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嗚呼なんてきみは卑怯! (スカルとロンシャン)


※捏造設定注意。
 大人スカルがトマゾのボスと一緒にいます。
 




昨夜の記憶は曖昧だが、周りに転がっている酒の空き瓶と部屋の様子、そして室内に充満している酒臭さから容易に想像がついた。思考を巡らせようとするが鈍い痛みがそれの邪魔をする。するけれども考えなければならない。何故我らが信愛なるボスは俺と片手を繋ぎ、俺の上に覆いかぶさって眠っているのか。顔を横に向けると幸せそうな寝顔があって思わず和むが、重力は俺にだけ特別に遠慮してくれるわけでもなく、正直重い上に痺れている気がする。一体何時間こうしていたんだろうか。

「ドントマゾ」

遠慮がちになりつつも、はっきりと声に出して呼びかけてみる。返事はないけれど呼吸のリズムから起きていることは分かっているのだが、このボスはあくまで寝たふりを続けるつもりらしい。

「起きなくてもいいから退いてください」
「ん」
「重いです。潰れます。いろいろ中身が出ちゃいます。限界です」
「さっきまで気持ちよさそうに寝てたのに」
「いつから見てたんですか」
「スカルちゃんが起きる少し前」
「・・・・・・・・」
「あ、その目は酷い。傷つくよ」

呆れて言葉を失いつつ、じと、と責めるような視線で退くように促すと「じゃあこうならいいかな」と俺の顔の横に手をついて、ロンシャンが身を起こす。繋いだ手は離さないまま、至近距離に顔が近付けられた。赤茶色の前髪は重力に従って落ちてきて、色素の薄い瞳に壁を作る。

「おはよ」
「おはようございま・・・じゃなくて、手を離してください」
「えー」

繋がれたままの自分の左手とロンシャンの右手は二人分の熱が混ざっている。しっかりと握られた痺れも加わり始めていて、思わず顔を顰めた。振り解こうと足掻いてみるものの、無駄に終わりそうだ。ロンシャンが片頬だけ引き上げて少しだけ意地悪そうな笑みを作る。彼の体温は俺よりも大分高くて(他の人に言わせれば俺が低すぎるらしい)このままでいたら溶けてしまうんじゃないかと馬鹿な想像をしてしまうくらいに心地よくて怖くなった。

「だってさ、折角くっついたんだよ。離れるのって勿体なくない?」

同じことを考えていたことが嬉しくて恥ずかしい。俺の心を見透かしたようなロンシャンから降ってくる笑い声から逃げるように首を背けると、襖の隙間から光が一筋差し込んでいるのが目に入った。恐らく一般人は活動を開始している時間帯だろう。今日の予定を頭の中で整理する。今日が締切の書類はすでに提出済みだから無いはずだ。仕事は打ち合わせが二件と会議がひとつ。今から準備をして・・・

「・・・スカルちゃん?」
「なんか馬鹿らしくなりました。もういいです。今日は自主的に休みにします」
「あはは、いいじゃん。一緒にごろごろしてよう」
「なんだか貴方に逢ってから俺はどんどん駄目人間になっていく気がします」

溜息をついて油断をした瞬間に「てやぁ」と掛声を上げながら抱きついてきたロンシャンの重さをもろに受け、ぐぇっと間抜けな声を上げた。ちょっとだけ轢かれた蛙の気持ちが分かったかもしれない。

「いいじゃない、人生楽しんだ者が勝ちだよ!」

まだ慣れない布団という寝床も畳のイ草の匂いも天井の怪しげな木目も欄間の不思議な模様も襖の独特な質感も障子越しの淡い光もこの人が好きならばいつかは自分も好きになれる気がした。


嗚呼なんてきみは卑怯!


(タイトルはmythomanie様からお借りしました。)(捏造全開。うちのスカルさんはカルカッサが潰れた後にトマゾに迎えられてます。何が酷いって勝手にカルカッサを潰すなという話。)



あきゅろす。
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