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準備
圭ちゃんが居てくれて良かった。あれからレナと私は…ずっと"いつも通り"で。

きっと圭ちゃんが居なかったら私達はお互い意識し過ぎてここまで上手く"いつも通り"にはなれなかっただろう。

レナはもう親友でしかない。
レナにとってはどうなのか分からないけれど。
とにかく私にとってはもう親友。
そう割り切ることにした。

だけど詩音はやっぱり頭から離れずに居て。
たまらなかった。
時々、レナに頼りたくなったりもしたけれど…もうレナを傷つけちゃいけない。甘えちゃダメだ。

詩音に会いたい。
次はいつ会えるんだろうか。
明日は休みだから…電話してみようか。
電話して…詩音に何て言おうか。

「明日遊びに行っていい?」

用事もなく行ってもいいのだろうか。いや…いいはずだ。今までだって暇な時はたまに遊びに行ってた。

「明日暇?詩音に話したいことがあるんだけど…」

うっ…これは緊張する。妹に電話をかけるだけでこんなに緊張する人なんて他に居るだろうか。

仕方ない。好きな人に電話をかけるんだから。

それから私は何度か一人言のように練習して…詩音の部屋に電話をかけた。

プルルルルル…ガチャッ

「もしもし?」

早いよ詩音…。まだ心の準備が…。

「あぁ…詩音?こんばんわー」

「お姉ですか…こんばんは。こんな時間にどうしたんですか?」

起こしちゃったかな…好感度が下がってないことを祈る。

「あのさ…明日暇?」

よし、まずは聞けた。

「特に用事はないですけど…」

よしよし。次は…

「そっ…それじゃあさ、明日そっちに行ってもいい?」

うん。これで大丈夫。

「構いませんよ?それにしてもどうしたんですか急に。最近会ってないんで恋しくなりましたか?」

うわぁ…前までは何か冗談で返してたけど…今はどうも…その通り過ぎてなんて返せばいいか…

「そりゃあ大好きな我が妹に何日も会ってないと…禁断症状が出てもう大変だよ」

「それは大変ですね。ご愁傷様です。」

あぁ…バカ詩音。なんでわかってくれないんだよー…

…仕方ないか。これだといつも通りだね。

「早く会いたいな。詩音。」

このくらいは言わないときっと詩音はいつものニヒリスティックな返事しかしないだろう。
恥ずかしいけどもう少しいつもと違う私を見せとかないと…。

「珍しいですね。いつもは私にからかわれて目くじらたてて怒るくせに。」

「それは…愛情表現の一つだよ」

「それなら私がお姉をからかうのも愛情表現です」

なんか…違う。
なんか違うんだよ。もっとこう…私のことをきゅんきゅんさせてよ詩音…。

「それで、明日は何時頃に来るんです?」

…ちっ。バカ詩音。

それから時間を決めてすぐに切られた。
もう少し…話してたかったかな。

…詩音の声が聞けただけで今日はよしとしよう。

ごめんよレナ。やっぱりこんなに詩音が好きだから。
こんな私のことは忘れてレナは圭ちゃんと仲良くしな。

「…はぁ。」

1日に吐いた溜め息の数の自己ベストをまた更新したであろう最後の溜め息をつき寝床に入った。

詩音のことを考えながら。

詩音…好き。

詩音…。

詩音…

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あきゅろす。
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