Long part.6 優しすぎる先輩 支度が終わり月島の家を出る前に月島のお母様にお礼を言う。 いきなりだったのに本当にありがとうございました!と頭を何度もペコペコしていると、良かったらまた来てねと眩しい笑顔で言われてしまった。 すいません、私は月島の彼女じゃないんです……。 少し罪悪感を抱きながらはい!と返事をした。 そして月島との二人での登校。 正直、何喋ったらいいのか全く分かりません! 月島は月島で今日に限っていつもしているヘッドフォンは首にかけたまま装着する様子もないし…… 何この沈黙、マジどうしよう。 「そういえばさ」 『はいっ!?』 「え、なに……」 『ごめん、ビックリしただけ……です』 「まぁいいけど、槇野、今日の授業の教科書とか大丈夫なの?」 一回家帰んなくて平気なの? といつものように淡々と告げられ、これは心配してくれたのか、ただ思った事を言っただけなのか。 まぁ、月島なら後者で大体その後馬鹿にするか鼻で笑うんですけどね! 私はそう聞いてきた月島にドヤ顔で、 『だいじょーぶ、私置き勉してるから!』 「あー、だから君の成績酷いんだー」 『いや、普通だし!そこまで酷くないし!』 「は?何どの口が言ってんの?理数が壊滅的だったのは誰だったかなぁー?」 『うぐっ…!何も言い返せない……!』 そりゃ成績優秀な月島くんに比べたら私なんて月とスッポン、天と地の差ですよ。 でも、今までで取ってきた点よりはいいほうだもん!そ、それに私文系だし……? 何て頭の中で思っていたら月島が嘲笑うかの様に見てきた。 『な、なんですか』 「いやぁ?どうせ僕と君は天と地の差とか思ったり自分は文系だから仕方ないとか思ってんのかなぁって思ったダケ」 『心読むなコノヤロウ!』 「いや、槇野が分かりやすいだけデショ?」 ギャーギャーと言い合いをしていたらいつの間にか学校に着いていた、私と月島はクラスが違うので1年の階に着いた所で別れる。 あぁ、もう月島とバイバイか。 クラスが一緒だったら授業中見れたし話せたのになぁ、なんて柄にも無く思ってしまう。 「じゃ、僕こっちだから」 『あ、うん……バイバイ』 「はぁ、何その顔」 『えっ!?そんな変な顔してる!?』 「変な顔はいつもデショ、何、まさか寂しいの?」 『いつもって失礼……!って、え……』 うそ、当てられた。表情には出してないつもりだったのに。 もしかして私って表情に出やすくて分かりやすいのか?だからもしかしたら隠し事も下手なのかもしれない。 でもそんな事より月島がその事に気付いてくれたのが凄く嬉しかった、心が暖かくなるというか満たされるというか。 こういうのを感じると、あー今私恋愛してるんだなぁと再認識させられる。 でも月島を困らせちゃいけない。本当でも嘘にして、嘘の言葉を伝えなきゃ。 じゃなきゃ月島が困ってしまう。 『や、だなぁ!寂しいなんて思ってないよー、というか何に対して寂しいって思うのさー!』 「……………ヘタクソ」 『え、何が?下手くそって私なんもしてなくない!?』 「……休み時間、そっち行くから」 分かったら大人しく教室に居なよね、それじゃ。 そう言うと月島はくるりと私に背を向けて自分の教室に歩いて行った。 それを聞いた私は顔が自分でも分かるほど真っ赤になっていると思う。 休み時間に月島がうちのクラスに来る!?なんで?どうして?いつもは自席から極力動かないのに? 私は頭の中をしめている疑問で思考回路がショートした。私はぼんやりと頭の片隅で嬉しい反面複雑な想いを抱いた。 月島は人気がある、背が高く顔も整ってて頭良くてそれなりに運動もできる。それに月島は大抵の人間には表面的ではあるが優しい。 バレー部の皆には素を出しているけど、ほとんどの人にはそんな態度取らない。 それが優しいととらえられておもっくそ人気がでる。月島本人は嫌がっているみたいだけど。 まぁそんな月島くんがクラスに来たとなるとうちのクラスの女子は絶対キャーキャー言うわけで、私はそんな様子を見たくないから、大抵月島がこちらのクラスに来ても見えない所にすぐに逃げてたのに。今回大人しく居ろとか、本当に何の試練ですか神様これは。 私は悶々としながら教室のドアを開けた。 入ると何故かスガ先輩が居てコチラを見ると笑顔で手を振ってくれました。 笑顔が眩しすぎて見れません、先輩は天使ですか。 「おはよ、珠香」 『おはようございますスガ先輩、何で1年の教室に?』 「珠香に用があったからなー」 『えっ、連絡してくれたら私そっちに行きますよ!』 「別に大丈夫だべ、どうせいつもの所に行くんだから」 『あ、分かりました!』 私は先輩が言った事を察し、荷物を置いて先輩と一緒に廊下に出た。 その時隣のクラスで山口君が出てきて、教室に向かってツッキー早く!と言っていたそれを聞いた私は何故か焦って、行きましょうかと先輩を足早に促した。 たどり着いた先は体育館裏、ここで私達はいつも密会みたいな事をしているのだ。 そして先輩に聞かれた事は二つ、一つは今日の買い出しをいつ行くか。そしてもう一つは、月島のこと。 『買い出しはHRが終わったらすぐに行きましょう、量が多いので色々時間がかかると思うので』 「そうだなー、そうするべ」 『えっと、それで月島のことですけど……』 「うん、大丈夫そうか?」 『はい、何とか持ち直しましてある意味開き直りました』 恥ずかしくて笑うと先輩はふわりと優しく笑って頭を撫でてくれた。そして、よかったなと言ってくれた。 心配していてくれた先輩の優しさに改めて触れて目の奥が熱くなる。 やばい、これから授業あるのに。もう少しでHRが始まってしまうのに。 「泣きたいなら泣いていいぞー?」 『っでも、後少しでHRが……』 「こういう時はそういうの気にしなくて良いんだよ」 『でも私だけならともかく、先輩までっ……』 「半分俺が泣かせちゃったようなもんだし、俺のことは気にしなくていいぞ?」 『っ…せんぱっ……優しすぎですよ…ぉ……っ!』 私がそう言うと先輩は背中を優しくポンポンと一定のリズムで叩いて、まるで赤ちゃんと母親の様だった。 そのまま先輩は私が泣き止むまでずっと傍に居てくれた。 気が付けばもう一限目が始まっていて、私はすみませんすみませんと先輩に平謝りする他無かった。 それでも先輩は笑顔でいいよいいよ、と言い!色々落ち着くまで保健室にいたらいいべ、目も真っ赤だしな。と少し笑われながら言われ、私は先輩の言葉に大人しく従うことにした。 先輩に先生に遅れた理由聞かれたら、私のせいにして下さいと言うと。 じゃ、そーするべー、大事で可愛い可愛い後輩が具合悪くなって保健室に連れていきましたってな!とこれまた笑顔で告げられた。 私はそれを聞いた瞬間顔が物凄く熱くなった。 これはまた別の意味で落ち着かなくてはならなくなった。 じゃ、そろそろ行くべと言い先輩が立ち上がった。 そして私は先輩に連れられて保健室に来た。 「じゃ、俺はここまでだな。何かあったらいつでも連絡するんだぞー?」 『あ、はい!本当にありがとうございました!』 「ん、それじゃあな」 『はいっ』 私は先輩を見送り保健室に入った。 あらかじめ先生には言って来たので大丈夫だ。 私はベットに座り一息つき、そしてやってしまったと項垂れた。 泣いてしまった、しかも先輩を遅刻までさせてしまった。 号泣したおかげで目は痛いし鼻は詰まるし、っあーもー! それに先輩のあの言葉。 大事で可愛い可愛い後輩がーーー……って、何思い出してんの私!また顔が熱くなるじゃん! もうさっさと寝てしまおうと思い、布団に潜り込んだ。 案外横になれば寝れるもので、すぐに私の意識は落ちてしまった。 暫くしてどれくらいたったかは分からないが遠くで鐘のなる音が聞こえる。その音につられて意識が段々浮上してきた。 今は何時だろうと思い、とりあえずベットから出るため起き上がって、ふと視線を横にずらした。 すると視界に入ったのは色素の薄い黄色、それはよく見ると人で、尚且つとても見覚えのある人物だった。 その人物を見て私は出かかった声を失った。 ーーーー何故か月島がベットの横に居て、椅子に座って寝ていたのだ。 何故、彼がここに居るのだろう?授業は? まず何で私がここにいるって知ってるの?それに寝てるってことはどれくらい私は寝てたの? 私はグルグルと疑問が頭の中に渦巻く中、やっと声を発する事が出来た。 『つき、しま……?』 140813 再編集、190215 [*前へ][次へ#] [戻る] |