仕事の打ち合わせ・・・のはずだったのだけれど。どうしてこうなったのかしら。まぁ考えても無駄よね。虚しい自問自答をしながら自分の置かれた状況を確認する。確かに出掛けにトラブルがあって約束の時間に遅れたのは私の方で、部屋を出た途端に襲撃されたなんて言い訳にならないからプロとして時間に遅れたことはこちらに非があると認めるわ。認めるけれど、10分遅れて打ち合わせの場所に着いたら先方の部下はいない、クライアントは無防備にソファで眠っているという状況は飲み込み難いわよ。思わず死んでいるんじゃないかと呼吸を確かめてしまったじゃないの。規則正しく聞こえる彼の寝息に混ざる私の溜息。どうしたものかしら。考えても仕方のないことをさっきから繰り返している。不毛にも程があるわこんなの。

こつこつこつ。静かな部屋にヒールの音が小さく響く。歩きまわっていても仕方がないのだけれど落ち着かないのだから仕方ない。（・・・前金貰っているし、ね）今日は他に仕事が入っているわけでもない。気持ちよさそうに眠っている人を起こす程無粋なこともない、と腹を括り、空いているソファに座り、鞄から読みかけの文庫本を取り出す。（この本が読み終わる前には起きて頂戴よね)時折窓から入ってくる心地よい風が髪を遊ぶ。規則的な呼吸音を聞きながら本のページを捲った。確かに今日は絶好の昼寝日和かもしれない。

金色獣は夢を見る

（Ｍ.Ｍとディーノ。薄紅の三日月とリンクしてます）

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