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love is blind.

もう俺に、平凡な日は来ないのかも。
そう悟った瞬間だった。


「ねぇツッ君、ツッ君!」
「何?」


前を歩いていたクラスメイトの名前が振り返り、俺に言う。
そのときの名前の顔は輝いてて―――
―――俺には京子ちゃんがいるのに、不覚にもドキリとしてしまったのは事実。
兎にも角にも、名前が指差した方を見る。
そこには…


「ヒバリさん!」


…トンファーをしまうヒバリさんがいて。
明らかに、ヒバリさんに殺られた先輩たちがヒバリさんの足元に転がっていた。


「ワオ。君たち、何の群れ?」
「ち、違うんです、これは…!」
「十代目に何か文句あんのかコラ」
「まぁ落ち着けって、獄寺」


またトンファーを構えて、やって来るヒバリさんにあたふたする俺。
俺の右隣にいて食ってかかる獄寺くん。
それを宥める山本。
いつもの構図になったそのとき。


「お疲れ様です、先輩。あの方々は何をやっていたんですか?」


ちょ…名前、そんな悠長に話しかけてる場合じゃないって!
咬み殺されるって!!
そう思って、俺は更にあたふたした。
ヒバリさんは名前を一瞥すると、トンファーをしまい、溜め息を吐いた。


「…また君か。僕の周りをちょろちょろするの、止めてくれる?」
「先輩、私の質問に答えてないです」


…え?


「制服が乱れているのを注意して、聞かなかったんだよ」
「あ、なるほど」


…イヤイヤイヤ、何普通に会話してんの!?
ポカンとして2人を見る俺。
獄寺くんも山本も、あれからずっと何も喋ってないってことは、2人も同じ様にポカンとしているに違いない。


「じゃあ、僕は戻るよ。残っている書類がまだあるからね」
「大変ですね。何かお手伝いしましょうか?」
「君たちはまだ授業があるだろ。昼休み、もう終わるから、さっさと教室に戻りなよ。咬み殺されたいの?」


トンファーを構え、今度は俺たちを見た。
またあたふたする俺。


「イ、イヤ、も、戻ります!!」
「じゃあ、放課後にお邪魔します、先輩」


ちょ…名前、放課後に行ったりしたら危ないって!!
そんなこと言ってる場合じゃないだろ!!
俺は慌てて名前を止めようとしたけど、その前に、ヒバリさんは何も言わずに去っていった。


心配そうな俺とは対照的に、名前は嬉しそうに笑っていた。


「ちょ、名前、放課後なんて…危ないよ!」
「やっぱ格好良いよね、先輩」
「…は?」
「あれだけ並中に尽くしてるんだもん。凄いよね?」


キラキラした目で俺を見る名前。
ああ、これは恋してる目だって、やっと気付いた。


「イヤ…あれは暴力振るってるだけなんじゃねェのか?」


困ったように獄寺くんが突っ込む。
うん、そのとおりだと思う。


「違うよ。ただ暴力を振るってるんじゃないんだよ。並中のためにやってることなんだから」
「…まぁそうなのかもしれないけど」


明らかに、容赦なくボッコボコなんだけどな…。
転がっている先輩たちを見ながら、首を捻ってしまう。
恋する女の子の目から見れば、ヒバリさんの行動は格好良く、正義正しく見えるらしい。
うーん…なんだか複雑だな…。



end.(2010,9,3)



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あきゅろす。
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