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フーリッシュハートとダークスター4
「…あ!!お兄ちゃん見て!」
「ん?」

二人の数メートル先にウサギの着ぐるみが立っていた。

そのウサギは沢山の風船とお菓子の詰まった袋を持って、アマーロに向かって一生懸命にフンフンと手を降っている。

ピンクの身体に白のエリ、背中には天使の白い羽根。

小さな赤いハートと白と金の星形スパンコールが散りばめられキラキラ光る、可愛らしい着ぐるみ。

後ろの沢山の花に囲まれたそれは、つぶらな瞳をして、口元はニッコリと笑っていて、アマーロはその姿に胸を撃ち抜かれた。

「可愛い………っ!すっごく可愛いねぇ……!」

うっとりした顔で見つめる。

それは『フーリッシュ・ハート』という名前で、特に女の子に人気がある着ぐるみだった。



「お兄ちゃん!
あたし、あの子と写真撮りたい!いいでしょ!」

目をキラキラ輝かせる彼女はフーリッシュハートに手をふり返しながら、プロシュートの腕を握ってニコニコする。

その笑顔に、ちょっとは元気が出た様子に、彼は気をとられてしまった。


…その着ぐるみをよく見ずに。

「ああ……、折角だもんな。ほれ、カメラ出せ」

「はい♪」
プロシュートがアマーロから赤いカメラを受け取ると、アマーロはウワァアイとハシャいで走っていく。


(まだまだバンビーナだな……)

カメラの設定を、どうやってるかわからないが、あの着ぐるみの指のない手でやり、プロシュートは着ぐるみの横に立つアマーロに向かってカメラを向ける。


(言えねぇな、あれの中身……。知ったらアマーロはきっとぶっ倒れちまう……)


フーリッシュハートの中身の男も、プロシュートは知っていた。

筋骨隆々のスキンヘッドにサングラス、タンクトップ姿に、好きな音楽は北欧のブラックメタルとデスメタル!!
ライヴ中は会場で乱闘に参加する!

だが、その趣味は庭のチューリップ栽培とシュークリーム作り!好きなキャラクターはクマのプ○さん!そして女房の尻に敷かれてる愛妻家の43歳!

そんな男は、このフーリッシュハートをやりたいからとここで働き出したらしい。


そんな見た目はゴツいが、サングラスを外したキラキラ澄んだ瞳と乙女チック親父ぶり、まぁコイツなら大丈夫だろうと思ったのだ。




思い込み、勘違い。
それは仕事をする時でも恐ろしい事態を起こす。
そして、普段一般人を巻き込んだり物をぶっ壊す以外仕事を完璧にこなすプロシュートは、暑さで脳天がクラクラしていたのと、アマーロのあまりに嬉しそうな様子に、つい、勘違いをしてしまったのだ。

それが、数秒後…………、恐ろしい事態を引き起こす!







「ファッミーリアッ!(はいチーズ)」
と言いながら、アマァーロはフーリッシュハートに抱き着きニッコリ笑う。

それにサッとシャッターを押そうとした瞬間、プロシュートはピクッと硬直した。









(何だ……………コイツは………!いつもと……違う…っ!!)





やたら……ベタベタ触る。
やけに動きが気持ち悪い。

アマーロに頭をすりすり擦りつけ、背中を撫でるフリしてお尻を触り、アマァーロが
「きゃっ!くすぐったいよー」
と笑うのに、コクコク頭を下げながらも、体がクネクネ動いてる事に。

そして更に気付いた。
背後の花壇。
そこに沢山飾られた風船と作り物の花。


その下から見える……………プ○さんのタトゥーが彫られたスネ毛の生えた足を……………。














「シュガーマグノリアァア!!ソイツから離れろッッ!!!!」

「………えっ?


きゃあああああああああああ!!!!!!」





…ジャキン!!!!


アマーロが突き飛ばして慌てて距離をとったその瞬間。

プロシュートがオーナーの眼を盗んで勝手に改造したダークスターの両足がパカッと開き、飛び出したのはサブマシンガン二丁!

それをすぐ様、フーリッシュハートを狙って撃ちまくった。

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!!!


「よっ!
はっ!
とおっ!!!!」

それを人間離れした素早い動きでサイドロールしながらよけまくるフリッシュハート。

そして転がりながらアマーロに向かって腕をのばしたソイツは、背中を掴んだかと思うと、あっという間に脇に抱えて高笑いをした。

「はっはっはっはっはっはっ!!まんまと騙されたなぁーーー!まんまと!ハッハッハ!!」


「えっ…………ウソッ!!」

「テメエ!まだ生きていたのかぁああああああアアアアアア!」

聞き覚えのある声にアマーロの顔は青ざめ、プロシュートはぬいぐるみ内で顔を真っ赤にして切れまくる。



「ふふっ、桃みたいにプリプリ……、うふふっ、か わ い いなぁ もう!」

と背筋の凍る男の声と共に、今度は確信犯的にヌメヌメとお尻を触られた後
「また後で!」
とぱんと軽く叩かれ、アマーロはあまりの恐怖に涙が飛び出す。



「いやっ!イヤァーー!!」

「貴様ぁああああああアアアアアア!」

「フッフッフッ!
オレの勝ちのようだねぇえん!」

そう勝ち誇った様子のフーリッシュハートは、プロシュートを悔しがらせる為にあえて頭を脱いで、顔を見せてやった。

バサッと蜂蜜ブロンドが太陽の光に粘っこく輝いて現れる。

ハァハァ息を漏らしながら、よこしまな目線をアマーロに向ける頬を紅潮させた変態。


そうメローネの再降臨だった。


「このおマヌケどじっ子クマさんが!!
勝ち組はこのッメローネだァア!依然ッ!変わりなくッ!!
ハーーーーーーーーーーハーッハッハッハッハッ!!!」


高笑いをしながら、再びぬいぐるみをかぶったメローネは、人間とは思えない動きでダッシュすると、隠してあったバイクに飛び乗り、
「さぁ、ようやく二人の時間だぜベイベー(はぁと)。

ね…………オレ………はじめてだから…………優しくして?」
と言って急発進し飛び出していった。


「待ちやがれぇえええええ!!!!!!!」









「うわぁあああああっ!たーすけてぇーーーーーーーーーー!!!!!」


泣きじゃくるアマーロ。

それはメローネの気持ち悪さと、プロシュートの容赦ない銃撃の嵐からか。

バイクで構わず突撃するメローネに驚いて、客がザッと広く道を開けるからよかったものの、バイクの走った後を追い、建物の壁を三角飛びしながら兄貴は銃を撃ちまくる。

メローネの進行方向にある看板を撃ち落としたり、ゴミ箱をバイクに向かって投げつけたりと様々な妨害を行なった。


だがいくら兄貴でも、バイクを追いかけるのと、着ぐるみオンの状態はキツかった。




「グッバイ!クマちゃああん!アンタの負けだぁーーー!!」



ウッヒャッヒャッヒャと笑いながら、尻を叩くウサギの着ぐるみ。
非常に見るもの全てに腹をたたせるものだ。

そしてバイクはとうとうプロシュートの視界から姿を消してしまった。

「はぁはぁ…………!!クソ!!!野郎………ッ!!!許さねぇ……!アマーロを………!よくも!!!あんな怖がらせやがって!!
食われちまう!!

アマーロ!
アマーローーーーーーーーーー!!!!!」

息を切らせながらも地面にガンガン拳を殴り付け、プロシュートは近年リゾットとの初対面時以来に最高に怒りまくった。

そして怒りながらも、いなくなった方面に向かって再び彼は走り出した。




「プロシュート君!大変だぁああ!
変態が現れたんだ!」
「オーナー!!それは知ってる!!!
野郎!オレの妹をさらいやがった!!

悪いが………ちょっくら……物をぶっ壊すかもしれねえ!!!」
「えぇええ!ちょっと困るよそ……「ああっ!!?テメエ……物ブッ壊れるのと、テメエの命(タマ)ブッ潰されるのどっちがいいんだ…………。

妹の貞操が……奪われちまうかもしれねぇんだ!今のオレは悪魔にだってなれる………!犠牲者はまずテメエからだ!!」
「う、うん………うんうんうん分かったっ分かったよぉお〜!

で、でも!お客さんに怪我はさせないでくれ!
それにここは遊園地なんだ!
子供にトラウマにさせたくないんだ!
あまり刺激的な殺人シーンも…………あ、ちょっと待ってよーーーー!」


メローネの足跡を追うのは簡単だった。
何故なら、通った先で幼女や少女はスカートをめくられワンワン泣いていて、カップルは頭に白いペンキをかぶせられ
『真っ最中☆』
と張り紙がはられ、呆然としていたからだ。



その姿に客たちは
「なんだ、何かのイベントか?」
と言いながらも戸惑うばかり。
またバイクを化物じみた速度で追いかけた紫の愛らしいクマが、本格的なガンアクションを行なったその姿に、男の子たちは
「……カッコイイ…………ッ!
パパァ!ボク、将来クマさんになる!」
と叫ぶ姿もあった。




(はぁ…………!クソ!時間がねぇとはいえ…………やっぱこの格好は動けねぇな………!!

脱ぐか……………、しかしオレのスーツはスタッフルームにある……………)

そして頭をよぎるのは、観客にあまりトラウマを与えるなというオーナーの言葉。


「クッソ………!!めんどくせぇな!
だが、ここまでやったんだ!バイト代をもらわねぇとオレのプライドが許さねぇ!」

舌打ちをし、とりあえず脱ごうと目についたドアをあけ、中に入る。

ダークスターの着ぐるみを脱ぐ。

そしてダークスターの手足からまだしまってあった凶器を取り出し、弾薬をつめ、散弾銃は弾が束になって飛び出し破壊力が上がるようにとザクザク銃身を切り落とし、右手にトゲつきのメリケンサックを装着する。


「騒ぎを起こすな、か…………クッソ……………………!










ん!?」















その時、彼はあるものを目にした。




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