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Load:1(精神上の)重荷、苦労、心労
…俺と目的地の間には
大勢の邪魔者がいる
まるでイバラだらけの森に迷い込んだようなものだ
イバラを掻き分けようとして
イバラに掻きむしられ
どうすれば広々とした所に
出られるかも分からずに
道を見つけようとして道から外れ
死に物狂いで森から出ようともがくしかない
こんなに出来る俺が
王冠一つ取れないのか?
今よりもっと遠くにあっても
もぎ取ってやる!

…王冠を夢見ることが俺の天国なのだ
生きている限り、この世は地獄だと思おう…。
(シェイクスピア『リチャード三世』より)





暗殺(ヒットマン)チーム。
リゾット・ネエロをリーダーに率いられる強力なスタンド使いで構成された精鋭部隊。ネアポリスを拠点とするパッショーネがここまでの規模に膨れ上がったのも、彼等が組織に敵対する政治家、要人、同業者を潰して縄張りを広げられたのも、彼等の働きが一因を成していた。
彼等の能力も、どのように生き残ってきたのかを知る者もいない。
ただ見えるのは彼等の築いた死体の山だけだ。
その力ゆえ、組織の誰からも恐れられながらも軽んじられる者達。




『punizione プニツィオーネ(罰)』

生きたまま爪先から輪切りにされ、
愛する者の苦しむ様をむざむざと見せつけられて自分から死を選び、
その死後もなお亡骸は見せしめとなる。





二年前、彼等の仲間ソルベとジェラートの二人が惨殺され、その末路をむざむざと見せつけられた彼等の首には、パッショーネのボスからの目には見えない鎖が繋がれていた。
盲目の積荷は日々増していく。
その重みは彼等のかつて殺した人間の流した血が地になみなみと満ちた怨恨の沼へと彼等を沈めていく。
錆びていく裏切りの銀で作られた牢獄。
刃で組まれた王座につく姿の見えない主は嘲笑する。
そこからは逃げられない。
逆らうことは出来ない。
もう進むことも後戻りも出来ない。
地獄の苦しみが、罰が彼等の首枷となり、少しずつ首を締めていく。

逆らうな。
罰を。
罰を。

彼等はパッショーネのボスの名の元に犬のように従い、首(こうべ)を垂れて生きていくしかない。
唯その身をもって、仕えるしかない。
変わらず、忌まわしく誰もがやりたがらない人殺しをする事で。
何故自分達だけが?
何故自分達ばかりが。
俺達が手を汚したから、お前達は上へ行けた。
俺達はこのまま使い潰されて終わるばかりじゃないだろう?
この手は真紅の血に塗れている。
どれだけの灰色の雨が降り注ごうとも、あのイタリアに広がる紺碧の海の水をもってしても、この赤く染められた手を洗い流す事は出来はしない。


その精神を身体を使い潰し、やがて来る、死にゆくその日まで。
待つしかないのか。
ただこの身体が使い物にならなくなるまで、時間が過ぎるのを待つしかないのか。

その先に未来は見えずに。


何も出来ずに、不満は刻一刻と降り積もり、憤怒と野心が彼等の心に負荷を課していく…。

そして時が満ち、彼等の積もり積もったものは爆発し燃え上がった。


あの日、ボスに娘がいると分かった時に。


ボスの正体を掴み、麻薬ルートを奪い取る。
組織の最も暗い場所にいた自分達に光り輝く栄光を求めた。
今しかない。
機を逃せば、もう彼等が這い上がる事もない。
真綿で首を絞めるように死んでいくしかなくなるのだから。
覚悟を決めて、彼等は命懸けの賭けに出た。




…それこそが死への道へと知らずに。

load the dice against(不利な立場へ)。
命を奪い合う日々の中でかろうじて生きていけた彼等の運は、その時から尽き果てようとしていたのだ。













「駄目…っ、

駄目だよ、行っちゃ駄目!


その道は間違っているッ!!」



少女は知っていた、彼等がこのままでは死に絶えていく事を。
赤い瞳と白い髪。
常人には見えない未来を目にする力を持つ、その少女は。

少女は魔物と蔑まれた。
かつて一族からは悪い運命を呼び寄せる者として「Pecora nera ペーコラ・ネエラ(黒い羊)」と呼ばれた。
彼女の背後には銀色に輝くオリオン座を頂く目を潰された女神が側にいた。




『オリオンは旅人の道標(みちしるべ)。
夜空を照らし、向かうべき…正しき道へと指し示す星。

ただし、正しき道、成功への道は、苦しみを伴うもの。
正しき道は、試練への道。
試練の道は、冬の凍える道。
辛く厳しい旅路を我々は越えねばならない。
…私自身よ。

もしお前自身が望むのなら、我々はその道を共に目指そう』

かつて化け物、悪魔と呼ばれた彼女自身の心の力2×4(ツーバイフォー)が教えてくれたから。

あの見る事を拒んで、自身で潰した、血の涙を流す瞳が見たものを。

銀の十字で構成された、病的なまでに冷たい指先で泣きわめき目を逸らそうとする少女の目をまっすぐに見せてきた。


『苦痛と幸福は交互に現れる。
幸福の先には苦痛が、苦痛の先には必ず幸福が待ち受けるのだ。

お前が死の運命から彼等を助けるのならば、

お前がその大きな幸福を望むのならば、

お前は訪れる苦しみ、恐怖、悲哀、屈辱、全てを受け入れて、己自身とも戦わねばならない。

救いの道は、お前が苦難を乗り越えた先でようやく見えるものなのだ。


己の魂、脳の『視る』領域を『倍増』し、人間の魂、第六感を…どう進むべきかを研ぎ澄ます。
それが、
『ツーバイフォー・オリオン』
その力。



予知の悪夢と闘え。
恐怖に打ち勝て。


サイアナイド(憎悪、恐怖、拒否)。

ジューダス・キス(それは善か偽善か)。

セイント・アンガー(尊敬を得ない怒り)。

それらの武器をもて、彼らを助け、導き、生きていくのだ……』


ただ愛する者達に死んで欲しくなかった。
彼等は冷酷な殺し屋だった。
だが少女にとっては、この世の生きる喜びを教えてくれた大切な人間だった。




「ホルさんッ、

イルーゾォ君ッ、

ペッシ君ッ、

メローネッ、

ギアッチョ……ッ!」


思えば、あの日から始まった。
この来るべき日の為に、苦しみ、もがき、耐えてきた。









『泣くんじゃねえよ、シュガーマグノリア。
お前は魔物なんかじゃない。
オレの道を照らす天使なんだぜ?

幸せになるんだ。
オレはそれだけが望みだ』






「お兄ちゃん…っ」




彼女はその望みを叶える為に対価を払い続けてきた。
いくら兄が、拒絶しようとも。










『アマーロ。
お前は俺たちの天国への道標(ベアトリーチェ)だ。



どうか生きてくれ。
これから俺達は組織に反逆する
お前は俺達と一緒にはいられない。


だからお別れだ…』






「………リゾット……ッ!
いやっ、貴方を失いたくない」






血を分けた愛する家族、美しき兄。
生きる理由、大事な存在となった寡黙で不器用な男。
少女は二人に生きていて欲しかった。
だから自分がオリオンの星座の照らす傷つく道を選んだ。











『…機は熟した。

私自身よ…。


足掻け、

叫び、

彼等の名を呼べ、



運命の奴隷である彼等を解放する為に』



深紅王の宮廷。
この堕ちた街で死にゆく堕落天使。
再び深紅の悪夢。
空を昇り続けた雲雀の舌、地を這う毒蛇の牙。
星無き闇と黒の聖典。

ポセイドンの目覚め。
犠牲者の肉と骨に満たされて傾いた運命の天秤をかかげる盲目の女神。






少女は真紅と銀の星の輝く道を走る。


















「ジョルノ・ジョヴァーナ!!

お願い!
私に力を貸して!!

私も貴方に力を貸すから!!!」








確固たる黄金の意思を持った、輝く太陽の下に堂々と生きる少年に会う為に。

















H.31.1.22
アニメが始まって、五部のみんなが動きだし、兄貴の話す姿に、前から考えていた原作時の話をプロトタイプで書いてみました。
ポセイドンの目覚め付近の下りはボスの元ネタの代表作。ボスとヒロインのことを暗示したような連なりです。
続けられるか分からないし、途中で放り出す可能性も高いのであまり当てにしないで見守ってくださると嬉しいです。

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