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叙情

溜め息ばかりがただ何度も漏れて。

この少し行き過ぎたおかしな感情はどうすればいい?

…やはり信頼する仲間にもどうしても打ち明けられずに頭の中の質問というか疑問というか…うん、悲痛かな。

その悲痛を口には出せぬまま心の中で数回呟いた。

「魅音…元気無いな。」

変なところが優しい圭ちゃんのことだから私に聞こえない様に囁いたつもりなんだろう。

…まぁ…この地獄耳には届いてるけど。

嗚呼…この窓の外に私の愛するあなたが居ると思うと…ずっと眺めていたくなる。
…ガラにもない事を考えてるな。と自分の脳内が少し恥ずかしくなった。

「魅ぃちゃん?」

後ろから声がする。この呼び方をするのは竜宮レナ一人。
私はわざとダルそうに「ん?」と小さく返事をしつつレナの方を振り返る。

心配している…というよりは求愛をするかの様な博愛的なその目つきが私を一点にジーッ…と見つめる。

「元気無いね…魅ぃちゃん。」

レナは圭ちゃんと違って直接聞いてきた。

多分これはレナの優しさで。だからと言って圭ちゃんの優しさもまた間違いのない優しさで。

二人のそれぞれの優しさはきっと間違っていない優しさ。

こんなに仲間に気を使わせてる私が間違い。

「あはは…少し寝不足でさ…早く帰って風呂にも入らず布団へ直行したいなーなんて考えてた訳よー」

苦笑しつつも、誤魔化す。
…少しの罪悪感。

「本当かな?かな?」

レナが私の顔を覗き込んではわざとらしく聞き返す。

この瞳と微笑みを見るといかにも「どうして隠すのかな?かな?」と言われてるようでちょっと怖い。
…でもきっとこれもレナの優しさだろう。

「あははは…どうだろうね」

あくまでも誤魔化す。

…私なりに「とにかく今此処では言いたくない」という気持ちを含めたと思っておいて。

「そっか…じゃあ今日一緒に宝探しに行かない?」

ん?本当に伝わった?
…レナはこれでいて凄くしっかりしてるし、相手の気持ちを読み取るのにも長けている。

圭ちゃんに恋の相談をするのもなんだか気恥ずかしいし、かと言って梨花ちゃんや沙都子も…その類の話とするとどことなく頼り無い。

話してみようかな…レナに。

「嫌かな?…かな?」

あぁ…レナ。そんな顔でそんな事を言われるとおじさん…断れないじゃん。

…それが狙いか。

「いっ…嫌じゃないさ!ありがとう。久しぶりに二人で行ってみようか。」

圭ちゃんが雛見沢に来てからは二人で宝探しになんて久しく行ってなかった。それはそれで少し面白いかもしれない。

「なんだなんだ?二人で何話してんだ?んー?」

どことなくいやらしい表情で私達の話に割り込んでくる圭ちゃん。

今聞かれると絶対からかわれるな…

レナをチラッと見やる。
レナは「わかってるよー」と言わんばかりに少しだけ困惑した顔で私に目配りをしては圭ちゃんに

「今日は宝探しに行って魅ぃちゃんをお持ち帰りなんだよー?だよー?」

そうそう…今夜は私を好きにして…って、あるぇー?

「マジかよ!レナは分かるがまさか魅音まで…お前…」

この上なくレナらしい誤魔化し方に圭ちゃんも冗談半分性欲半分で興味を示す。

「ちっ…違っ…!誤解だよ圭ちゃん!レナも変な言い方しない!」

お灸を据えるべく忠告しておくもレナはやはり

「じゃあなんて言えばいいのかなー?かなぁーっ?」

今にも「言っちゃうよ?」と言わんばかりのその声色に私はうろたえてしまう。

レナはこういう時、容赦しない。それでいて意外とサディストな一面を持っている。

…なんだかんだでレナに結局からかわれちゃった。
…私が弱ってると結局容赦なくからかわれる。
まぁそれもまた肩の力が少し抜けて良かったのかもしれない。
これもきっと部活メンバーの部活メンバーらしい優しさなのだろう。

「お?よくわからんが…レナが魅音を制圧してるぞ?いいぞレナ!そのまま魅音をお持ち帰りだ!」

「はぅーっ!困惑する魅ぃちゃんかぁいいよぉぅ!お持ち帰りぃーっ!」

…案外優しさや冗談より煩悩の方が勝ってるかもしれない。
今夜は夜道に気をつけ…あ。レナと宝探しに行くんだった…
あるぇー?これってもしかして死亡フラグ?

「あぁもうっ!好きにしな!」

不利な状況なので半分ヤケになって煩悩に支配されいかがわしい妄想を続ける哀れな二人に言ってみる。

…やがて知恵先生が戻ってきていつもの様に私が号令をかけ、レナと一緒に圭ちゃんに方程式を教えて貰う。

そこでも度々さっきの事をネタにされたけど…。
レナのばか。

それでも時々窓の方を見てはまたあの人の事を思い出す。

そんなこんなであっという間に放課後になって、ちょっと乗り気じゃなかったけど推理ゲームで圭ちゃんをいじめた。

いつもの様に帰り道で今日の部活について反省したり次は何をやろうかなんて事を話しながらあっという間に分かれ道。

「じゃあね!レナ、圭ちゃん!また明日!」

今日も楽しかった。
楽しかったけど…ちょっと。ちょっとだけ…

寂しかった。

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あきゅろす。
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