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Angel of Death2
※少しオリキャラの名前出てるのと兄貴の管理人の捏造設定が絡んでます。














「派手にヤりやがった。
何が起きやがったんだ…こりゃあ」
ホルマジオは小さい体のまま、目の前の肉塊と化した人々を横目に走り抜け、一直線に守衛室へ向かう。


ホルマジオは誰も居ないことを確認してから元の大きさに戻ると、施錠されたドアを慣れた手つきで簡単に開けて中に入った。
「悪趣味な野郎ってのは間違いねえな」
彼の目の前には、頭蓋骨が破壊されて脳髄がこぼれた守衛らしき男。
男は抱え込むようにして、自らの切られた首を持っている。
ホルマジオは目にした犠牲者と目の前の男の殺され方から想像する。
敵は、楽しんで殺している。
死体は玩具で散々遊び尽くされたかのように損傷が激しいものが多い。
相手が苦しむ姿を見る為に、あえて手間のかかる殺し方をし、死後も死体を凌辱している。
まるで幼い子供が虫の手足を引きちぎるように。
こんなに大勢をこのような手口でいちいち殺すのに時間がかかっているだろう。
複数の人間の手口か。
いや、それにしては、はっきりと根拠は言えないが死体達の様子からは何か似た様なものを感じた。
何より、相手のあのスタンドの能力で、こうする事も出来るだろう。
少なくともホルマジオは正面から向き合って、この敵と戦う無謀な事は最初から更々なかった。

マスターキーを持ってる事を期待して体をまさぐったが見つからず、部屋をかき回して探して、ようやく埃まみれになったスペアキーを見つけてポケットに突っ込む。
そして、壊されてると思った守衛室の監視カメラのモニターがまだ写っている。
これは敵がわざと自分をおびき寄せる為にしてるのだと理解しながらも、目的の2人を見つける為に目を素早く動かす。

アマーロは、いた。
診察で患者が寝る為のベッドで目を瞑っている。
ここからならば、比較的すぐ行けるだろう。
助けにいかねばならない。






『オレの…家族なんだ…たった一人の』
脳裏に聞こえる金髪の美丈夫の声。
以前任務明けの夜、煙草を吸って酒を煽り、他愛ない世間話をしていた時。
プロシュートはジャケットから出した特殊な開け方をしなければ、ただの時計しか見えないロケットをホルマジオに見せた事があった。
彼女の最大の特徴である白い髪と赤い瞳を知られない為の白黒の写真。
彼女はにっこりと笑顔を浮かべている。

「おっ、あまり旦那と似てねえな。まぁ睫毛はすげえな。

だがとんだ美人さんだ。将来楽しみじゃねーか」

「Grazie。
まあな…完全に似てねえのが救いだった。
だから、オレはあの子と暮らせた」

口元に微かに笑みを浮かべたプロシュートはグラスを一気に煽り、瞳を細めた。
それがこの男には憎らしい程サマになっていた。
「それとよ…ホルさん」
「あ?どうしたよ?」
ホルマジオが軽い気持ちで答えると、プロシュートはガラリと真顔に変えるとホルマジオに向き直り。


「!!?」

ーガシャンッ!!

何が起きたかは一瞬分からなかった。
酒瓶とグラスが砕け散り、グラッパの濃密な香りが薫る中、ホルマジオが最初に感じたのは眉間の冷たい感触で。そうしてから、ようやく彼はプロシュートが自分を壁に押し付けて銃口を突きつけてるのだと理解した。


「おいっ、何しやがるっ!?イカれちまったのかァアア」

「…いいか、良く聞け。
何故、
このオレが、

あえて、この写真をオメエに見せたのか。


ただの家族自慢じゃあねえ。
そりゃあ、この子は世界一自慢してやりたい女の子だがよ」

一瞬抵抗しようとしたホルマジオはプロシュートの青い瞳の色に浮かぶ感情に気付き、抗議を飲み込み、真っ直ぐ見つめる。
冷たい宝石(ホープレス・ブルーダイアモンド)と水の滴る月(ウォータリー・ムーン)ゆらゆら交互に変わる、その双眸に。





「いいか、これはただのお願いだ。
同じチーム内のいざこざじゃあない。
まあ、この瞬間断ればオメエの頭の中身がこの壁の新たな模様になるだろうが…」

その声色は鏡を張った水面のように静かで。


「何が、目的なんだよ…」


有無を言わさない空気が張り詰める。
その空気を震わせるように、プロシュートは一つ一つゆっくりと言葉を発していく。


「オメエと行動して確信した。

オメエの力は応用がきいて隠密向きだ。
このオレより遥かにな。 
オメエのスタンドは人を殺すには非効率だが、そんなこたぁ使い方次第だ。オメエを見て改めて理解出来たぜ。
本体のオメエは慎重で頭が切れる。
細かい場所まで抜け目無く、すぐ気付ける力がある。
今もこれからの死戦で生きていけるだろうよ。








そうなんだ、
このオレよりも…。

オレだけじゃあ駄目なんだ。
オレの力じゃあ、これからはアイツを守り切れねえかもしれねえんだ。

オレの手は花を一輪枯らすことしか出来ないんだ。
アイツが泣いていても、オレの手じゃあアイツには不十分だったんだ。

この前な、
オレはアイツに言ったんだよ。
このcimitero(※チミテーロ「墓場」)と呼ばれる場所に来たオレを受け入れろとな。

本当は縁を切って、アイツを遠くの、パッショーネの力が及ばないくらい遠く離れた場所で、離れて暮らさせるのが1番だって分かっていたのに。

ただ、アイツと離れたくない、オレのガキじみたワガママの為に…。
あの年の、ダチ作って笑うのが仕事の女の子に、無茶を言っちまったんだよ。
馬鹿な兄貴の為に、命をかけろ怯えて暮らせとな。



なあ、頼む。
アイツを守るのを手伝ってくれ。
オレがいない時に、アイツに何かあったら真っ先に助けて欲しいんだ。

オメエは敵にしたら残酷だが、味方にすれば義理堅いヤツだとオレは信じてるんだ。
共にした時間はまだ短いが、そんなこたぁ関係ねえ。
オメエはいいヤツだ。
オレの目に間違いはねえ」

彼は言った。
悪い話ではない。
この頼みをのめば、ホルマジオにも見返りもあると。
ホルマジオがこれから生きて行く為に彼が手を貸すと。
ホルマジオが妹を守ったことが原因で、障害が残るまでに傷付いたら、十分な金をやると。
自分が死んだ時、もしくは彼女が彼の元から離れる時が来た時には、それ相応のものはある。
その証拠はある、これをまずはくれてやると。

プロシュートがホルマジオに銃をつけたまま、取り出して目の前に突き出した金貨。
それは表面にアレキサンダー大王の横顔と裏面には勝利の女神ニケの姿が刻まれていて、安い灯の下でも眩しく輝いていた。

「古代マケドニア アレキサンダー大王 スターテル金貨だ。最低でも143万は下らないだろうぜ」

「アンタ、そんな金があるなら、こんなまどるっこしいコトしないで、それ使って幹部になりゃあいいじゃあねえか」

「そんな簡単な話じゃあねえんだよ。
このチームに回された奴らは、金があったって意味がねえんだ。


あの薄汚ねえポルポが言ってやがったろ?
オメエも試験で、言われたんじゃあねえか?」

吐き捨てる様に言うプロシュートに、ホルマジオは納得したように頷いて答える。

「…信頼、か」


「そうだ、信頼だ。

ここじゃあ信頼がモノを言うんだ。 
オレ達ぁ、組織にとっちゃ狼の群れなんだ。
オレ達には、これからも与えられるこたぁねえ。
信頼されねえオレ達の金なんかせいぜい上の奴等に吸い上げられちまうだろうよ。

そんな死に金になるのに比べたら、オメエに使った方が遥かに生きた金になるんだ…。

金ならある。
マエストロ・ザバイオーネ…最近死んだ幹部の、スカしたクソジジイの…知ってるだろ?
アイツはオレの大叔父で、オレはヤツが戦時中に作り上げた遺産を受け継いだんだ。
オレがいつもしてるこのペンダント、見覚えあるだろ?ノーヴェと呼ばれてる家訓みたいなもので、ガキの頃ジジイから貰ったんだ。
オレの奴への繋がりも調べりゃあ直ぐ分かる。
そいつが証拠だ。

オメエへの金を払っても、アイツがオレから離れても一生食うのに困らねえくらいあるんだ。
一生ヤツには教える気はないが。
少しずつ生活出来るくらいに送金するようにしてあるんだ…」

ホルマジオはプロシュートが同じチームとなって間がない自分にそこまで話す事に呆れ果てたと同時に、その話を始めてからプロシュートが銃を下ろしたことで彼の真意を察した。

これはプロシュートがホルマジオを『信頼』しての行動だと。
今彼ら暗殺者のチームに最も無縁の、価値がある『信頼』だと。
生きていく為に互いに力を貸すのだと。

(旦那、オメエは、本当に馬鹿な男だよなァア…)

間近でガリガリと歯を噛み砕く音を聞く。
プロシュートは苦虫を噛み締めた表情のまま、下を向くと小さな声で呟いた。

「オレの天使。

オレの生きる理由だ…たった一つの…。


目を閉じれば笑顔が浮かぶ。
思い出せば、どんな疲れも吹き飛んじまうんだ。
オレの居場所なんだ。
何があっても生きていける。


オレの可愛い家族。
何が幸福か知らなかったんだ。
アイツに出会うまでは」

そう呟いたプロシュートの手から銃は無くなっていた。
それはいつの間にかホルマジオの手に握られており、
その銃身には、イタリア語で信頼を意味するfiduciaが皮肉をこめた意味で描かれている。
武器を持って、信頼を示すと。
それを彼がホルマジオに持たせることで『信頼』してる証として。

「はぁあ…オメエは普通にモノ頼めゃあいいだろうが」
なんて馬鹿な男だ。
ホルマジオはそう思ったが、その気持ちとは裏腹に、彼は頭をガシガシ掻いてから、こう言った。


「しょ〜がねえ〜なぁ〜っ。
ホンットうにしょおぉおがねぇなァアア!」
と。

ホルマジオは、この時から自分も心底同じように馬鹿になっちまったと思ったものだ。




だが、そんな自分も悪かぁねえと苦笑した。

信頼されたのは、初めてだったのだ。
このパッショーネに身を置いてから。

それがホルマジオには嬉しかった。



































あれからプロシュートは度々ホルマジオへ言った。
『In bocca al lupo{※イン ボッカ アッ ルーポ(狼の口へ飛び込め)}
と。
イタリアでは、一世一代の勝負へ挑む人間へ向けた激励の言葉で。

それにホルマジオはしょうがねえと口癖にしながら答えていた。

『Crepi (il lupo)!(※ クレーピ)』
狼がくたばるように、と。
やってみせると。








(やるしかねえな)

まずアマーロからだ。
すぐにリトルフィートを使い、縮まるまで彼女を守りながら連れて逃げる。
アマーロがホルマジオのポケットのサイズまで小さくなったら、ポケットに入れて、足手纏いの心配をなくした後に、リゾットの元へ行く。
アマーロを逃そうとしても、今の未知のこの場で確実に安全な場所と判断できる場所は見つからないだろう。
何より彼女の先ほどの取り憑かれた様子を見ても、1人にしてはならないとホルマジオは判断した。
そして、リゾットも探した。
だが、映るのは死体の山のみ。
死体の中にも、あの銀髪の並外れた背丈と体付きの屈強な男の死体も見つからず。

(リゾットはどこにいやがる!
クソッ、見当たらねえな。この様子だと監視カメラが壊されてる最上階にいるようだなッ。
敵も、おそらくそこにいるだろう。
奴の目的は、リゾットだと嬢ちゃんは言っていたな…。これも、罠だろうな。
仲間であるオレへ向けての…。

だが、ヤツはまだオレの手の内を知らねえ筈だ。
オレの力を知っているのは、旦那とリゾットだけだからな…それが、数少ねえ切り札となればいいんだが)

ホルマジオは、注意深くあたりの様子を伺い、誰もいないのを確認して電話を取り出す。


「Pronto?

旦那…オレだ…これから行く」

通話部分を手で覆い、ホルマジオはプロシュートから必要な事をあらかた伝えると、何をすべきか、どうするかを手早くプロシュートと話し合って決めた。

「ああ、分かった。
言われた通りにする…」


そしてホルマジオは姿を見られないように再び縮んで、その場から立ち去った。











R.2.2.7
数ヶ月間お待たせして申し訳ありませんでした。
更新したのがバイオレットヒルじゃなくてすみませんでした。
色々辻褄があわないのはスルーしていただけるとありがたいです。
今回続きをあげられたのも、拍手とランキングクリックして下さったおかげです。
私生活がなかなか落ち着きませんが、遅くても少しずつ何か続けていきますので、見守ってくださると嬉しいです。いつもありがとうございます。

バイオレットヒルの続き書くのも頑張ります。


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