[携帯モード] [URL送信]
ずっと


「こんにちはっ」
「…また来たの、君」


呆れたように言う雲雀さん。
でも、これはいつものこと。


「だって、ヒバードに会いたかったんですもん」
「ふうん」


雲雀さんは興味ない、というように机に座り、書類に向かった。
ヒバードを探せば、窓枠の所に座っている。


「おいで、ヒバード」


手を広げれば、ヒバードは私の手の中に納まった。
ヒバードの頭を撫でながら、書類に向かっている雲雀さんを見た。
ペンを走らせ、書類に目を通している雲雀さんは、格好いい。


―――いつから好きだっただろう。
気が付けば、雲雀さんを目で追いかけている日々だった。
勇気がないから、見てるだけ。


「あれ?」


ある日、校庭の隅で黄色い鳥が怪我をしているのを見つけた。


「この子…雲雀さんの…」


確か、ヒバードだっけ?
ツナとか獄寺くんとかが、そんな風に呼んでた気がする。


「とにかく、手当てしなきゃ、だよね」


保健室で応急処置をし、応接室へ走った。


「雲雀さん、雲雀さん!」
「…騒々しいよ」
「あ、ごめんなさい…」
「用件は何?」
「ヒバード、届けに来たんですけど…」


おずおずとヒバードを差し出せば、雲雀さんは驚いたらしく、少し目を見張った。


「…あの」
「ありがとう」


少し笑ったように見えたその顔に、胸が高まって。
勢いで、気が付けば言っていた。


「また来ていいですか、ヒバード見に」


心臓の音が五月蝿い。
もしかしたら、今、顔が赤いかもしれない。
それでも、雲雀さんをじっと見つめた。
少しの沈黙が流れて、雲雀さんは言った。


「いつでも、来たいときに来れば?」


その言葉に甘えて、度々、この応接室に足を運ぶ。
雲雀さんの仕事の邪魔をしないように、静かにヒバードと遊ぶのが日課。
ヒバードに会いに、なんて言ってるけど、本当は…。


「ねぇ」
「はい!?」
「言いたいことがあるなら、言いなよ。いつも見てばかりじゃ、君が何を思っているのかなんて、わからないよ」


私がいつも見てるの、知ってたんだ…。
そう思うのと同時に、告白するチャンスかもしれない、なんて思う自分がいた。
ずっとこの気持ちを引きずっていくだけじゃ、何も始まらない。


「雲雀さ…」
「ヒバリ!ヒバリ!」


絶妙のタイミングで、ヒバードが鳴いた。
私の手の中から飛び立ち、雲雀さんの頭の上に乗る。


「…」
「…」


気まずい沈黙が流れる。


「あ、あの。私、そろそろ失礼します!」
「そう」


何事もなかったかのように、書類仕事に戻っていく雲雀さんを尻目に、私は応接室から出た。
廊下を歩いていれば、何故か頬を涙がつたう。


「無理だよ…」


もし、断られたら、気まずくなって、本当にもう、雲雀さんに会えなくなる。
そんなことになるよりは。



end.(2010,8,16)



[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!