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短編駄文
術壊シ
部活メンバー全員L5故にグロ、欝等注意。





「どうすりゃいいんだよ…!」

「そんなのおじさんだって分かんないよ!」

「魅ぃちゃんはいつもそうやって逃げて…魅ぃちゃんが園崎だからかな?沙都子ちゃんが北条だからかな?…かな?」

「…園崎園崎ってね…園崎は万能じゃないんだよ!私に何が出来るワケ!?園崎の何を動かせるのさ!」

「魅音…お前次期頭首なんだろ!?だったらチンピラの1人や2人くらい消してくれよ!」

「私1人の独断でそんなの出来るワケ無いじゃん!あんた達何考えてんの!?そうやってなんでも園崎園崎って言ってないであんた達こそ何かやって見せなよ!」

「あぁ、やってやる!魅音…お前には失望した。」

「圭一くんは何をやるつもり…?」

「ははっ…愚問だなレナ。レナも同じ事を考えてるんだろ?」

「あはははッ!圭一くん!おそろおそろーッ!」
「あっ…あんた達…何言って…」

「殺す。」

「殺す!」

「あははははははははははははははッ!」

飛び交う罵声に責任転嫁。

発狂と混沌の乱舞。

酷く醜く汚い…開幕だった。






―――あの激論から数日。沙都子を除く部活メンバーはみんな口を利かなくなった。
…と言っても、沙都子はここに居るわけじゃない。
きっと今も散らかった北条家で虐めを受けている。

沙都子が苦しんでいるのは辛い。
そこに変わりはない。

でも…それを辛いと感じる具体的な感性は何十年、何百年も前に失ってしまったみたい。

レナは今も上の空。いや、正確には何かをずっと考え込んでいる。

時折圭一とアイコンタクトを取れば二人でどこかに消える…。何かを二人で話し合っていると憶測するのが精一杯。

ただ机に肘をついているだけの魅音は勿論置いてけぼり。

私は蚊帳の外。

今までだってこうだった。

結局圭一が沙都子の叔父を殺すのだろう。

今回はレナも加わるかもしれない。
でもそんな変化は何も生まない。
所詮この世界のサイコロは既に1の目を出したのだ。
きっと、私は殺される。





―――放課後。
それは急だった。とても。

「圭ちゃん、レナ、梨花ちゃん。」

魅音が私達…部活メンバーを呼んだのだ。

そして暫く睨み合う3人。期待することを恐れた目でただ見つめる私。

魅音の開口一番は

「部活しよっか。」

というつまらない提案。

こんな状況で部活…?

魅音の神経を疑った…。

いや、待て。

何か…話したいことがあるのかもしれない。

周りに他の生徒がちらほら居る今、話し合いをしようと言えば関係無いものに興味を与えかねない。

それに、今言わないと圭一とレナはまた二人でどこかに行ってしまう。

私とレナと圭一は魅音の言うことに従い机を寄せた。





「…で、用は何かな?かな?…本当に部活をやろうなんて言ったらレナ、怒るよ?」

他の生徒が居なくなり沈黙が訪れた教室に一声放ったのはレナ。

「…先ずは今、みんなが考えていることを教えて欲しい。」

魅音の冷たい目と声色に圭一とレナが顔を合わせる。

「んじゃあ先ずはお前から言ってみろよ、魅音。」

圭一とレナの目線は嫌悪感を露わにした呆れの目線。

「…そうだね。じゃあおじさんから。」

そう言って覚悟するようにふうっと一息ついた魅音は再び口を開く。

「簡略化して説明するけど、園崎に何度か働きかけた。でもやっぱりダメだった。北条がどうだとか園崎がどうだとか…そんな連中しか居ないからさ。」
「へぇ、それで?」

「私は園崎を捨てる。沙都子を助ける。」

「…どうやって?」








「おじさん…鉄平殺すわ。」









…えっ…!?魅音が…殺す…?

今までそんな事無かった。魅音が殺すなんてこと無かった…!

「あはっ…あははははははは!魅ぃちゃんもおそろーッ!あははははははは!」

「ははははっ!魅音!そいつは奇遇だぁぁッ!はははははははっ!」

「あはっ…圭ちゃんもレナも…仲間なんだ…!あはっ…おじさんは嬉しいよぉぉッ!あははははははは!」

狂気の沙汰。三人の高笑いが響く。

詩音かと疑った。詩音にならこの傾向はある。でも…そう考えた刹那。

「随分と楽しそうですね?こんな時に部活ですか!?」

詩音が扉を荒々しくガタンと開けて姿を見せた。

「…詩音?何の用?」

まずいと思ったのか三人はギロリと睨みつける。

「あんた達…本当に沙都子の仲間なんですか!?今も沙都子は苦しんでるんですよ!?」

「ぷはっ…何言ってんの詩音…?」

「そう言う詩ぃちゃんは…何をするつもり?」

「…それは…」

「あははははははは!詩音!あんたがまだ怖じ気づいてたとはね!笑えるよ!」

「え…何言って…」

「詩音は…何でもできるか?沙都子の為によ…」
「でっ…出来るに決まってます!沙都子の為ならなんでも…私がどうなろうと…!」

三人が顔を見合わせる。言葉を必要としない会話。暫くの静寂。

「なっ…なんですか…あんた達…」

多少不気味さを覚えたらしく顔を強ばらせる詩音。

「詩音…お前…人を殺せるか?」

「………そういうことですか。」

圭一の重たく突拍子の無い言葉に詩音は驚く事なくただ俯いて小さく溜め息をついた。

「詩音…綺麗事じゃもう何も変わらないんだよ…真っ当にやったって…何も変わらないんだよ…」

不気味に、妖しく…
禍々しい低い声で魅音は呟く。それはまるで沙都子を救えなかった過去の自分に対する決別。

「詩ぃちゃん…沙都子ちゃんのこと、守ってあげよう?レナ達の手で…」

レナが詩音を煽るように…告げる。

…もう、ダメなんだ。

この世界はもう終わり…

最初から決まっていること。

「くっ…けけっ…けっ…」

詩音が…声を絞り出して、笑った。

それは恐らく絶望と混沌と渇望と高揚。

「…何さ…言いたいことがあるならはっきり言いなよ。」

魅音が汚いものを見るかのような怪訝な目つきをする。

しかし詩音は堪えられなくなったように「くーッ…」と唸り。

「きゃはははははははッ!素敵ですッ…!素敵ですよあなた達…!沙都子の為に皆で力を合わせて…あのお姉まで決心して…そして私の考えていたことと見事に合致した!素敵です…最高ですッ…!!きゃはははッ!」




「詩音!詩音ーッ!?やっぱり同じ事考えてたんだ!私達やっぱ双子だね!あははははははは!詩音ーッ!」




「役者は揃った!あのクソ野郎を…北条鉄平を殺すためになぁ…!あはははははははは!!」




「圭一くん!魅ぃちゃん!詩ぃちゃん!おそろおそろーッ!!レナ、おそろだぁいすきぃッ!!あははははははははははは!!」

「あはははははははははははははははははははッ!!」




私はただ、目線を一点に固定しメンバーが愉快そうに狂っていく様を聞いているだけ。

一言も話さず、顔も合わさず。

ただ、終わりを悟っただけだった。

一頻り笑い終えたのか漸く狂った笑い声が止み、どうやら私に視線が集う。

「で、梨花ちゃんはどうするワケ?」

魅音の不気味な半笑いでの問いかけ。

…どうする?

そんなの…考えていなかった。

周りが勝手にどんどん狂っていって、私はただそれを眺めるだけ。

その仕組みの駒にさえなれなかった。

羽入…あなただったらどうする?

羽入は…姿を消していた。この話し合いが始まった時には既に。

…きっと…自分で決めろということなのだろう。

私は…ただ…眺めるしか出来なかった。目の前に選択肢がそれしか無いものだと思っていたから。

でも今、部活メンバーは私に選択肢を与えた。

狂うか、眺めるか。

…狂っていく世界を何度も何度も見てきた。そしてこの世界もそう。

だけど…この世界はどうやら、私さえも狂わせたいらしい。

…もう、ヤケだった。

「…いいわ。私も殺す。」

湧き上がる狂喜の歓声。

この世界にはもう見切りをつけていた。
ただ、眺めて、死ぬだけの世界だった。

この世界でもうあの日常が戻らないのなら…いっそ、愛する仲間達と狂ってみたいと願ったのは…おかしいこと?

ただ置いてけぼりになって…救いを求めることも出来ず知らぬ間に死んでしまうのが嫌で、それなら大好きな沙都子の為に身を投げ出して死のうと…そう願うのは、おかしいこと…?

私以外のメンバーは皆、声が掠れる程に笑い、喜んでいた。

…私だって 嬉しい。

嬉しい。 初めて あなた達と 一緒に死ねるのだから。

一度くらい いいよね?

ねぇ、羽入…

もう疲れた…間違った方向に進んでいたって私はもう関係ない。

「ふふっ…ふふふッ…!!」

「ふはははははははははははははッ!!」

嘆くように、腹を抱えて笑った。









―――――綿流しの夜。

憎い…憎い…コイツを殺した。

「ふふっ…えへへへへッ…」

羽入は遠くで狂った私を眺めていた。

そうやって、眺めていればいい。

何もせずただ黙って死ぬより…私はこの方が良い選択肢だと思った。

死ぬなら殺す、そんな考えに至った。

どうせ… どうせ…
そろそろ死ぬのだから。

「やった!私がやったんだ!羽入!沙都子!私が殺したのっ!あはははははははははははッ!」

「死んで当然だよ北条鉄平!あははは!おじさんね、今凄く気分がいいよ!あははははははははははは!」

「見てお姉!この顔!あれだけ沙都子や悟史くんを苦しめた癖に涙なんか流して!人間のつもり!?人間なんかじゃない、汚らわしい外道の癖に!」

「しね!しね!あはははははははははッ!飛んでけっ!飛んでけーッ!消え去っちゃえ!」

それまで醜い命を宿していた遺体に口を揃えて罵声を投げかける。

「…そろそろ遺体を埋めよう」

圭一が無表情で提案した。圭一だけが、無表情だった。











―――「おはよう…羽入、沙都子。」

沙都子はぐっすり眠っている。

…必死に説得して私の家に泊まらせたのだ。

沙都子はまだ叔父が居ると思い込んでいる。

おそらく今日もまた帰ろうとするだろう。昨日だってそうだったから。

入江には連絡した。

ゆっくり…治していけるはず。

羽入はただただ嘆いた。だけどそれ以上は何も。責めも肯定もしなかった。
変化はない。
強いて言うなら口数が減った…そのくらい。

あれから2日経ち、警察もどうやら私達を疑っているみたい。

だけどどうでもいい。

圭一はあれからなかなか話せなくなった。口を開きボーっと空を眺め時折思い出したかのように話しかける…そんな感じに…変わった。

レナは必死に日常を演じているけれど、左手が切り傷で滅茶苦茶だった。

魅音は何も変わらず、最も輪を乱さぬよう心掛けている様子。流石は次期頭首といったところか。

詩音には…あれから会っていない。

何れにせよ、全員が全員を監視し、口裏を合わせるようになっている。

だけど本当に、どうでもいい。

何故なら私はもう…










……………。

……………………。


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