君の愛は買えないのでしょうか? 君の背中が遠く感じ始めたのはいつからだったのか。出会ったときからか。試合を見たときからか。それとも、あのルーキーが来たときからなのか。 いつもの見慣れたコートに響くストロークの音。その一段と響きのよいストロークは青学の日常になっていた。僕はその小さな無限大の可能性を見つめながら口元を静かに歪ませる。 「不二、また越前みてんのか?」 「見てないよ、睨んでるだけ。」 タオルで汗をふきながら英二が僕に話し掛けてきた。英二の少し呆れた顔に渾身の笑みを送りながら僕は低くこたえる。 「うわ。機嫌わるいな。」 「当たり前だろ?」 「…ま、俺は口出ししないけどさ、ばれたらヤバいんじゃーの?」 英二は頭の後ろで腕を組んで明後日の方向をみつめている。赤みがかった英二の髪と青い空はとても綺麗な補色の組み合わせ。英二は青空がよく似合う。 「その言葉は口出ししてると思うよ英二。で、誰に?」 「手塚にだよ。」 「なんで?」 「……何つーかばれたら多分手塚と仲悪くなるだろ?」 「はははっ、あたり前だろ。可能性を傷付ける物は許さないってきっと言うよ。」 本当は答えなんてわかってるくせに英二に問い掛けた。誰にばれたらまずいかなんて自分が一番よく分かっている。英二は苦虫を噛んだような顔をしながら、でも少し笑って答えてくれた。 「大丈夫、越前を傷付けたりはしないよ。」 これは英二ではなく手塚に向けた言葉。 「うん。」 英二はその言葉にただうなずいた。 「ねぇ。英二、100円あげるから一生愛してよ?」 「やだ。俺の愛はジュース一本じゃかえねーよ。」 「ひどいなぁ。」 二人で嘲笑したように笑うと後ろからグラウンド20周の声が聞こえた。 彼は道に落ちていたコインをひろわなかった。 ─────────── (君の背中を見つめる適任はもう違うんだね。) 手塚の興味が越前に行ってしまってむなしい不二さん。を表現したかったのですが失敗しました…。てか赤の補色って緑だと気付いてしまった。 青の補色がオレンジだって気付いてしまったorz |