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スペクトラム〜最終話につけたい場面(仮)〜※ネタバレ注意。
青い海。
風は吹き、広がる空には雲が伸びゆく。
そこは彼の故郷。
ようやく見れた、その場所の美しさにアマーロは感動しながら、隣に立つリゾットのぼろぼろになったコートの裾を握って眺めていた。

その場には二人以外誰もいない。
突然何かを思ったアマーロは顔を真っ赤にしながら、リゾットの、大好きな彼に顔を向けて、思いを口にした。




「リーダーさん、さっき何でもお礼をするって言ってくれたよね…。

それで、ずっと色々考えたんだけどね…、



あの…じゃあ、頬にキス、して。

それがいいな…。
私それがいいの」

「いいのか…?そんなもので」

「いいのっ、だって私、リーダーさんがいるだけで幸せいっぱいなんだから…、お礼なんて!


それに、貴方が、してくれるから、いいの!」

「…分かった」




身を屈めるリゾットをアマーロは見つめた。

銃弾で破れて、見る影もなくなった漆黒のコート。
それでもあえて纏う、それは風に強くたなびく。
淡い金色の髪。
佇む長身、孤高の狼のごとく誇り高く。
悲しみに常に染まっていた瞳は、今それだけではなかった。
緑に過ぐる金剛石(ダイアモンド)の一筋の光。


確かに、彼は、此処にいる。
生きている。






(リーダーさん…)


胸がいっぱいになったアマーロは彼のシャープな顔立ちに頬を染める。

何度見ても大好きな彼を間近で見るだけで、胸が切なく痛くなる。




…帰ってきてくれて、よかった。

心からそう思う。












(…貴方は私の大切な人、大好きなの。
愛してるの。

私の命に代えてもいい。
今もこれからも。


お願い。
どうか、ずっと一緒にいて)










その心からの祈り。
リゾットへ、彼女がずっと愛してきた彼への、混じりのない想い。
澄みきった、美しく透明な感情。







アマーロの頬にリゾットの手が触れ、昔綺麗だと言ってくれた彼女の瞳をじっと見つめてくる。
フローライトの強い視線。


金銀の髪が揺れ白い髪と触れ合う。


紅い目の見開き。
射抜く淡い緑の眼差し。

上を向かせられる。
あまりにも間近にある彼の顔。
閉じた瞳、長い睫毛。
唇に触れる…冷たく柔らかい、彼の唇。





低く響く綺麗な声。








「…感謝する、アマーロ。
チーム全員に代わって、俺自身からもだ。







それから………」










そこから紡がれた言葉。
真実をこめた、閉じ込めていた言葉を。


それが意味するもの、間もなく聞くそれに、アマーロは瞬く間に頭をいっぱいにしてしまった。



「…………………………え?」












…ただそうしたかったからだ、とリゾットはそう思った。

殺人という許されない罪を背負う『許されざる』自分に好意を持ってくれた。



初めて出会ってから、変わらずに大事だ貴方が大好きだと常に言ってくれていた彼女。

そんなアマーロの笑顔に、リゾットはどれだけ傷ついた心を救われたか。

生きていたいと、思うようになったか。
自分の代わりに涙を流す彼女に、どれだけ感謝してもしきれなかっただろうか。








真っ赤に顔を染めて離れようとするのをリゾットは困ったように笑う。



「何を恥ずかしがってるんだ?今更」

「うん……、だって、リーダーさんがカッコよすぎるのが悪いんだもん…」

「よく分からない理由だな…」
優しく頭を撫でてなだめる。







「えっ…、リーダーさ………ッ!?」



そのまま頭を片手で押さえつけ、もう片方で腰を抱き寄せ、深く口付ける。
固く握ってた拳をほどいて、怖いことは何もないんだと自分の指を絡ませる。


触れたそれは柔らかくて甘い。
そのまま抱き潰しそうな華奢な身体は、ずっと抱きしめていたくなる。

少しずつ涙が滲む彼女の赤い瞳は宝石のように、たえがたく美しい。

頬に柔らかく触れる純白の髪は、マグノリアに吹く風。

その愛らしい唇の隙間から漏れる声は、貝殻から零れる海のさざ波だった。







…彼女の全てが愛しい。
心から。






頭の奥がじんと痺れていく。







彼女が大切だった。
だからこそ離れようとしたのに、ずっと追いかけてきた。
泣きながら。自分の為に。





もう眼を逸らすのはやめよう。
彼女が隣にいない事が耐えられない。










「どうして……?」
ぽろりと零れる涙の滴。泣くな、と呟き、それをぬぐう。

「アマーロ」
これまで言葉にはしなかった想いを、再びリゾットは彼女に囁いた。









「…俺もずっと愛している、お前だけを」
もう一度触れるだけのキスを。





彼女の目から涙がとめどなく流れる。

「すまない、言えなかったんだ」

信じられなかった。
ずっと望んだものが手に入ったことに。

「馬鹿……!リーダーさんの馬鹿馬鹿っ。
もっと早く言って欲しかったよ!」


すすり泣き身体をふるわせながら、力一杯大好きな彼の背に手を回す。
こぼれる笑顔。
満たされていく心。















「……嬉しいっ。
私、もう死んでもいいかも」



「まだ死ぬな。俺が、…その、困るんだ…」








背中を優しく撫でる手。ぎゅっとコートを握り締める指。

これからも彼を独りにする気はなかった。

二度と彼女を手放す気はなかった。




リゾットが自分の手に隠していた指輪を、アマーロの手に滑り込ませるまで、
あと数秒。

アマーロが感激して泣きながらリゾットの首に飛び付くまで、更に数秒。





















(全ては貴方の為に)































………………………………………………
プチ後書き。

年末に何かを更新したかったので、以前ひっこめた『最終話につけたい話』を少し改造して再アップ。
タイトルの元ネタはゼッドの同名ソング。
(ゼッドはレディーガガが、自身のアルバムのプロデュースを任せるくらい期待してるアーティストらしいです)

激烈フライングで、先にこれだけアップします。
とりま、バッドエンドじゃないよと伝えたい話。

でもサイト初期に書いた話なので、多分実際そこまでいったら、結構中身が違うかもしれないのであしからず。
(バッドエンドにはしませんが)

というより、ここまでいけられたらいいんですが。


↓いつもありがとうございます。
V(^-^)V





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あきゅろす。
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