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それはとっても不思議な…
1日の話…―――。




「レーン!!起きてぇ!!」


バンッと勢いよく、扉を開けるとリンは大声を出す。

毎朝レンを起こすのは、リンの役目!!

だから部屋の中を見て、リンは目を丸くした。

だって、いつもお寝坊なレンが起きてベッドに座ってるから。


「レンが起きてるー!!
珍しいー!?」

「…リン?」


リンがそう言いながらベッドまで近寄ると、レンはそんなリンを見て、クエッションマークが飛んだ様な顔をする。


「どーしたの?何か変だよー?」


リンはそんなレンの様子に眉を寄せて、首を傾げる。


「いや、…リンこそそんな格好でどうしたんだい?」

「はぁ!?いつもの服じゃん!?」


レンは少し眉を寄せて、目を丸くしながらそんな事を言い出す。

変な事を言い出すから、リンは自分の格好を確認するけどいつもと一緒。

口を膨らませると、レンは困った顔をする。


「えっ…あー…」


レンはキョロキョロと辺りを見渡すと、よけいに不思議そうな顔をした。


「僕はなんでこんな…」

「僕ぅ!!!?」


思わず声を上げる。

その一人称だけで、レンがおかしい事は一目瞭然!!

リンは開いた口が塞がらなくて、パクパクしてレンを指差す。


「ど、どーし…」

「マースター!!!!」


何か言いかけたレンの腕を引っ張って、階段をかけ降りる。

リビングに入るともう一度、声を上げた。


「マスター!!!!」


珍しく朝からこっちの家にいたマスターは、リンの声に目を丸くする。


「ど、どーしたリン?」

「朝から何騒いでるのよー。」


メイコ姉が続いて呆れた声を出して、みんなも目を丸くした。

でもそんな反応は気にせずに、リンは声をまた上げた。


「レンが変なの!!!!」


リンが必死の形相で言うので、みんなが顔を合わせてリンの後ろにいる…というより、軽く引きずられてるレンを見た。


「別にいつもと変わらなそうだけどぉ?」


ミクちゃんが首を傾げる。


「変わらなくないよ!!」


と言って、レンの腕を引っ張って前に出す。

レンは突然さらされた状態に、戸惑った様に声を出す。


「あの…僕は…」

「「「僕ぅぅ!!!?」」」


みんなが口を揃えて大声を上げた。






どよめきが収まるまでかなり時間がかかった。

みんなが少しだけ冷静になって、落ち着いてからマスターがレンの話をちゃんと聞く。

その話した内容に、もう一度どよめきが沸く。


レンは何かがおかしいとかじゃなく、言葉通り人が変わったみたいだった。


レンが言うには…


「僕は黄の国の召使です。」


と、何とも意味不明な事を言う。


だってそれはリンとレンの歌った『悪ノ』シリーズの話まんまの事だったから!!

でもレンにそれを言っても、それこそ意味が解らないという顔をする。

いよいよレンがおかしくなっちゃった??
と、泣き出しそうなリン達にマスターがもしかしてと言って眼鏡を上げながら話し出した。


「パラレルワールドが交差しちゃったのかもしれないね…」

「パラレルワールドぉ?」


聞き慣れない言葉にリンは、首を傾げる。


「うん。同じだけど異なる世界ってのが、何個も存在するって話。
交差点にぶつかるみたく、そんなレンが重なったとかかな?」


余計にリンは頭が混乱してきた。


「つまり…僕のいる世界と、こちらの世界の僕の精神が交差したと?」

と、レンが落ち着いた様子で説明をする。


「その通り!
君はこちらでは心を持つVOCALOIDだからね。
何かしらの周波数が重なったんじゃないかな?」


なんてマスターがちょっと得意気に言えば、みんなが成る程と頷いた。


「えー!!リン解らないー!!」


ジタバタ手を上下して地団駄を踏めば、マスターがごめんごめんと笑う。


「リンあれだよ!『South North Story』思い出せ!!」


そう言われて、リンは眉を寄せて腕を組んで少し考える。

少し歌を噛み砕いて、ハッとした様に目を見開く。


「うん!!なんとなく解った!!
ねっ、レン!?」


嬉しくて笑顔になって、いつもみたいにレンに顔を向けて問いかける。

レンはそんなリンを見て、目を見開くと、今度は目を細めて優しく笑った。


「そうだね。」


と、やっぱり優しく言うレンはいつもと全然違うから、その瞬間ちょっとドキッてなった。


「見た!?見たメイちゃん!?
あんな笑顔のレンくん見たことない!!」

「そうね、ミク。若干…怖いくらいだわ。」

「あり得ませんわね…。」

「みんな〜それ、レンくんがかわいそうだよ〜。」


リンの後ろでみんながガヤガヤと話し出す。

みんなも思う事はいっぱいあるみたいだ。



とりあえずこの不思議な1日が幕を開けた…―――。





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