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無事を信じて待っていて (ビアンキとM.M)


楽しくお喋りをしていたところを邪魔したのは携帯電話の着信音。デフォルトのままの味気無い着信音は彼女には似合わない、と眉を顰めると会話を終えた彼女がこちらの思考を読んだかのように「目立たない方が足がつかないの。これは仕事用」と笑みを浮かべた。けれど美しい笑顔はすぐに曇り「急用ができたから失礼するわね」とコートを抱えて席を立った。ナチュラルに伝票を置き去りにしていくのは彼女らしいと思いつつも先ほどの眉根を寄せた表情が気になって「厄介な仕事なら手伝うわよ?」と声をかける。彼女はきっぱりと「要らないわ」と言い切った。

「私の仕事は私のもの。プライドと責任を持って遂行するの」

私が手伝いたいだけなのにと言ってやりたくなったが、彼女の誇りを傷つけたくなんてないから大人しく閉口する。「ただ」とその後付け加えられた言葉にようやく肩の力が抜けた。

「絶対成功させて帰ってくるから、アンタは信じて待っていてよね」

「それじゃあ行ってきます」と冗談なのか本気なのか小悪魔的な笑みで告げて踵を返した彼女の背中に慌てて「いってらっしゃい」と言えば返事代わりに奇麗にマニキュアが塗られた手がひらひらと此方に向いた。



無事を祈って待っていて


(ビアンキとM.M)




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