恋より愛がほしい
13.
"一哉先輩"僕が呼ぶと、いつも笑顔で"愁"と呼び返してくれた。
「一哉先輩!」
「よぉ」
やっぱりあの頃とは違うんですね。笑ってくれないんですね...愁って呼んでくれないんですね。
「...どうしてですか」
「俺とお前の、想いの違いだよ」
一哉先輩は俯いたままで、僕を見ようとしない。
「想いの違い?どういう意味ですか?僕は一哉先輩と離れて、一年間必死に頑張りました!」
「...重いんだよ」
「重...い」
「一年間も俺が待てると思うか?待てるわけねぇよ...だから世依と付き合ったんだ。お前とは終わったんだよ」
待てなかった...。
終わったんだ...。
世依。
僕の名前呼ばないのに、あの人の名前は呼ぶの?
「納得出来ないです!諦めれません!」
一哉先輩が立ち上がり、僕を見据え冷たく笑い耳元で囁いた。
「セフレならいいぜ」
セフレ...?
僕の聞き間違いだよね。一哉先輩がそんな事言うはずない。有り得ない。
「嫌ならいい。俺帰るわ」
僕の横をスッと通り過ぎて、一度も振り返ることなく公園から出て行ってしまった。
一哉先輩が座っていたベンチを見つめ、二人でいた日々を思い出していた。
全て鮮明に思い出せる。
全て僕の宝物なのに...。
奪われたくない。
取り返したい。
一哉先輩の後を追いかけた。