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近距離片想い

“幼馴染”。
いつも、この言葉に悩まされる。


ねぇ悠一郎、あたしのこと、どう思ってる?
ただの幼馴染?
時々、聞きたくなる。


「名前?どーした?」
「…悠一郎。さっきから何にも進んでないよ」
「だってわかんねーもん!!」
「さっき教えたでしょ。2次関数の問題は、先にグラフを描くの」


野球に関しては天才なのにねーと、溜息を吐きながら言う。



そう、西浦の三塁手であり4番打者の田島悠一郎は、あたしの幼馴染。
そして、あたしにとっては初恋の相手。
でも向こうは、あたしのことをなんとも思ってない。
見てればわかる。
悠一郎にとって、野球が1番なんだってこと。
ずっと一緒に居たあたしが言うんだから、間違いない。


「野球は楽しいけど、勉強は楽しくねー」
「気持ちはわかるけど、そんなんじゃテストで欠点取っちゃうよ?」
「それは嫌だ!!」
「ハイ、それがわかったら問題を解く」
「ハーイ…」


テストで欠点を取ったら、試合に出られない。
それは嫌だから、勉強教えて!!
そう悠一郎に頼まれ、只今、放課後の教室でマンツーマンで悠一郎に勉強を教えている。



あたしに頼んだのは、幼馴染だからでしょ?
そうでしょ、悠一郎?
それでも、一緒に居られることを嬉しく思ってしまうあたしは、引き受けてしまう。
たとえ、幼馴染って言葉に引きずられながら、少し落ち込んでも、それでも。



「…解けた!!」
「あ、ホントだ。凄いじゃん」
「名前の教え方が上手いからだな」


ニッと笑って、悠一郎が言う。


「そんなことないよ。悠一郎も、やれば出来るってことだよ」
「お前が教えてくれないと意味無いって!!またよろしくな」


そう言われて、嫌な気持ちにはならない。
けど、この距離がずっと続くってこと?


「ねぇ悠一郎、」
「ん?」
「…何でもない」


言えない。
あたしのこと、重荷に思ってほしくない。
下手なこと言って、逆に距離が遠くなるよりは、このままで。


他の子よりは、ずっとずっと、近いのに。
それなのに、1番届かない。



end.
(2010,1,27)




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