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turn>> MEIKO・KAITO





turn>> MEIKO



「さて!!とりあえず、お昼ご飯でも作りますか…」


レンとリンのやんややんやした話を聞いていたら、時刻は昼間近。

仕切り直した様に私はそう言って、キッチンに向かった。

うん。しかし…こんな事ってあるのね。

まぁ、私達VOCALOIDに心がある時代だもの。

何が起こってもおかしくないかも。


「あっ、あの…。」


エプロンを巻いて支度を始めると、後ろから声が聞こえた。


「あら、レン。どうしたの?」

「あっ…ジュースありがとうございました。」

「あぁ!コップなんて置いとけば良かったのに。」

「いえ…。」


しかしどういう訳か、このレンは私に対して妙にたどたどしい態度を取る。

違う世界に来たからって、戸惑ってる訳じゃないみたいだけど…。


「レン、もしかして私を怖がってるの?」


思った事をサラッと口から出すと、レンは驚いた様に目を見開いた。


「い、いえ!!そんな事ありません!!」


しかしあの生意気なレンの敬語は、くすぐったいと言うか…気持ち悪いわね。


「じゃあ、何?」


少しだけ眉を寄せて言えば、レンは気まずそうに私から目を反らす。


「僕の世界にも、メイコさんがいるんです。
彼女に僕は…許されない事をしたから…」


そう言うレンは、悲痛そうに眉を寄せた。

あぁ…成る程。納得。

私の顔を見て、怯える目をするのもわかるわ。


「よし!解った!!
じゃあレン。ご飯作るの手伝いなさい!」


話を無理矢理に打ち切るように手をパンっとならす。

レンはまた目を見開いた。


「召使さんならお手伝いくらい出来るでしょ?」


そう笑えばレンは、少し目を細めてクスリと笑う。


「なによ?」


さすがに無理があったかと、ちょっと恥ずかしく口を曲げる。

するとレンは眉を下げて、目を細めて見たこともない優しい笑顔を見せる。


「メイコさんは優しいですね。」


そんな風に嘘がない言い方で、そんな事を言われるなんてなかなかなくて…
思わず胸が高鳴った。



あのレンなんかにこんな一瞬でも、心を惑わされるとは不覚だわ…!!


あのバナナ坊主!!


こんな屈辱味わわせて、戻ってきたら殴ってやる!!


私はそう、心に決めた。





turn>> KAITO



「カイト兄は王子様なんでしょー!?」


と、リンちゃんがキャッキャッ笑って僕を見る。


「お兄ちゃんが王子様って…」


ミクも僕の顔を見て、皆まで言わずにニッコリと笑う。

うわぁ〜その笑顔の裏で何考えてるか、お兄ちゃん知りたくないや。


「ねぇレンくん!?」


キッチンからお皿を持って戻って来たレンくんに、僕は食らい付く。


「僕はちゃんと王子様なんだよね!?」


必死にそう言う僕に、レンくんは目を丸くしてから、軽く頷く。


「えぇ。僕もまだ会った事はありませんが、とても立派で人望も厚い素晴らしい方と聞いてます。」


優しい声でそう言うレンくんの言葉に、僕はうんうんと頷く。


「ほら!!ねっ!!」


僕が得意気に振り向けば、ルカちゃんと目が合う。


「あぁ、ですよね。」


ルカちゃんは首を傾げてクスリと笑う。


「こっちのカイトさんからは、考えられないですね。」


言っちゃったー!?
ミクが皆まで言わない事をサラって言うとか、さすがルカちゃんだよー!!


僕が半泣き状態でレンくんを見ると、レンくんは優しく微笑んだ。


「そんな事ありませんよ。
カイトさんは優しくて素敵な方じゃないですか。」


曇りない眼でそう言うレンくんは、輝いて見えた。

あぁ…これが本当にあのレンくんなの!?

いつも僕をバカだ、アホだとさげずむ弟だと言うのか!?

おかしいな…何だか視界が滲むや…。


ごめんね、レンくん。


お兄ちゃん一瞬、このまま戻ってくんなって思っちゃったよ!!




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