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そしてまた、恋に落ちる

あたしには、好きな人がいる。
名前は田島悠一郎。
クラスメイトで、野球部4番打者。
言うまでもなく格好良い。
頭は…あまりよくない方かもしれない。
でもとにかく、野球してるときの姿はキラキラしてて、眩しくて、あたしには見ることができない。
最近、この田島くんについて、困っていることがある。


「よー、名前。今日の弁当のおかず何?」
「卵焼きとか、ウィンナーとか…」
「じゃ、卵焼きいただきっ」


パクッ。
田島くんが、あたしの弁当箱から卵焼きをひょいっと取って、食べた。


「ちょ、ちょっと、田島くん!?」


何するの、と立ち上がると、あたしと一緒に食べていた数人の友達が一気にはやし立てる。


「今日も熱いわねー、お2人さん」
「お願いだから、私たちの前でイチャつかないでよね」
「昨日も一昨日もそーだったじゃない」
「ち、違…っ!!これは勝手に田島くんが」
「えー?だって美味そうだったんだもん」


詫びれも無く田島くんが言う。


「べ、別にあたしのじゃなくてもいいでしょ?他の子のだって、美味しそうじゃん」
「名前のが食べたかったんだって」
「な、」


顔が火照っていくのがわかる。
田島くんはそれだけ言って、じゃ、ご馳走様!なんて言って、去っていった。



そう、問題はこれだ。
田島くんがあたしによく絡んでくるのだ。
あたしの心臓は、たまったもんじゃない。
どうしてあたしによく絡んでくるのか。
からかっているのだろうか。
田島くんの気持ちはわからないけど、あたしは田島くんに気持ちを隠すのがやっとだ。
あたしには特に取り柄も無いから、自信も無い。
陰でこっそり見てる方が、性に合っているっていうのに…。



「あーもう、なんだかなぁ…。嬉しいんだけど、困るっていうか…」
「何が?」


だれもいないはずの教室から声がして、びっくりしていると、扉の近くにはあの田島くん。


「え、何で?もう放課後なのに…部活は?」
「俺は忘れ物」


ニッと笑って言う田島くんは、確かにユニフォーム姿。
あぁ、やっぱ格好良いな。


「名前は?」
「あたしは、日直だから。日誌書くために、居残り」
「ふーん」


そしてそのまま、日誌を書くために顔を下に向ける。
田島くんと2人きりなんて、耐え切れない。
そのまま帰ってくれると思ったのに、田島くんが近付く音がして、あたしの前に座った。


「なぁ」
「…何?」
「あ…うーんと…何でもない」
「え、何それ?」


思わず顔を上げると、頬を赤く染めて目線をうろうろさせている田島くんがいた。
こんな田島くん…初めて見た。


「あー、あのさ、俺、お前のこと好きだからっ!!」
「…え?」


多分そのときのあたしの目は、大きく開いていただろうと思う。
ばくばくばく、あたしの心臓が響く。
田島くんはあたしを真剣な眼差しで見つめていて。
あぁ、やっぱり格好良いな、なんて悠長に思った自分が居た。


「…で?」
「え?」
「名前は?」


そんなの、決まってるよ。
ずっと前から。


「あたしも…あたしも、好き…田島くんが」


パァァアアと、笑顔になっていく田島くん。
またあたしの心臓が高鳴る。
バッターボックスに入ったときの凛々しい顔。
お弁当のおかずを取るときの楽しそうな顔。
告白するときの照れた顔。
色んな顔を見せる田島くんが、また、好きになった。



end.(2010,7,20)



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