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日常、非日常

「おはよー、名前」
「あ、おはよ、栄口」


朝、登校して、隣の席の栄口と挨拶する。
これはいつもの光景。


「にしても、相変わらず時間ギリギリだね」
「うん、でも遅刻したことはない」
「威張るなよ」


苦笑気味に言われる。
あたしは自慢じゃないけど、遅刻ギリギリに学校に着く。
走って校門を潜るのも、いつもの光景。
対して栄口は、朝早く学校行って、野球部の朝練してるんだろうなぁ。
うん、凄いよね。


「栄口ってさ、凄いよね」
「何が?」


キョトンとした顔をする栄口。
そりゃそーだ。


「ううん、何でもない」


あたしは適当に笑って誤魔化して、前を向いた。



次の日は珍しく早く起きた。
そして珍しく早く学校に着いた。


「おはよー」


教室に居る皆に声をかけながら席に着くと、何かが足りない気がした。
隣を見れば、栄口が居ない。


「あ、そっか、朝練」
「え?」


あたしの呟きに、前に居た子が振り返る。
ううん、何でもない、なんて言いながら笑って誤魔化す。
栄口の笑顔を毎朝見てたから、なんだか落ち着かない。
なんだか、変な感じ。
何かが欠けたみたい。


1人でそわそわしてたら、朝のHRの予鈴鳴って、栄口が教室に入ってきた。


「あ、おはよ、名前」
「おはよー、栄口」
「今日は早いんだね」
「うん、まぁね」


あ、やっぱ栄口の笑った顔がないと、朝が始まった感じがしない。


「よーし、今日も頑張るぞー!!」
「え、突然どうしたの?」
「ううん、ま、ちょっとね」


あはは、と笑う。
朝のエネルギーは栄口の笑顔です、なんて言えない。
もう、これからは早く行くの止めよう、なんて思った。
だって、早く行っても隣に栄口は居ないもんね。
朝1番に、貴方に会いたいなんて、思った自分が居た。



end.(2010,7,20)



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あきゅろす。
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