オール・アイ・ウォント・フォー・クリスマス・イズ・『ユー』 Part1 (兄貴、ギアッチョ、リーダー、マジオ、イルーゾォ)※未完です
『A Natale cou i tuoi,a Pasqua con chi vuoi!
(クリスマスは家族と、復活祭は好きな人と!)』
イタリアのクリスマスは午前中にミサに出て、昼から家族と長い長い食事をして過ごす。
この日は、普段はあまり関心のない人間もやってきて、教会はやたらぎゅうぎゅう詰めで、ガヤガヤ騒がしくなるものだ。
「はぁあああ…っ!素敵だったぁ…!」
そんな中アマーロも、聖歌隊の少年達の天使の歌声とステンドグラスの荘厳な美しさに、ただただ両手を組み感激しながら、教会を後にした所だった。
目をキラキラした彼女と並んで歩くのは、兄のプロシュートと、彼女の友達ギアッチョ。
他のメンバーは任務でいない。
昨日の任務で疲れてるのに、付き合ってくれたギアッチョ。
毎年この時期は必ず傍にいてくれるプロシュート。
二人に感謝して、アマーロはニコニコしながら、二人に手を繋いでもらう。
プロシュートは
『こんないい女と光栄だな』
と美しく笑い、ギアッチョは
『!?
しゃ…っ、しゃあねーな!!!!?オメーすぐ手ぇ冷たくなるもんな!!!』
と耳まで顔を赤くしてぶっきらぼうに手を差し出してくれた。
「うふっ、うふふふふ!」
ダンスのステップを踏むように、ウキウキ楽しそうに歩くアマーロ。
それに、ギアッチョは不思議な顔をする。
「なぁやたらご機嫌じゃねーか、アマーロよぉ。 そんなに昼飯が楽しみなのかよ?」
「ん?
うーん、ご飯もそうだけど。
だって、だってギアッチョ!ギアッチョは楽しみじゃないの?
今年もサンタさん来てくれるかなぁって!」
カトリックが主流のイタリア、元々サンタクロースはいなかったし、そもそもトナカイすらいない。
それが近年は商人魂たくましいオモチャ会社の陰謀か、はたまたお祭り騒ぎが好きなイタリア人たちの性分からか、イタリアにもサンタが現れていた。
『バッボ・ナターレ(クリスマスお爺ちゃん)』という名前で。
そして子供たちは彼を大歓迎し、毎年プレゼントを楽しみにしているのだ。
そんな普通の子と同じようにする彼女の答えに、ギアッチョもハッとした顔をする。
彼はすぐ右拳を握りしめ、自分の顔の横にグイと上げて叫んだ。
意外な言葉と一緒に。
「…んだよ!楽しみに決まってんだろォオ!
オレはな!
今年こそサンタの野郎に勝つんだ!!!」
興奮で顔が赤くなり、キラキラ瞳を輝かせる。
強い人間に憧れる。
オレより強いヤツに会いに行く!
ボコボコにブッ倒してやる!
最強なのはオレだと証明してやる!
強敵と挑む時のような、そんな顔をして。
年齢より小柄で幼さが残りながらも、その目はランランと闘志に燃え盛っていた。
「え……、勝つ?
勝つって、何?
プレゼントもらうんじゃないの?」
「貰う事は貰ったぜ。去年はスノーボードをよォ。
…お前アイツと戦わねぇのか!
強ぇんだぜあの野郎!
ジジイのくせにやたら動きがすばしっこくてよォオ!
去年なんかな!
ゴム弾数百発ベッドにぶちこまれてからッ、クリームつきパイを顔面にぶつけられちまった!
でっけー白い袋を頭からかぶせられてよ、ジャイアントスイングされた挙句壁に叩きつけられたんだッ。
…それで気絶させられちまってよッ。
今年は野郎に借りを返すんだ!」
ギアッチョはその時を思い出して、ギリギリ奥歯を食いしばる。
そもそも、そんな眼にあったのも自業自得なのだが。
本人はとっくにすっかり忘れてしまってるのだ。
最初にギアッチョがサンタの袋を奪おうと殴りかかったせいだったなんて。
「さ、サンタさん…。そうなの?
やっぱり強くないとプレゼント守れないのかなァ。
あたしはね、いつも寝ちゃって会えないの。
サンタさんに会いたいから、頑張って起きてるんだけど。
でも、今年は!会うんだ!
お礼言うの!
いつもありがとうって!」
そんなアマーロの頭を撫でる手。
見上げれば、プロシュートが、エスプレッソの苦味に甘いクリームを混ぜたような顔でアマーロに笑いかけてきた。
「おいおい、お前ら。
まだガキんちょなんだから、よい子は大人しく寝てるもんだぜ?
おい、そこのグルグルボーズ。
テメエ、勝負云々は構わねぇがよ。
去年みてえに部屋を凍り付けにしたら、年末年始にギチギチに任務と訓練を詰め込むって、リゾットの野郎が言ってたぜ」
「えーっ」
「…チッ。わーったよジジイ。
クリスマスだからな、おとなしく言うこと聞いてやるぜ。(んな訳ねーがな)」
減らず口を叩くギアッチョにハンとプロシュートは余裕をこめて笑う。
普段からこうして闘う気満々なのは、感心な事だがと思いながら。
「それよりオメエら、もう着いたぜ。
騒ぎすぎて、物ひっくり返すなよ」
指差す先。
そこはパン屋。
お目当ては、イタリアのクリスマスケーキ『パネットーネ』だ。
それはバケツをひっくりかえしたような20〜30cmのスポンジケーキ。
何回も練り込んだ生地の中には、たっぷりのレーズン、オレンジピール、ドライフルーツを刻んだものを混ぜ込んである。
それをパン屋やスーパーで買うのが一般的なのだ。
アマーロもギアッチョも育ちざかりだからか、随分大きいのにそれをペロリと平らげてしまう。
ワインを混ぜたカスタードソースと食べるのも、こんがりトースターで焼いたのに、生クリームとバニラアイスを添えたのも美味しい。
二人はいつもどっちにするか食べ方に悩んだもので、それほど二人とも大好きなケーキだった。
「お兄ちゃん!
あたし3個欲しい!」
プロシュートのスーツの裾を掴んで、ブンブンアマーロはショーケースを指差す。
「オレは5個だッ!」
ギアッチョも負けずに主張する。
「…一人一個までだガキ共!
ったくクリスマス明けたら、三個1000円で安くなるのによ。
まぁ、いいけどな」
そして、他のメンバーの分をいれた大量のパネットーネを、三人で運び、帰路につく。
「お兄ちゃん、パネットーネ食べていい?
この…焼きたての匂いが!
もう!あたしに食べてって言ってるみたいだわ!」
「そりゃ空耳だ!食いしん坊!
飯食ってからにしろ!」
そんな掛け合いもしながら。
アマーロとプロシュートで作ったご馳走を、ギアッチョと三人でガヤガヤしながら昼から夜6時まで長い長い昼食をとる。
本当は、チーム全員とクリスマスを過ごしたかったけど、アマーロはそれでも幸せいっぱいで、ニコニコしながら楽しく過ごした。
途中ギアッチョとプロシュートにアジト脇の小さな庭に連れてかれた時は、彼女は感動した。
「目かっぽじって見てろよォオ」
とホワイトアルバムをまとったギアッチョと、
「アイデアはこいつだ。
コイツ、案外ロマンチストなんだぜ」
と、梯子と普段は凶器にも使ってる植木を切るハサミを持っているプロシュート。
「…なっ!!?うっせージジイ黙ってやがれ!
『ホワイトアルバム!!』」
と、照れを隠しながらもギアッチョは能力を発動し、巨大な氷の柱を作り出す。
それに梯子を立てたプロシュート。
「さあシュガーマグノリア。
オレ達の可愛いキム。こっち来い」
「…!
もしかしてっ、もしかして!」
「そうだ。そのもしや、だ」
氷の柱の側にワクワクするアマーロに、プロシュートは両手にそれぞれ持ったハサミをジャキジャキと素早く動かす。
パラパラ飛ぶ氷。
「うわぁあああ…!
あたし、キムになったんだぁ…!」
ハサミで砕かれていく柱はだんだん形を作り、削られた薄い氷は細かく空中に舞いながら、ヒラヒラとアマーロの頭上に降っていく。
それはまるで雪のように。
『シザーハンズ』のあのシーンのように。
「なんて…ロマンチックなの!」
とアマーロは何回も言いながら、クルクルと雪に合わせて身体を回転する。
「ありがとう、お兄ちゃん!大好き!
本当にありがとう!
大好き!大好きだよっ!ギアッチョ!!!」
感激してアマーロは二人にそれぞれ抱き着きながら、お礼を言う。
プロシュートは眼を細めて
「喜んで何よりだ、可愛いオレの天使」
と言って、大人の笑みでやわらかく頬にキスを落とす。
それと反対にギアッチョは
「ば…バカ!礼なんかいらねーよ!」
とバタバタアマーロを引き剥がす。
どうもギアッチョにとっては、色々と心臓に悪い1日だったらしい。
そんな赤くなったギアッチョに、アマーロはウフフと笑いかけてあげた。
ーその夜中、日付が変わって間もない時。
「帰ったぜーい」
「ふぁああ、疲れたぁーー。」
二人組で任務に行っていたホルマジオとイルーゾォが帰ってきた。
「よぉ。早く終わって良かったな」
フラフラしてる二人に、ソファーに座って『ダイハード』を観ていたプロシュートは立ち上がると、冷蔵庫から次々に皿を並べて、二人を座らせると、目の前に奮発したいいワインを注いでやる。
(ちょうど映画は
『マシンガンはいただいたぜ ホー・ホー・ホー!(By ミスター・サンタクロース)』
のまだ序盤のシーンだった。とは言っても二周目である。
兄貴はクリスマス映画と言ったら、『ダイハード』しかねえ、ビル爆破でマクレーンが飛び降りるのを観なければ、クリスマスじゃねぇと主張している。
ちなみに、ブルース・ウィ○スは、ジャン・クロード・ヴァ○ダムと並んで兄貴がリスペクトする男である)
「飯は死守してやったからな。ありがたく思え」
「おー!旨そう!!!」
イルーゾォは年で数える程しかない、豪華なご馳走に眼を輝かす。
彼は、ひょいとフォークを伸ばしたポルチーニ茸のソテーを一口口に入れる。
おおぶりのポルチーニのトロリとした感触、バターの豊かな香りが絡むソース。
一番贅沢な食べ方。
それに、クウッと拳を握りながら感激し、赤ワインを喉に滑らせ、美味しい美味しいと喜んでいた。
「おっ、この飾り切り、アマーロだろ?
やたら可愛いもんな。ちっと照れくせぇな」
ホルマジオはルッコラと牛刺しのカルパッチョをパクパク食べながら、ふとそばのアルバ風サラダに添えられてた星やリボンの形をした野菜をフォークでヒラヒラして見せる。
「オッサンと野郎には面白い絵面だからいいんだよ。
包丁さばき、アイツかなり上手くなったんだぜ。
明日アイツに旨かったって言ってくれねぇか?」片眼をつぶって、笑いかけるプロシュートは、脳裏でキッチンを蜜蜂のように働いてたアマーロの赤と白のチェックのエプロン姿を思い出して、また暖かな気持ちになっていた。
「そりゃあするよ!
あ、そういや、プロシュート。もう二人は寝たのか?」
イルーゾォからかけられた問い。
それに片眉をあげ、頭をふりながら分からねぇとプロシュートは言った。
「ああ、ベッドに横になってるっちゃあ、なってるんだがな。
アマーロはとにかく、ギアッチョは狸寝入りしてるかもしれねえから気をつけろ。
スタンド使うなって釘は刺しておいたがな。
去年、ちっとやり過ぎちまったからなぁ」
プロシュートは頬をかいて、イルーゾォ達に申し訳なさそうに苦笑いする。
そう、サンタに夢を持ってるアマーロの為に、去年もとい毎年プロシュートは老化した姿に手慣れた変装をして、彼女にプレゼントを渡していたのだ。
去年はギアッチョにも。
そして、その時ギアッチョの言ってた戦いが起きたのだ。
今年はホルマジオとイルーゾォも、真夜中にプレゼント渡す事になっていた。
それは、アマーロといかに気配に敏感なギアッチョに気付かれずに、一番素早くプレゼントを置けるかという勝負をプロシュートが持ちかけたからだ。
一番になったヤツには、他のやつらが自分の金をはたいて優勝者の欲しい物を買ってやるという内容で。
しばらく三人でグダグダしながら飲んだ後、時計を見て、そろそろ行くかという流れになる。
「それじゃ、まずはオレから行ってくるぜぇー」
立ち上がったホルマジオ。
手にプレゼントを持つとガサガサ音をさせながらリトルフィートを連れて、イルーゾォの
『生きて帰ってこいよ(ビシッ←敬礼ポーズ)』
の声に親指をグッと立てると、階段を上がっていった。
(三人の立てたルールで袋はやたらガサガサ音のするものと決めていた)
〜ホルマジオの場合〜
「(クリスマス、おめっとさーん…と!)」
部屋の扉を開けた直後、リトルフィートでミニミニ化したホルマジオ。
頭にはサンタの帽子のみをかぶり、部屋の内側のドアノブにのっていた彼は手にした先に輪を作ったロープをブンブン投げる。
輪の先はアマーロの寝るベッドの隣のサイドテーブルの引き出しにひっかかると、ロープに小さな栓抜きを通して、ドアノブにロープを引っかけると
「よっ」
と言ってザァアアアアーとベッドに向けて一直線に滑る。
そしてあっという間にたどり着くと、
「クリスマスおめっとさーん」
と小さな声で言ってポンとサイドテーブルに袋を置く。
そして、へっへっへと笑うとまたロープを使ってドアノブへ滑って部屋を脱出する。
そんな透明フィルムにインクブルーのリボンが可愛く留められた袋。
その中身の、赤・青・緑・ピンク・黄色の鮮やかな包み紙に包まれた飴玉とキャラメルとクッキーのお菓子の袋詰めは、どことなく誇らしげに置かれていた。
ところがアマーロはよかったものの、ギアッチョで彼は脱落してしまった。
何せドアノブに手をつけた瞬間、跳ね上がるような冷たさが手を走ったかと思うと、ビキビキと氷が走り、手を縫い付けられそうになったからだ。
こりゃダメだと思い、慌ててその場を後にする。
「うぇえ…寒っ!
『任務失敗だ』。
気をつけろっ。
あのクルクル小僧、ガンガン臨戦態勢入ってやがる!」
ギアッチョにバレないよう足音を消しながらも、そう言ったホルマジオはさみーさみーと浴室へ姿を消した。
「じゃ、次はオレだな」
そう言って、頭にポフンとサンタ帽をかぶり、鏡を持ったイルーゾォ。
(とりあえずギアッチョの所から行くか)
何故かネジ巻き式のオモチャを持つ彼は階段を昇っていった。
そんな最中、兄貴は黙々と変装の準備をしていた。
何か悪い笑みを浮かべて。
→To Be Continued?
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すみません、続きます。
長くなりそうだったのと、クリスマス中に一つは更新したかったんです。
(^_^;)
タイトルの元ネタはマライアの『恋人たちのクリスマス』。
でも『you』は恋人だけじゃなくて、『あなたたち(兄貴と暗チの皆)』って意味にして使ってます。
時間はまだ暗チがそろってなくて、メロン、ペッシ、ソルジェラはまだいません。
ヒロイン→12才、ギアッチョ→13才くらい。
ちょっとサンタを待つにはアレな年齢かもですが、ギアッチョはサンタは闘うジジイだと思ってるので、サンタ(もとい変装した兄貴)を楽しみにしてるんです。
↓いつもパチパチありがとうございます。
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