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フ―リッシュ・ハートとダークスター(プロシュート+メローネ).1※捏造+キャラ崩壊注意。
プロシュートはその日も変わりのない朝を過ごしていた。

朝4時きっかりに起床し、昨夜一緒に寝てきたアマーロの頬に軽くキスをした後、眼を僅かに細めて頭を撫でると、静かにベッドから抜け出し、
シャワーを浴びたらパリッとノリの利いたシャツとスラックスを着て髪を綺麗に結い、
モンテクリスト伯を片手に読みながら、15kmを汗ひとつかかずにスタスタ散歩して、
新聞を買ったら近所の老人達と世間話をしながら情報収集をし、

(その日も老人たちは、最新の健康の話題から、入れ歯があわないから粥しか食えないだの、やれ30年下の女性をひっかけた、オレは26才の子を捕まえたと火花を散らしながら激しい若さ自慢を行ったりしていた。

この若さ自慢対決は、参加してなかったプロシュートの六十代の銀髪に渋い雰囲気に惹かれた、ジョギング中の若い三姉妹が逆ナンパをしてきた事で決着がついた。

その三姉妹といえば、スマートな断り言葉と共にダンディーな微笑みを向けたプロシュートに悩殺され、額に手をあてため息をつきながらバタバタと気絶してしまった。
ちなみにその場の老女数人も同じ事になったが、これも彼には大して珍しくなかった)

朝市でアマーロが好きそうな果物とバーチチョコレートを買ってやって帰路につき、
洗濯物をパシッと干し、部屋中を磨き、ゴミ出しなど雑事をあり得ない速度で行い、

アマーロを起こしにいき、
「おい、起きろ!!!!」
とベッドの端をガンガン蹴りまくりながら呼び、それでも
「あと…10分〜………………そしたら……起きるぅ……」
とむにゃむにゃ呟くのに、
「テ メ エ はッ!!
毎回!!学習しねえなぁ!!」
と両腕をガッツリ掴みつつの全力のくすぐりによって笑い苦しませて起こして、
一緒に朝食を、イタリア人にしては珍しくしっかりしたものとって、アマーロが
「あたし、牛乳だけでいい…」
と言うのを
「食いやがれッ!!!!
すぐブッ倒れるくせに!!」
と口に無理矢理朝食を押し込んでから、
アマーロを送ってやって、
そして表の仕事場へ向かう………………つもりが、


「…プロシュート、いいか」
と突然リゾットがコートをはためかせて現れたので、面倒に思いながらも任務帰りらしい様子の彼を車に乗せてやり、共にアジトへ向かった。その道中、リゾットのあまり変わらない顔色からでも即座に察したプロシュートは、車を急ブレーキでキキッと停止させると、アマーロにしたのと同じく
「オ メ ーはッ!!また何も食わなかったな!!!!ったくよぉ!!」
と、カバンから出した自分の昼食
-生ハムとアスパラとチーズ入りのフォカッチャサンド-
のラップを片手で器用にはがすと、振り向き様にリゾットの口に
「体調ぐらい気をつかえッッ!」
と二個立て続けに押し込むと、その脇のドリンクスタンドにガンッとアイスティーのカップを乱暴に差し込んだ。



「………すまないな」

リゾットは無表情のままそれを食べていた。
彼は普段からそうなのだ。
チームメンバーの事は口には出さないものの何よりも心配しているのに、自分の事は大抵ほったらかしなのだ。
放っておけば、3日食事抜きで生活するのも珍しくない。
その度にプロシュートはリゾットに時々関節技をガッシリ決めながら、その口に何かと食べ物を突っ込み強制的に食事をさせていた。

別に普通に目の前に出せばリゾットも食べるのだが、絞め技をするのは単に彼の趣味だ。
抵抗するのも大乱闘に発展しかねないので、そういう時はリゾットは大抵静かにしていた。
モグモグと味わうリゾット。だが、わずかにハッとした様子でパンのモチモチ感と香ばしさに密かに感動する。
彼は美味しいものに敏感なのだった。


「…美味いなコレ…………。
どこで売ってるんだ?」

「あー、パンはオレが作ったんだよ。この前の休みに近所の世話になってる婆さんのカルチャー教室に付き合わされて覚えてな。婆さん、一人じゃナンパされたら面倒だってよ。

ったく、ご近所付き合いはめんどくせーなァ、おい…」

「…………………………」




















「…で、なんだ。
急に呼んでよ。

オレは忙しいんだぜ。これから仕事に行かねぇと」


アジトの専用オフィスで、プロシュートは腕を組み、リゾットは机に座り両肘をつきながら手を組んで普段と変わらない厳しい顔(何も考えてない時も彼はそういう顔をするのだ)をして、二人は向かい合っていた。








「…問題ない。
仕事先になら、俺からお前はしばらく休むと連絡した」

「……どんな任務なんだ?」

このピリピリした空気。
プロシュートは何か重大な話でもあるのかと、身構える。

それに軽く頷くと、リゾットは重々しい口調で切り出す。


「そうだ、お前への任務だ。
…拒否権は無い。必ず達成しろ。期間は一週間だ」


一体どんな任務かと、プロシュートはその鋭い目付きを更にきつく研ぎ澄ませ、任務内容を聞いた。

















「…………………………………………………はァ?

着ぐるみ着ろだと…?」

「そうだ。
パッショーネが経営してる行楽地なんだがな。

ここ数日暑いだろう。それで、バイトの男が一人熱中症で倒れて病院送りになった…。

この掻き込み時にオーナーが大変困られたらしく、以前バイトをしてたイルーゾォに泣きついてきたんだ」

この遊園地。大変人気のある場所で人口密度とアトラクションの多さは某ランドばりに凄まじかった。

そして、ヤクザもとい凶悪組織パッショーネが運営する……というからに、ただの遊園地ではなかった。

イルーゾォはかつてここのミラーハウスに惹かれ、アルバイトをしていた。
彼は大変真面目に、毎日誰よりも早く来て、全ての鏡を丁寧に磨いている程に力を入れていたのだ。
ちなみにやめた理由は、子供が鏡を蹴りつけたり落書きをするのが辛くなったからという彼特有のものだったりする。



「……じゃあ、イルーゾォにやらせりゃいいじゃねえか」

嫌そうな顔をしながら、プロシュートは吐き捨てる。
彼は表の事務仕事が不在の間、代理にやるはずの同僚の中年女性のやるであろう大量のスペルミスを思い、頭がすでに痛くなっていたのだ。

それでもリゾットはイルーゾォはないとキッパリ言い切る。

「お前…、アイツの体力がないのを知ってるだろう。
スタンドに頼りきって、ろくに重いものも持てないだろう?

そんなヤツが炎天下で着ぐるみなんか着たら、数分でへばるのが目に見えるじゃあないか。


それに何より………………………………………………………………………………………………………………………………、











先日の貴様がぶっ壊した壁代とソファー代諸々を弁償して貰わないとな!!!!!!

あの殴り合いだけで、俺が許す訳ないだろうが!!
あの時も貴様は俺を窒息寸前まで技をきめたっけな!
弁償の額云々以前に、貴様にはいい加減ケジメをつけてもらわないと俺自身が納得いかねえんだ!!
貴様の性格は知ってる!!そしてそれ以上に成果を出してるから眼をつぶってきた!!
だがな!!
テメエは前科が多すぎるんだッッ!!!!!!」

ポツポツとした口調から、その時の事を思い出し段々と怒気の強まる口調。
それはさながらヴェスピオス火山の噴火のようだ。

オフィス入口の鉄製の扉は逃がすまいとガタンと閉まり、リゾットの机、椅子…様々な鉄製の家具が、彼の磁力に呼応してガタガタガタガタ激しく揺れる。
更に怒りのボルテージが上がれば、それは全て凶器と化して、襲いかかるのも、ここのチームメンバーはよく知っている。

それは、イルーゾォやホルマジオなら冷や汗をかいて全力で謝る程の恐ろしい様子だった。


「……そういう事か………」

だがプロシュートは頬をカリカリ掻きながら、やっちまったなと皿を一枚割った程度の気持ちでいただけだった。
彼の棚のあげぶりと、図太さはチーム一といっていいだろう。



(はぁ……………しゃあねえな………)


怒れるリゾットの決めた事は絶対だ。
それに、暴れた自分のやった事もしっかり覚えていたし、普段から飲み会で暴れた時にリゾットが面倒をみてくれていたので、なんだかんだ彼は覚悟を決める事にした。






「君がプロシュート君だな。
よろしく!私がここのオーナーだ。
分からない事は何でも聞いてくれたまえ!!」

「ああ、どうも」

人懐こい笑顔で差し出された(ただし彼もヤクザの)オーナーの手をプロシュートは握手する。
今回は老人ではなく、普通の若い姿のままだ。


アライグマとクマが合体したような容姿のオーナーは、プロシュートを見ながら、
「君くらい顔が良けりゃモデルでも出来るのに、なんでこんな仕事を選んだんだい?」
と不思議そうに聞いてくる。



その問いにプロシュートは好青年の演技で
「子供が好きなんだ」
とホルマジオが目にしたら爆笑必至の、普段じゃ絶対絶対絶対に浮かべない、ミントシャーベットよりも、レモンシャーベットよりも爽やかな笑顔で言いのけていた。

「ハッハッハ!!
若いのに感心なことだなぁ〜!
君なら完璧に出来る気がしてきたよ!

で、早速なんだが、仕事の説明をさせてもらうよ。

まぁイルーゾォ君の友達ってなら大丈夫だろうがね」



オーナーの話に耳を傾けるプロシュートの様子をステルス状態で伺うのはリゾットとイルーゾォの二人。





(…暴れてないようだな)

(オエッ!!プロシュートの爽やかな笑顔、気持ち悪いなッ)



この二人は万が一、何かの琴線に触れたプロシュートが暴れてオーナーを半殺しにしないか、念には念を入れ、様子をみていたのだ。





(やっちまった事のケジメはつけるとして………………………………コイツァ、悪意を感じるぜ。
オレに恥をかかせる為の!

本当に弁償させたいんなら、もっと稼げる仕事があるんだ!
わざわざ、オレに!!やらせたかったんだな!!
あんの陰険下劣のイカ墨野郎!!!!)


もう既に、彼の低い沸点もギリギリの数値だったので、リゾットの行動はあながち間違ってなかったのだが。







「それで、プロシュート君が着るぬいぐるみを選んでもらいたいんだがね。
どっちがいいかい?」

「選べるのか?」

「ああ、子供に汚された時とかトラブルに備えたりで、いくつか置いてある。

君も恥ずかしいだろうし、まぁそんな派手じゃない柄のもいるから、それでも選べばいいんじゃあないか。

ほら。よく考えて」


ノソノソと案内しながら一つの扉の前に行き、鍵を開けると、ややたてつけの悪いドアをギイィと音をさせながら、オーナーは中の電気をつける。

その中の大量のファンシーな着ぐるみの山を見て、イルーゾォは噴き出しかけた口を抑えながら、肩を震わせ死にかけのゴキブリのように笑いをこらえていた。
隣のリゾットは何を考えてるかは分からない。






「そうだな…………………………………………………………………………………………、














じゃあコレで」









「ブッフォッッ!!!!」
(………おいっ!)

慌ててリゾットは笑いをこらえる、イルーゾォを引っ張りながら帰路につく。





「え………………これがいいの?」

「こ れ が い い」



ゴゴゴという音と共にプロシュートが指差した先、









それは白い愛らしいクマが、赤いモコモコの服を着て、頭にタンポポのような飾りをつけ、背中に蝶々を思わせる羽をつけている、

いわゆるこの遊園地で「ラブ・バグ」と言われる、ぬいぐるみだった。

















残念ながら、足の長いプロシュートには入らなかったので、やむなく諦めたが。

そうこの男、百何人も地獄に送ってきたエリートヤクザにして、ファンシーなものも嫌いどころか、かなり好きだったのだ。

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あきゅろす。
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