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訪問

コイツは口数が極端に少ないけれど気の利いた言葉を投げかけることはできるみたいで。
実はそっと私を見守っていて、今も私のすぐ後ろにちゃんとついてきてる。
鬼なんだから裸足なんだろう、その足音はぺたぺたと。

いつから背中の鬼は意思を持つようになっていたんだろう。

今更考えたってもう思い出せっこない。

気付いたのは本当につい最近で。

最初は気のせいかと思っていたけどちゃんと鬼は居て、私を見てくれていた。



しかし今朝はだるい。
待ち合わせ場所がいつもより遠く感じる。

今日は少しくらい遅くなったっていいだろう。

いつもより遅めのペースで歩いたが圭ちゃんは私が待ち合わせ場所に着いた数秒後に走ってきた。

「すまん魅音!待ったか?」

「ううん、私も今着いたとこ」

カップルの初デートの様なシチュエーションだな、とふと思って無意識に微笑んでしまったが仕方ない。今着いたのは事実だから。

「遅刻するぞ…走るか?」

…流石に走る気分じゃない。

「今日はいいじゃん。ゆっくり行って怒られよう?」

「…魅音にしては珍しいな。…たまにはいいか。」

私にしては…ではなく委員長として、のところを注意すべきではないかとツッコミたくもなったがやはり疲れていたので止めておいた。

圭ちゃんも昨日、突然居なくなった部活メンバーを探し続けて体も心も疲れているんだろう。否定的な言葉は使わずすんなり承諾してくれた。

「レナ…どこに行ったんだろうね」

正直なところレナには興味ない。

圭ちゃんが可哀想だった。
レナなんかの為にこんなに頑張って。
哀れみさえ感じた。

「どうだろうな…警察は今日も捜索してくれるんだろ?」

「そうみたいだね。昨日の大石の口調はそういう言い方だったよ。」

はっきりとは言えない。大石は「明日の何時から捜索を再開します」とは言っていなかったはず。

「じゃあ…任せるしかないな…」

圭ちゃんは深く溜め息をついた。





―――学校に着いた途端、知恵先生が早速「遅刻!」と指摘してきたが思いのほかその後すぐに「大丈夫ですか」だとか優しい言葉をかけてくれた。

「保健室に行きましょうか?」

「ん……」

断ろうかとも思ったが少し迷った。

「無理はしないで苦しかったら言って下さいね?」

「あ…はい。大丈夫です。」

本当に生徒思いなんだろう、よく心配してくれる。

圭ちゃんは既に自分の席で肘をついていた。

私も急いで席につき、圭ちゃんとは逆の肘をついて自習を始めた。




―――コンコン。

「園崎です!」

「前原です。」

「はい、どうぞ。」

私と圭ちゃんは職員室を訪ねていた。
レナのことを伝えるべく。
あまり人に聞かれたくはない話なので放課後に行こうということで昼休みには控えておいた。

「失礼しまーす。」

開けたドアをすぐに閉め、私と圭ちゃんはゆっくり知恵先生へと歩み寄る。

「竜宮さんのことですか?」

「え?なんで知ってんのさ!!」

思わずタメ口を吐いてしまった。ビックリしたんだ…仕方ない。
いや、レナが連続して欠席したことについて心配してきたと予想したのかもしれない。

とにかく知恵先生はカレーの文句を言われた時の20%くらいの表情で怒りを露わにした。

「あ…すいません…えっと…レナは…どうなんでしょうか。」

知恵先生の表情がゆっくりと穏やかなものに戻るとその口が開く。

「戻ってきたみたいですよ。今朝連絡がありました。」

「えっ…それホントですか!?」

圭ちゃんが先に質問する。今朝連絡があったってことはレナが居なくなったことを知ってる。そして戻ってきた…ってことはつまり。

「まだ体調が悪いみたいで学校には来れそうに無いみたいですけれど…すぐに良くなりますよ。」

先生はにこやかに言ってくれた。

「良かった…それでレナは何て?」

圭ちゃんが次いで質問する。やはりレナが凄く気になるらしい。

「それが…竜宮さん本人は私とは話してくれなくて。話は全てお父様から伺いました。」

「そうですか…」

レナがどういう状態なのか気になる。いくらなんでも鬼隠しではないとは考えていたが万が一とも考えていた。
こんなに早く戻ってくるのは意外だった。


それから先生に最近のレナの様子なんかを聞かれたりしたがそれ以上は大して何も得られず、そのまま職員室を後にした。

「魅音、今からレナに会いに行ってみないか?」

正直、まだそんな気分じゃない。レナとは顔を合わせたくない。
だけどここで断るのは流石に人として…。

レナの状態も気になることだし…私は行くことにした。

「そうだね。様子を見に行ってみようか。」

帰宅途中にそう決まり、私は分かれ道を通り過ぎてそのまま真っ直ぐレナの家へ歩を進めた。

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あきゅろす。
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