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プリンセス・オブ・フォーリン6-2
「こちらです…」
桃子はグシャグシャにされた髪の毛を手櫛で簡単に直しながら、プロシュートを風呂場へと案内する。
引き戸の扉をあけて、必要なものを示しながら説明した。

「ここがお風呂です。脱がれたお洋服はこの籠に入れて下さいね。中に石鹸とボディーソープにシャンプーがありますので、ご自由にお使いください。
あなたは外国の方なので、念のため説明いたしますが、浴槽に入る前にはお体を洗って下さいね。
浴槽の中で髪の毛洗うのもご遠慮なさって。


あの、それと、あなたの取れたボタンもおつけしたいので、シャツだけ後で出られた時にお渡ししていただけ……きゃあ!ハレンチ!そんな目の前ですぐ脱がないでェッ!」

ためらいもなくバサッと脱いだワイシャツを無造作に放り投げられ、咄嗟にキャッチして見えた上半身裸のプロシュートに彼女は一気にパニックになった。
そのチラッと見えただけでも、黒豹のようにしなやかな体付きで意外としっかり筋肉がついてると思ったのは、余裕があるんだから無いんだか。

「ギャーギャーうるせえ女だなッ、ガキの頃の海水浴なり水泳の授業で見慣れてねえのか!いちいち騒ぐんじゃねえッ!」

彼にとっては別に女の前で服を脱ぐのも慣れたもんだ。むしろ、任務中や道であった一夜の相手となった女たちはプロシュートの服を脱がしてくる。
『教えてよ、美しい人。
どうしたら私は貴方の瞳の牢獄に捕らえられるのかしら?』
甘えた顔になり、豊かな胸をはだけさせて香水の香りを彼の肌に擦りつけ、はちきれそうな瑞々しい太ももを彼の足に絡みつかせ、キスをしながら肌に痕をつけようとするのも日常茶飯事だ。
それがたかがシャツを脱いだ程度で騒ぐのはつくづく面倒な女だと彼はイラッとした。

うろたえて林檎より赤くなる顔が可愛いと思いながらも。



「だって…うう…っ、もう…いいですっ。
貴方いちいちハレンチなんだから…。

それと、お風呂がお済みになったら、間に合わせですみませんけど、これを寝巻き代わりにお召しになって」

上半身脱いだプロシュートの姿を見ないように極力目をそらし、強く目をつぶった桃子は手にしていた風呂敷をプロシュートにグッと差し出すとこう言った。
風呂敷の色は利休鼠。淡い緑に煙る春の雨のような緑がかった灰色だ。

「包みの中の物は浴衣といいます。
着物の寝巻き版みたいなものだと思って下さい。
着物より着方は簡単だから、今お渡しするこのメモをご覧になって。出られたら、私が細かいところ直しますから…」

桃子はクルリとプロシュートに背を向けていつも持ち歩く懐紙と筆ペンを出すと、簡単に図解したメモをさらさらと書いてプロシュートに渡したが、彼は微妙に嫌そうな顔をした。

「はあ…、他にねえのかよ?
民族衣装ってやつはその国のヤツしか似合わねえだろ。モネが自分の嫁にキモノ着せたラ・ジャポネーズも、オレの同僚が見せたKYOTOのガイドブックに見せた外人向けのキモノの写真見ても、オレはどうもイマイチしっくりこねえんだよなァ」

「いいえいいえ!そんな事ありませんっ!きっとあなたなら似合います!
だって、あなたの顔は綺麗ですから。
きっとあなたなら、歩くだけで原宿でも青山でも丸の内でも女性の方々が行列になってズラズラ餌に食いつくピラニアみたいに付いてきますよ!
モデルみたいですものっ。
手足長いし、目がキラキラして綺麗ですものっ。
ーーちっとも、まったく、全然私の好みじゃあないけど!!」

「…テメエ、口では謝ってるが、本当はオレを侮辱してえようだな…、随分調子にのった黒猫がッ。入れてやるか!!頭ぶち込んで風呂でバシャバシャ洗ってやろうかッ」

「ごめんなさいっ!!
好みじゃないとか言っちゃってすみません!!
だからっ、殺気しまってェエエ!!

ご、ごゆっくり…!」

つい自分の好きな和服に文句つけられたのでムキになったことと、フォローのつもりだった言葉は墓穴を掘ったようだ。カッと眼つきが変わったプロシュートの様子に顔を青ざめさせた桃子は慌てて頭を下げてその場から逃げた。


(日本の服似合わないって言っても…、プロシュートさんなら、きっとベタなヤクザのド派手なシャツに喜平ネックレスしてもお似合いになりそうだけど…って、ああ!そんな事思っちゃダメ!
心の中で思ったなら、その時すでに言動が飛び出しちゃうかもしれないっ)



『おい、兄ちゃん。やらかしたことにゃケジメつーもんつけて貰わねえとよ。落とし前つけてもらおうか…?
金もねえ、酒とシャブ漬けじゃあ内臓も使えやしねぇし、タコ部屋での強制労働も無理ってなら、

そんなどーーーしようもねえオメーらにゃ、オレの憂さ晴らしになるしかねぇよなああッ!!!?』

地面に生き埋めにされて首だけ出して号泣する男たちに向かって、金属バットでフルスイングしようと構えるプロシュートの姿が一瞬頭に浮かんで慌てて打ち消しながらも。

なぜだろう、この男と話すと普段じゃ言わない余計な一言がペロッと口から出るのは。
いつもの自分は相手が話すのに黙ってウンウンとうなずいているだけなのに、昼間タクシーで彼に怒鳴りつけた時も何故か感情が理性で止める前に口から飛び出した。
彼の物言いに腹が立つのだろうか?それとも?

「なんだか、あの人といると調子が狂っちゃう…。

もう…何なの、あの人…。
親切な人なのか暴力的なのか分からないっ。
でもハレンチ男なのは確かだわっ」

そうぼやいて戻った桃子はプロシュートにグシャグシャに掻き回された髪の毛を鏡をみて直して、後ろにまとめる。

「あら?なんだかいつもよりサラサラになっている気がする…」

組の皆と殴り合い中に相手の頭を鷲掴みからの地面に顔を叩きつけていた手だったのに反して、さっき髪を乾かした時には美容室のプロ顔負けの丁寧なブローで意外だった。
しかも、不思議と髪をすく手が頭皮マッサージをされてるようで、すごく気持ちが良くて眠気が薄っすら出てきたくらいに。

象牙のまろやかな白さを持った指先。
大理石の輝きの爪。
彼は指先まで綺麗だった。
さっきまで相手の顔面を殴り飛ばしていた人間の拳だとは信じられないものだ。

(童話で触ったものが何でも金に変わった王様がいたけど、プロシュートさんみたいな綺麗な方が触ると、何か不思議な綺麗になる物質でも出ているのかしら)

そんなアホな想像までしていた。

「ああ、雑念雑念…っ。
早くこのボタンを付けなくちゃ」

シャツの汚れだけを手洗いしながらハッと意識を戻した桃子は、プロシュートが出てくる前にこちらを済まそうとシャツと取れたボタンをこたつの天板に敷いた風呂敷の上に置いて、裁縫箱を用意した。

「綺麗なボタン…。
あんなに怒ってたくらいだから、きっと高価なものなのね」

手のひらにのせた淡い白銀色のボタン。
それは少し持つ角度をずらすと表面に揺らめく虹色が現れた。
これは祖父がたまに出かける時の一張羅のスーツについてる白蝶貝で出来ているのだろうか。
表面に書かれた字は英語ではない、おそらく彼の国の言葉イタリア語だろう。
これは何かお守りの意味があるだろう。
襟には小さな文字で縫取り。
プロシュートらしき名前が細かく刺繍され、名前のそれぞれ頭文字と最後の文字の隣には銀の刺繍糸で十字架が刺繍されている。

『お誕生日おめでとう!』

バイオレットヒルで聞こえた声と話からして、それは彼の家族、声の主がお兄ちゃんと言っていた事からおそらく妹がくれたものだろう。
彼の喜んでた感情が伝わったのもあって、それなら、あんな怒るのも納得できる。

(妹さんを可愛がっているのね。
さっき髪を乾かす時に話していた白猫はきっと、その妹さんのことだわ)

ボタン穴に2回ずつ糸を通し、生地とボタンの間の糸をグルグルと3、4回しっかり巻いて根元をしっかり留めて、取れないように手早く着ける。
神社に毎朝くるお婆さんから教えてもらった取れにくい付け方。

「うん、これで大丈夫」

しっかりした出来栄えに我ながら上手く出来たと自然とニッコリ笑みが浮かんだ時。














「桃子ちゃん…」

背後からいかにもゴゴゴゴ…と感じる怒りの気配に嫌な予感を察する。
この声は…。





「う…っ!?

梅子叔母さん…ッ」


「あなたアアッ!!なァんて失礼なことしてんのよォオおおおお!!?
振袖まで汚しちゃってェエエ!!」

振り返った桃子が目にしたもの、それは部屋の入り口で不動明王のごとく憤怒の表情をした桃子の叔母。
桃子の祖父桜仁郎の娘にして、桃子の父である李一の姉、旧姓草薙、現姓櫛名田(くしなだ)梅子の仁王立ちであった。






それは先ほど桃子がプロシュートを池に突き飛ばした直後のことだった。
土下座して必死にプロシュートに謝る桃子は、下げた頭の向こうで
「アンタたちィイイイッ!何やってんのォオーーー!!!!」
と耳慣れた怒鳴り声を耳にして、慌てて門の方へ顔を向けると、そこには真っ黒なベンツから叔母が降りてきた所だった。

「櫛名田の姉さんッ!?」

「梅子叔母さんッ?!!
ど、どうしてここにッ?」

「どうしたもこうしたも!あちらさんに話をつけに行ったから、帰りにちょっと寄ろうと思って来てみれば…ッ。

桃子ちゃん!
あなた、この方に乱暴して!!
お付き合いしてる方にそんな態度とって恥ずかしいと思わないのォオ!
って、あああ、振袖までこんな汚してェエエ!
それ私が奮発して買ったものなのにぃ!

…ああ!それよりも、

そんなに濡れて!!桃子ちゃんが大ッ変!失礼しました!
これからこの子にお風呂に案内させますから!
後で改めてお詫びしますから!
ほら、桃子ちゃん、とにかくこの方をお風呂にご案内して!!」

「姉さんッ、お嬢は悪くねェ!
それというのも、このメリケン野郎がお嬢にいかがわしい真似働こうとしやがったから、俺らがお守りしようとして…」

梅子の勢いに怯みながらも、長いこと仕えてる春雨は桃子を庇うために、桃子をポカポカ叩いたりプロシュートにぺこぺこ頭を下げる梅子を止めようと、梅子の肩を掴もうとした。
しかし。

「だまらっしゃい!!」

「うぉおお!!」

春雨が肩に掴んだ手を片手でパシッと掴んだ刹那、梅子の手によって春雨の身体は一回転して地面に背中から叩きつけられた。

(ほう…なかなかやるじゃねえか、この女)

プロシュートは桃子と大して変わらない小柄の梅子が見せた合気道の一片に、面白そうに目を細めた。


「…そもそも、アンタ達が人の話聞かなかったせいでしょ?私言いましたよ、ちゃんと桃子ちゃんとこの方のことを。心配しなくていいって。
それなのに、アンタ達といったら、毎回!毎回!人の話の三分の一も聞いてやしないで、勝手に突っ走っちゃってェ!何がお嬢を守るなのよ!
大の男がこんな中年のおばさん程度に投げ飛ばされる程度のくせして、そんな役目が立派に果たせると思ってるのォオ!
おこがましい!!」

そう言われて春雨は
「返す言葉が全くございやせん…」
そう言って、ガタイのいい体をガックリさせてショボくれて頭を下げてしまった。

「情けないわね…春雨以外、全員のびてるじゃない…」
梅子はぐるりと周囲を見渡して、その組員が白眼をむいたり、泡をはいてひっくり代える姿に呆れながらも、懐から出した手拭いを出して、プロシュートの所へ近寄り、失礼しますといってプロシュートの濡れたスーツを拭きながら、
「本当に、うちの姪っ子とこの馬鹿どもが失礼いたしました…。
あなたへの弁償は私どもがいたしますから。
この転がってるのは気になさらないで下さいね。
頑丈だけなのが取り柄だから、私がこれから馴染みの病院に連れて行きますので。


それと、ありがとうございますね。
こんなに手加減して下さって…。
分かるんですのよ、これでも私も少しばかり嗜んでおりますからね。

どうか許して下さいね。
馬鹿なんですけど、根は腐ってはいないのばかりですから…」
そう言った。

それから梅子は桃子にプロシュートを風呂に入れるようにと言いつけると、すぐさま春雨に出させた軽トラの荷台と自分が手配した車に怪我した組員を乗せて病院に連れて行った。

そうして、今こうしてプロシュートが風呂に入ってる間に帰って来たのだ。
桃子に説教する為に。

今桃子にプロシュートとはたまたま偶然知り合っただけで、なぜかご飯を食べに連れていかれて、送ってもらっただけだと説明をさせると、梅子は桃子の正面に同じように正座をして向かい合い、ガミガミと叱り始めた。
「振袖の事は仕方ないと思いましょう。
この汚れ具合なら、まだギリギリ私の知り合いの業者に頼めば、まあ何とかなりそうですからね。

私が怒ってるのはね!
あなたのあの方への態度もとい!男性拒否の姿勢なのよ!!
宮司さんからもお話うかがってるのよ!
あなた年の近い若い男性が近づくと逃げ出すって言うじゃない!
こんなんじゃ、これから結婚にしろ、お付き合いにしろ支障を来すでしょ!!
ああ、よかったわ!今日お見合い中止になって!
あなたが先方さんに何かやらかしてたかもしれませんからねッ。うちの主人の取引先なのに!

あのねぇ、あなた!?
いくらお祖父様が組を畳んで、春雨をはじめとした組の皆さん全員とこれまでの仕事は今は私の主人が、ぜーんぶ引き継ぐことになっていてッ、あなたも生前贈与されてるから、後継の心配はいらないのは分かってるわよ!
ただ、お祖父様は桃子ちゃんに誰か安心出来る人と結婚して幸せになって欲しいと思ってるのッ!もちろん私もよ!
それなのに、あなたったら!
あんな素敵な人にあんなことして!!
私あなたがあの人を池に突き落とす瞬間たまたま見ちゃったんだから!
あの人、何も非がないじゃないっ!
失礼よッ!わかってんの!?しかも会ったばかりの人ですよ!!
そんなんじゃ、いつか結婚して子供作ろうとして、あなたのいつものハレンチ!って叫ぶ調子じゃ夫婦生活も上手くいきっこないでしょう!!!

あなたがあの人を突き飛ばした現場と、あなたの話を聞いて、あの方があなたの恋人でないのは分かりました!
それでも、私は理解したわ!これはいい機会だって!!」

怒涛の勢いで息継ぎもせず、そのことを言うと梅子は桃子をギリッと睨みつけてから、自分の膝を右手でポンっと叩いた。
まるで良いことを思いついたかのように。

「え…?叔母さん、それってどういう事ですか?」

桃子が嫌な予感がして聞いてみると、梅子は胸をふんっと張って、桃子をピシリと指差した。

「桃子ちゃん!
あの方、いいえプロしゅ…ぷろ…ええっと、外国語の名前は難しいわねっ!いいわ、あの方が仕事ついでに休暇の為に日本に来たのなら、

あなたが東京案内してあげるのよ!
日本のイメージアップするのよ!あなたが落としまくったんですからねっ。
あの方の仕事の合間の息抜きになるの!
ちょうどあなたが昔からお祖父様から英語を教わってて話せるんだから、うってつけの役だわ!

本当はあの方とお付き合い出来るのが一番いいけど、仮に出来なくてもいいわ。
男性と接するに慣れなさい!!
いいわね!あなたのことが心配な叔母さんの命令よ!!
何だったら上手くいったら、あの方と子供でも作っちゃいなさい!」


「!?

こっ…子供って!
ハッハレンチィイイイ!!
ハレンチィーー!!!!
そっ、そんなぁ!!」

桃子が梅子の提案に頭の中がショート寸前になって両手でブンブン振り、頭も激しく拒否の姿勢を見せたので、梅子の怒りの油はますます注がれた。

「また、ハレンチですかっ!!
もうあなたったらァアもーーーーッ!!!」

そう言ってビシリと頭をドつこうと梅子が右手を振り上げたその時だ。





ーーポンッ。

後ろから梅子の行為を止めさせるように、肩を軽く叩く手が着いたのは。


「春雨ェ!!あなた、さっきので、まだ懲りてないのッ!?
桃子ちゃんを今叱ってるんですからね!」

「!?おばさんッ、違う!
その人は…!」

梅子は先ほどしたように自分の肩にのった手をパシリと取って、同じことをしようとした。





「え?」



その瞬間。
桃子の戸惑った顔が視界に入ったと同時に、梅子の体はあっという間にグルッと一回転して…








ポスッ!



地面に叩きつけられずに、見事に受け止められた。







「はあ、あまり追い詰めすぎる説教も良くねぇもんだぜ、Sinogla シニョーラ(御婦人)?
いや、Mrs.Aikido?」

「!?」

梅子の怒鳴り声があまりにうるさかったので、風呂から出てきたプロシュートによって。


「なっ…!なっ!」

ちょうど梅子も先ほど桃子がされたようにお姫様抱っこをされる形で。


「便利そうだから、見様見真似で真似してみたが、案外出来るもんだな。

相手の力をそのまま利用するか…、合理的だな。



ん?どうした?Sinogla。
ダメージはくらっちゃいねえ筈だが?」

ボンッ!!

顔が一気に火がつくとはこのことだ。
しかもあらゆる強面に囲まれて、それなりの年を重ねた梅子でさえ。
今の場合は火がつくとは怒りではなくて…。





「ハッハレンチィイイイ!!

プロシュートさん!

浴衣!!
あなた浴衣の胸元広げすぎですよ!!」

「あ?いつもと大して変わらねえが」

「ダメ!ダメですっ!
襟元しめて下さい!」

「あああ…色男に抱きしめられちゃった…。



桃子ちゃん、

私、もう死んじゃっていいかもォ…」

「おっ、叔母さぁあああん!!
しっかりしてェエーーー!!」





結局、間近で見たプロシュートの強烈な色気に完全にあてられ脳内容量オーバーになってしまった梅子の説教は、こうして終わった。

その後、まるで長湯しすぎたようにゆでダコ状態になり腰を抜かしかけた梅子は
「桃子ちゃん…

今日のところはおばさんこれでかえるわね…


ちゃあんと、わたひの…いいつけ、まもるんですよ…

これからたびたび、あなたのいえよりますからねぇ…ふぁああ…」
そうヨレヨレのぐねぐね状態になり、春雨に支えられながら、その場を後にした。








「…凄い。さすが色男…」

梅子を見送りながら、そうポツリと漏らす桃子。
梅子がいなくなって、とりあえずようやく一安心出来るかと思われた。
プロシュートの襟を目をそらしつつしっかりと直しながら。









「あの女、帰り際にオメーの手を何度も握ってうなずいてやがったな。
何かオメーに頼みごとをしてるみてえだったが…」


「!!?」



桃子がごまかそうとしても無駄だった。
もともと相手の顔色を上手に読み取り、情報をズルッとゲロっと吐き出させるのが得意なプロシュートの手にかかっちゃ。

いや、ただ桃子には拷問はしないで、





「…お詫びに何でもしますって、言ったよな?え?」



耳元で囁いただけだったのだが。











































H.31 2.2
梅子叔母さんありがとう。
おかげで話がスムーズに進みました…。


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あきゅろす。
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