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シアンの恋心


堅物で常識の塊で眼鏡な三年一組十二番の手塚国光に恋人ができたらしい。恋人は緑の黒髪、大きな瞳、大きな可能性をもった奴らしい。そしてなにより手塚の恋人は男らしい。そう、ここまでくれば言う必要もない。手塚の恋人は一年にしてあの群青が映えるトリコロールのジャージを着る一年二組三番の越前リョーマらしい。

何故、君は彼を選んだのか。常識の塊の君が常識に背いてまで手に入れたかったのか。何故、彼なのか。

何故、僕では、いけないのか。

答えは簡単だった。僕より彼の方がテニスプレーヤーとしての可能性と魅力をもっている。そういう事だろう。君は大きな可能性のあるものしか愛さない。だから僕は愛されなかったんだ。

ただ、それだけの話。

ただそれだけの話のはずなのに。
何故こんなにも息苦しさを感じるんだ?何故こんなにも胸のあたりがジクジクと痛むのだろうか?
ただ、愛するひとには自分ではない愛するひとがいる、それだけなのに。



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「不二。」

自習中、なにげなく窓の外の空を見つめていると英二が僕の肩をたたいてそう名前を呼んだ。

「なんだい、英二。」

窓のそとから目を離してくるりと英二の方を向く。

「不二、…あのさ。」

「用があるなら早くいいなよ。そんな勿体ぶるなって。」

英二は話したいことがあればすぐに話しはじめる方なのに、今日はやけに勿体ぶる。そんな英二がおかしくて少し笑いが漏れた。

「…えっと。」

英二はまだ話し始めない。何故だろうか…。それに話したいことかあって話さないんじゃなくて話題を探しているようにみえる。
焦ったようにチラチラと窓の外をうかがう英二につられて何かあるのかと僕も窓の外を見た。

窓の外、空ではなくグラウンドの方を見れば、体育をしているクラスがグラウンドに出でいた。その中で一際目立つ彼をみて英二の行動が納得できた。長身に艶のある黒髪、そして均整のとれた体つき。
あれは手塚だ。
……ほら、また心臓が痛くなる。

「…英二、余計な気つかわないでよ。」

走っている手塚を見つめたまま僕は英二にそう言ってた。
英二はこれを見せないために僕に用もなく話し掛けたんだろう。
全く、誤魔化すのならもっと上手くやってほしい。
誰にも聞こえないように小さく小さく溜め息をつく。
英二の気づかいが妙にイライラする。僕はそんなに弱く見えるのだろうか。同性に恋した時点ですでに失恋だなんて分かっていたんだから。見くびらないでよ、僕は弱くない。泣いたりしない。ただ少し……少しだけ…越前が羨ましいだけだ。

「ごめん、今、手塚を見るのは辛いと思ったから。」

英二の方に向き直れば、英二は眉間にしわを寄せてそう呟くように言った。

「手塚を見るのは辛くないよ、手塚が与えてくれるならこの胸の痛みだって愛しい。」

僕らだけの秘密、というように僕はワザとらしく英二の耳元で小さくそう囁いた。

「はははっ、コレはまたくさいセリフをどうも。」

「どういたしまして。もっと言ってあげようか?」

「遠慮しとく。そんな甘い言葉何回も聞いたら、絶対吐くから。」

「うわー、酷いなぁ英二ったら。」

ふふふっと笑えば英二の温かい手が僕の頭をさらりと撫でた。温かくて柔らかい人肌の感触が切なくて、不本意にも少しだけ視界が滲んだ。嗚呼、僕は意外に弱い人間なのかもしれない。
僕はクスっ、と自分を自嘲した。


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リョ塚←不二+菊丸で。
意味が分からない終わりですけど、不二くんはなんだかんだ菊に支えられてるのかな、ということで書いてみました。
私の中の菊丸は男前です(性格が)。
凄く余談ですが、越前は手塚ならリョ塚で、不二なら不二リョだとおもいます。てゆうかリバだとおもいます。


あきゅろす。
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