恋より愛がほしい 35. あれから一週間、学校を休んでいた。 一哉先輩と過ごすために行った学校なのに、一哉先輩がいないなら意味がない。 違う学校に編入しようか、とも考える。一哉先輩と同じ学校なら、顔を合わす事もあるだろうし、いつまでたっても、忘れられなくなる。 一哉先輩は、もう僕を愛することはないんだ。忘れるしかない。 ピンポーン 「はぁ....ぃ!?」 玄関を開けると、会いたくない人が立っていた。 「ずっと休んでるんだって?」 また優しい笑顔。 「...世依さん」 部屋にあがってもらうことにした。 「どうしたんですか?」 鞄から何かを取り出し、机の上に置いた。 「見て」 「"想い出"。これ卒業アルバムですよね。これがなにか?」 「いいから見て」 開くと写真が挟んであり、見ると僕と一哉先輩が、半年記念に撮ったものだった。 「その写真も、アルバムの中に写っている一哉と愁くん。とっても幸せそうな顔してる。俺にはそんな表情見せたことないし、俺じゃ駄目なんだよ」 「いいえ...一哉先輩はあなたを選んだんです。この写真はもう過去の事。今、一哉先輩はあなたといて、幸せなんです」 そう、過去の話。 今は目の前にいる、あなたを..。 「最後のページ見て」 最後のページを開き、自分が書いたメッセージを読んで、下の方を見ると、小さな字で書かれていた。 "愁" ありがとう。 俺、待ってるから。 毎日お前のこと想うよ。 愛してる "一哉" 「一哉先輩...」 これも...過去。 「一哉は今も、愁くんを愛してるよ」 「あなたは?世依さんは?」 「俺は...一哉に幸せを貰ったから...君が一哉を幸せにしてあげて。君じゃなきゃ駄目なんだよ!!」 「帰って..帰ってください!」 「...わかった」 一哉先輩が僕を愛してるなんて、そんな嘘...聞きたくない。 もう遅いんです。 [*前へ][次へ#] [戻る] |