「本当ー?」

「あぁ。体は彼のだからよく解る。」


僕の言葉を聞くと、今までで一番満開の笑顔をリンは見せる。

本当にこの二人は繋がりあっているんだな。

僕達みたいに…。


「レンも『リン』の事を大好きなんでしょ?」


リンが問う言葉に、僕は目を細めて笑う。


「もちろん大好きだよ。」


僕達の間では口にしたことのない、なんとも優しい言葉に自分で言って少しくすぐったい。

僕の言葉に何だかリンはすごく嬉しそうに目を輝かす。


「うん!!きっと『リン』もレンのこと大好きだよ!!」


同じ姿の君に言われると、それは何とも真実味がある。

僕の片割れに言われたみたいで、思わず頬が熱くなる。



違う世界だとしても、君がこんなに無邪気に無防備に笑える世界があるんだね、リン。

本当に夢のような世界で…

なんでかな…ちょっとだけ泣けてくるよ。



その時、急に頭に雑音が響く。

そして目の前が真っ白になった。



窓から射し込む光で目を覚ました。

そこは、いつものベッドの上だった。

何だか妙に現実味がある、不思議で優しい夢を見た気がする。

けど、思い出せない。

まぁ、夢なんてそんなものだ。

ただひとつ頭に残るのは、無邪気に笑うリンの顔。

それは何だかいつもより、明るくて元気な笑顔。

僕は口元で少し笑う。

さぁ…僕の片割れに会いに行こうか。


大好きな、リンに…。




…―――




「―――…ン…レン!!」


リンが呼ぶ声に、オレは薄目を開く。

部屋の蛍光灯が眩しい。

何だか頭がズキズキ痛い…。

長い間眠っていたみたいな、そんな感覚。


「なんだよリン…そんな耳元で騒ぐなよ…」


頭を抱えながら起き上がれば、リンは目を見開いてオレの顔を見る。


「なんだよ?」

「…レンなの?」

「はぁ!?」


意味が解らない問いに、オレは眉を寄せて首を傾げる。


「そっか…あっちに帰っちゃったのか…」

「何言ってんだ…うわ!!」


そんなオレの言葉を遮って、リンが急に飛び付いてきた。


「おかえり!!レン!!」

「はぁ!?だから何の話だよ!?」


急に抱きつかれたので、驚いて声が上ずる。

だけどリンはそんなオレを気にも止める様子もなく、エヘヘと笑った。


「へへへ…内緒!!」

「はぁ?」


嬉しそうにそんな事を言うリンに、クエッションマークが飛びまくる。




ただ何だか変な気持ちが胸にはあった。


優しくて、温かくて、切なくて、泣き出しそうな思い…


これはいったい誰の気持ちなんだろうか?






それは夏の日の、
不思議な不思議な1日の物語…―――。



あとがき>>ending...


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