狂企
ピンポーン…
チャイムを鳴らすと少しして「はーい」と男性の返事が聞こえたので暫く待つとレナのお父さんが迎えてくれた。
「お…いらっしゃい。圭一くんと…魅音ちゃんだったね?待ってて、今呼んでくるよ。」
「あ…はい…」
私達の話を聞かぬまま早々に二階へレナを呼びに行ったので再び暫く待っているとレナのお父さんだけが再び静かに戻ってきた。
「ごめんね…ちょっと玄関に来れる元気が無いみたいだ。あと…」
少し言い辛そうな仕草を見せて圭ちゃんの方を見やる。
…なんだ?
「魅音ちゃんと二人で話がしたいらしいんだ…ごめんよ圭一くん」
「え…そうですか…」
「圭ちゃん、ドンマイ」
圭ちゃんが分かりやすい表情で落胆の色を見せたので私は圭ちゃんの肩をポンと撫でてやる。
しかしどういうつもりだレナのやつ。
「魅音は同性だし俺よりレナと長く居るし…年上だしな。悩みも打ち明け易いんだろうな。」
少し僻みっぽく私に言う圭ちゃん。
そんな風に言われても困るだけだし別に…嬉しくない。
でもとりあえず圭ちゃんが可哀想なのでフォローはしておこう。
「そんなことないよ、たまたまだって」
「…そうだな。魅音は同性じゃなかったな」
「フンッ!」
…目の前には顔面を殴られて仰向けに倒れた圭ちゃんの姿があった。
というよりその姿にしてやった。
「はぁ。圭ちゃんはもう帰りなよ。話してくるからさ。お疲れ様。」
甘やかして損したから今度は突き放してやった。
「ホントに悪いね圭一くん…また今度遊びに来てよ。」
レナのお父さんは圭ちゃんに詫びつつも私を何気なく中に招き入れた。
「はい、そうします。魅音はレナにお大事にって伝えとけよ。いってー…」
心と顔面の痛みをこらえながらトボトボと圭ちゃんは帰っていった。
さぁ。レナは何をするつもりだ。私の体に触れようものなら容赦はしないぞ。
コン…コン。
中から返事が聞こえなかったので暫くしてからゆっくりとドアを開けてみる。
「入るよー?」
そこには。
顔に痣ができ、その表情は疲れきったレナの姿があった。
やはり心が痛む。
ここまでしてしまったのは私なのか?
「魅ぃ…ちゃん…」
嬉しそうに私を見て笑みを見せるレナ。
その笑顔はあまりにも痛々しくて…見てられないほどだった。
「レナ…どうしたの…痣…」
「あははっ…なんでもないの…大丈夫…」
本当に痛々しくて…心が締め付けられる。
触れられるわけにはいかないと考えていたが…触れてやるのは…いいだろうか。
「レナ…ごめんッ…」
触れるどころか抱き締めてしまう。
ぎゅうっ…
強く優しく。ボロボロになったレナの身体を抱き締める。
「魅ぃちゃんは…悪くないよ…」
レナは私を一度も責めず、そう言って抱き返してくれた。
…その左手首にチラッと何かが見えて。
思わずそこを握ると
「痛ッ…!」
…やっぱり。
「レナ、脱いで」
レナは弱った表情を一変させて…え、と顔をみるみるうちに紅潮させていく。
「ばか、違うって…いいから…」
レナはなんとなく意味はわかったのか了承してパジャマのボタンを上から空けていくも顔は赤くしたままで。
ボタンを外し終わると恥ずかしそうにして此方を見たのでもどかしくなって私が脱がせてあげた。
…酷かった。
あらゆるところに痣ができており手首には無数の切り傷。肩口や背中には擦り傷がついてあって。
「どうしたの…何があったの!?」
「魅ぃちゃん…本当になんでもないんだよ」
「嘘だよ!これは普通じゃない!背中にまで傷があるんだよ!誰にやられたの!?」
「魅ぃ…ちゃん…聞かないで…」
「誰!?誰!?誰なの!?」
ここまで熱くなっている自分が異常だった。さっきまではレナなんてどうでもいい、顔も見たくないって思っていたのに。
いや、言い聞かせてたのに。
こんなにかわいいレナが傷だらけにされて。
…そうだ。
私は好きだったんだ。
やっぱりレナが好きだった。
レナの汚い嘘をきっかけにレナを敵にしたてあげて自分に言い聞かせてた。
私には詩音がいるからレナを好きでいてはいけないと。
だから会いたくなかったんだ。
辛くなるから。
あんなに私を好きでいてくれて…下手な嘘までついて私を振り向かせようとして…そこまでさせてしまって…!!
二人を同時に愛した私の罪を無かったことにしたいが為にレナを突き放したんだ…!!
「レナぁぁぁぁっ!!」
私は再び抱き締める。
愛したレナを。
もう代用品じゃない。
レナだ。詩音の代用品じゃない、竜宮レナを。
抱き締める。
「痛っ…魅ぃちゃん!?」
「ごっ…ごめん…」
それでも力を緩めるだけで、まだ離してやらない。
「レナ…好き。」
素直に言おう。
今私が気付いた自らの罪と…貴女への愛を。
全部。
―――レナは泣きながら最後まで聞いてくれた。代用品にしてしまったことから自分の罪を消したいがためにレナを突き放したこと。そして今その全ての罪とレナへの愛に気付いたこと。
レナは泣きながらだが嬉しそうに笑って私にキスをしてくれた。
あの…始まりの日と同じ優しいキスを。
「ありがとう…魅ぃちゃん…気付いてくれて…」
レナは…本当に優しい。
こんなに優しくてかわいい子を傷つけたのは私。
そして…暴行を加えたのは…誰…?
「その傷は…誰がやった…?」
誰だ。レナに傷をつけたのは。
「…魅ぃちゃんは…まだ詩ぃちゃんが好き…?」
え?なんで今それを。
「そりゃあ…好きだよ。…ごめん。だけど…レナも好きなんだよ…?」
私は最低だ。レナはこんなに複雑な表情をしてる。
「…レナの話と詩ぃちゃんの話…どっちを信じる…?」
…なんだ?…怖い。
この質問の意味がなんなのかは分からないが…凄く怖い。
「どっちも…信じる。」
「…そっか。…じゃあ…今からレナの話すこと…信じてくれるかな?…かな?」
本当にその話を聞いていいの?
怖い。だけど…
「うん。」
今度は信じてやらないと。レナを受け止めてやらないと。
「…ありがとう魅ぃちゃん。実はね。」
「詩ぃちゃんなの」
え?何が…?
何が詩音なの?
「詩音がどうしたってのさ」
「だからね、詩ぃちゃんが」
「レナをこんな風にしたの」
嘘だよね?
もうそんな嘘つかないでいいんだよ。
私はレナが好きなんだから。
「レナ…私は本当にレナが好きだよ。だからそんな嘘…」
「魅ぃちゃん。最後まで聞いて。」
…わかったよ。
私は黙りこむ。
詩音が…?
詩音がぁ…?
「レナが姿を消した日の朝ね、詩ぃちゃんが家のすぐ近くで待ってたの。」
詩音が待ってた…?どういう意味だ…?
「そのまま…話したいことがあるからって詩ぃちゃんの家に呼ばれたの。…多分魅ぃちゃんのことだろうなって思って…そしたら…!」
そしたらこんなにされたって言うの…?レナ…
「詩ぃちゃんは私のこと…寝かさずに次の日の朝まで…ずっと…ずっと…!」
そんなっ…「レナ…本当…なの?」
「本当だよ…だよ。信じて…」
「…どうして…。」
動揺をどうにか抑えて問い掛ける。
「レナが…魅ぃちゃんに言ったから。」
「え…?何のこと…?」
「ゴミ山に呼び出されたって…魅ぃちゃんに言ったから。」
え…?え…?
それじゃああれってまさか…本当のこと…だったの…?
「だから…こんな風にされちゃったの」
レナは涙をこぼしながら恐怖したように頭を抱えて小刻みに震えてる。
そんなレナを見ていると…我慢出来ずに再びギュッと強く抱き寄せてしまった。
「レナが…悪いの。レナが…。」
本当に詩音がこんな事をしたの?詩音はそんなこと…でもレナは嘘をつく必要が無いのにこんなに震えながら、怯えながら言ってる。
嘘じゃ…ないんだ。
「レナ…」
優しく口づけし、ゆっくりとベッドへ倒す。
「魅ぃちゃん…好き…好きなの…」
わかってるよ。私もレナが好き。だからこうやって心からの口づけをあげたんだよ?
「レナ…大丈夫だよ。私が愛してあげる」
レナは顔を大きく横に振る。私は思いもよらないレナの反応に目を見開いてしまう。
「ダメなの…詩ぃちゃんに怒られるから…」
…そう…だね…だけど私はレナも好きなの…。
「レナは…私と…したい…?」
レナは小さく顔を縦にふる。うるうると目を潤わせて困惑した表情になる。
「私がレナを犯したってことにしてて」
「きゃっ…魅ぃちゃん…!?」
私は無理矢理にキスを奪うとレナの痛々しい傷や痣の1つ1つに唇を当てていく。
痕を吸い取っていくかのように。
レナはくすぐったそうに時折目を閉じつつもその儀式をしっかりと見続けていた。
そのままゆっくりと上半身の下着をずらし、そこへ指を滑り込ませる。
柔らかくて、かわいらしくて、狂おしかった。
「魅ぃちゃん…そのっ…外して…」
レナの恥ずかしがりながらの要望に答えてやるべく私はレナの背中に手を回し、片手でホックを横に引っ張る。
締め付ける力を失った下着をそのまま剥ぎ取るように取ってはすぐそこに放る。
レナの乳房が全て露わになってはその…美しさに目を奪われる。
あまりにも凝視していたのでレナは微笑みながら私の目を両手で隠してみせた。
「レナ、見えないよ」
「…恥ずかしいよぉ。」
視界が閉ざされているので表情は分からないが照れたような声で返事が返ってきた。
このまま意地悪をしてあげても面白い。
そう思うと私はレナの胸をゆっくりとむにゅ…むにゅ…と揉みしだきはじめる。
「やっ…魅ぃちゃんっ…」
気持ちいいのかな…かわいいよレナ。
その柔らかな膨らみを暫く楽しんでは次いでその先端を摘み、くにっくにっと捻ってみる。
「レナぁー…これは何かな?」
視界を閉じられているので分からない…ということにしておこう。
「やっ…そっ…そのっ…んんっ…」
時折艶やかな声を漏らす。その手の力が弱まってきたので私の視界は少しずつ明るさを取り戻してくる。
そこで透かさず。
「レナのおっぱい見えてるよ」
やはりレナは慌てて再び私の視界を奪う。
そこで乳首を弄ぶ私の指先は動きの激しさを増す。
快感が両手の力を弱めてはまた
「あはっ…乳首も丸見えだよ、かわいいねレナ。」
今度はもうレナの両手は近づいては来なかった。
「隠さないの?レナの乳首が感じてるところ見えてるよ?」
我ながらいやらしいことをするな、と思った。
しかしレナはそれを喜んでいるみたいだから、まぁ良かった。
そのまま私の指はゆっくりと…
触れれば快感に狂うであろうその部分へゆっくりとゆっくりと…
襲いにかかる。
「…だめ…。」
「…どうした…?」
こんなところで終わるなんて嫌だよ?
「思い出しちゃうの…」
あぁ…そっか…
「あの日のこと…?」
「違うの。そのっ…」
違う?他に何を思いだすと言うのだろうか。見当がつかなくて思考回路が混乱する。
「詩ぃちゃんに…されたこと…」
え。
「…詩音にされたの?」
どうして!?え!?詩音もレナが好きだってこと!?
「あ…違うよ…?詩ぃちゃんは怒って…レナが魅ぃちゃんにさせようとしたことをしてやるって言って…無理矢理…」
詩音のばか…そこまで…私のこと…
「指を何本か入れられて…凄く痛かった。本当は魅ぃちゃんにして貰いたかったのに…」
レナは辛そうに笑みを見せる。何故そんな無理をして笑う必要があるのかと聞きたくなるくらいに痛々しい笑顔で。
詩音はこんなに私を好きで。それ故に嫉妬も尋常じゃないものになってて…レナをここまでしてしまった。
「ごめん…じゃあ…もう一度だけキスさせて…」
レナが小さくうんと頷いてくれたので私はその唇に柔らかくチュッと軽くキスをした。
「詩音は…どうにかするよ。」
「どうにか…?」
「分からないけど。任せてて。」
理由はどうであれレナをここまで追い込んだのだから…いくら想い人でもお仕置きしてあげなければならない。
そう決意してはレナの胸にチュッとだけキスをしてやる。
レナは「んっ…」と可愛く声をあげて「もうっ…」とまた困惑した表情で応えた。
衣服を拾ってやり、優しくレナに着せてあげる。
そんな私の行動にレナは心底嬉しそうな顔をしていた。
「じゃあ…今日はそろそろ行くよ。」
「そうだね…ごめんね魅ぃちゃん、わざわざ来て貰って。」
「別にいいんだよ?また来るからね。」
ちょっとだけ寂しそうにレナは私のことを上目遣いに見上げた。
そのまま立ち上がってきたので送らなくても大丈夫だと言って再び寝かせ、頭をぽんぽんと撫でてやった。
大丈夫だよ、レナ。
詩音は悪いコだね。
いいコいいコにしてないとどうなるのか、詩音に教えてあげないとね。
レナも悪いコだったから私にお仕置きされたんだよ?
だから詩音にも、お仕置き。
「ちょっくら行ってくるかな。」
「え?どこに…?」
私はニヤッと妖しく笑って見せて、囁いた。
「お仕置き。」
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