夢中にさせるのは 「ねぇ、悠の大好物って何?」 「大好物?」 隣を歩く悠に問いかければ、悠は少し眉を寄せて、真面目な顔をして考え込んだ。 「何で急にそんなこと聞くワケ?」 「んー…。悠って、好きなものいっぱいあるじゃない?からあげとか、カレーとか、ハンバーグとか。一番って聞いたことないなぁって思って」 「ふーん…」 悠は、腕を組んで考え込んでいる。 そんなに難しい質問だったかな? こんな顔、勉強してるときでさえ見たことない。 悠から視線を外して空を見上げれば、少し暗くなってきた空で。 視界の端の方に、沈んでいくオレンジ色の夕日の光が漏れていた。 こうやって、2人きりで下校するなんて、幸せだなぁと思う。 …テスト週間ということを除けば。 「あ、あった、あった!」 物思いにふけっていれば、悠が隣で声をあげる。 「俺の大好物、名前だ!」 「…え?」 「だーかーらー、お前だって」 ニカッと笑う悠。 恥ずかしくて体温が上昇していくのを感じて、慌てて言った。 「そういうんじゃなくて!おかずで!」 「だって俺、名前がおかずだったら、ゲンミツにどんぶりで50杯は軽くご飯おかわりできるって思って」 キラキラした顔で言う悠。 頬が高潮していくのを感じた。 「もう。じゃあやってみて」 「え!?さすがにそれはムリ」 「何それ」 「その分お前が好きってコト!わかって!」 「何…それ…」 何故だか涙が出てきた。 「どうかした?」 そう言って悠が顔を覗き込むもんだから。 「嬉し泣き!」 そう言ってぷいっと顔を反らして、赤くなっているであろう顔を見せまいとした。 「悠のせいで随分と涙もろくなったよ」 「どーゆー意味?」 「だって、たくさん嬉しいこと言ってくれるから。嬉しすぎて涙が出るんだよ」 「俺はゲンミツに笑わせたいのにー」 ぶーぶーと口を尖らせる悠を見て、少し笑った。 そしたら悠も笑った。 「幸せだなぁ」 「シアワセ?」 「うん。こんなに人に想われてて、私は幸せ者デス」 心の底からそう思った。 悠はニカッと笑って親指を突き出す。 お調子者で、結構楽天家で。 それでも野球センス抜群で、ときどき格好良くて。 あたしを泣かせたり、笑わせたりして。 そんな悠が好きだなぁと思う。 毎日毎日、悠にのめり込んでいく。 どんどん好きになっていく自分が怖くなるくらい。 それでも。 「ねぇ悠」 「ん?」 「もっと好きになっちゃった」 「ホント!?」 end.(2010,11,3) BGM:RADWIMPS「いいんですか?」 ・・・・・・・・・・ RADWIMPSの曲の世界観を表すのにとても苦労しました。 結果、全然表せず、上辺だけ似せた感じですね(笑)← 田島はさらりと格好良いことを言ってくれると思います。 飾らない言葉や態度にヒロインが泣く、と(笑) 改めまして、雄飛様、移転おめでとう御座います! こんな夢ですが、喜んで頂ければ幸いです。 [*前へ] [戻る] |