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短編駄文
ペドロ
魅音発症気味、管理人の趣味。













―――婆っちゃが殺された。

犯人は不明。警察が捜査中だけど何も犯人が雛見沢の人間だと決まったわけでもない。

雛見沢の人間でなくても園崎に恨みを持つ人間、もしくは組織はいくらでも居るだろう。

…私の身も危ないんだろうか。

…それにしてもあれだけ怖くて、稀に優しくて、大きな存在だった婆っちゃが簡単に居なくなった…病でも老衰でもなく殺人という理由で。

それがたまらなく恐らくて。

私の心にぽかんと穴が開いた。

私はこれからどうすればいいのか。

…わかってる。

園崎家頭首となり婆っちゃの跡を継がなければならない。

それは逃げられない運命。

運命なんて言葉は出来ることなら信じたくないし自分が使うのも嫌だった。

それでもこれだけは運命で、決まっていること。

…婆っちゃの亡骸を見て流した涙はやけに熱くて吐き気がした。













―――どうして。

部活もできない。

進学の余裕もなくなったから勉強もできない。

休日も仲間達とは遊べない。

婆っちゃ亡き今、全ての決定権は私にある。

お陰で多忙の身となった私は学校にもろくに行けず毎日毎日電話の応対や実際に会っての会議などを始め様々な任務をこなさなければならなかった。

…こんな権利など誰にでもくれてやりたい。
そして当たり前のように友人と遊びふざけ合える権利を返して欲しい。


溜め息をつく余裕さえ無い。

もう、擦り切れてしまいそうだった。

何故、今婆っちゃが殺された?

何故、私は園崎に産まれた?

何故、私は園崎魅音になった?

あの時…私がわがままを言わなければ。

しかしあんな些細なわがままで人生をこうも変えられてしまうとは。
神様が本当に居るのならば私はそいつを殺してやりたかった。

詩音が羨ましい。

婆っちゃの居ない今、雛見沢に詩音が来ても誰も何も言わない。

詩音は今日も当然のように雛見沢の学校で圭ちゃんやレナ達と楽しく遊んでいるんだろう。

本当は詩音が魅音なのに。

…憎い。

…妬ましい。

こんなのいけない考えで、いけない感情だって分かってる。

でもさ。

さっき私は聞いたんだよ。

私の後頭部からブチッ、ブチッ、ブチッって音がするのを。

多分それは私が髪を引っ張ったから。

でも本当はね、心が擦り切れてしまった音なんだって思う。

その証拠に心をどうにか繋ぎ止めていた糸がまた次々とブチッ、ブチッ、ブチブチブチッ、って千切れていく。

仲間に会いたい。
圭ちゃんと話したい。
部活がしたい。
毎日学校に行きたい。
休みの日は仲間と遊びたい。
漫画が読みたい。
アイスが食べたい。

















―――手首から流れ落ちた血液を見て、私はもう二度と青い空を見ることができないのだと悟った。

テレビではニュースが放送されている。

コロンビアという国の殺人犯が約300人を殺したと最近自供したらしい。

恐ろしい事件があったものだ。

それに比べたら鬼隠しなんて大したこと無い…なんて言うのは不謹慎過ぎるか。

…こいつももう青い空は見れないんだろうか…。

そう考えたら本当に微々たるものだが共感を得てしまった。

園崎魅音なんてもうどうでもいい。

私は殺人鬼に身体を乗っ取られたんだ。

…そうしよう。

殺人鬼が私を支配して異常にしてしまったんだ。

…それでいいや。

「詩音、明日暇かな」

「明日って…学校じゃないですか」

電話越しの詩音の声がイラつく。

当然のように学校などと口走る詩音の神経を疑う。

…同じ園崎がどうしてこうも違う?

「園崎家頭首として命じます。明日、園崎本家に来なさい。拒否権は無しです。」

言いたいことは言ったからもう受話器を置こう。

園崎なんて消えてしまえ。

くだらないくだらない。

これは権利を勝ち取る為の戦い。
コロンビアなんか知らないけれどとにかくその国の殺人犯がやったことを私も…多分やるんだろう。

実際にやったやつが居るんだから決して不可能なんかじゃない。

罪の意識なんて感じない。


何故なら
罪は全て園崎という名字が背負うものだから。

そこがただの殺人犯とは違うところ。

さぁ、園崎であることを後悔するがいい。

私よりも深く後悔させてやる。

全て 終わらせる。








赤く染まった畳に軽くキスをして私は眠気に身を委ねた。
暗くなっていく意識の中でテレビの中のキャスターが発した名前、ペドロ・ロペスという外人の名前を聞いた。

「…へぇ。変な名前だね。」

それが恐らく詩音が最後に認知した言葉だった。

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