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my feeling

「雲雀さんなんか、嫌いです」


きっぱり私は言い放った。
今まで、恐れ多くて、こんなこと言えなかったけど、もう、我慢の限界。
私だって、意志くらいある。


―――事の発端は、何気なく言った雲雀さんの一言。


「ゴールデンウィークも仕事あるから」
「…え?」
「当たり前でしょ。風紀に休みなんてないよ」


雲雀さんは、涼しい顔でそう言って、私が運んできたお茶を一口飲んだ。

まぁ確かに、明確なゴールデンウィークの予定なんてないけど。
でも、中学入って初めてのゴールデンウィークくらい、遊んだりしたいのに。


「あの、休みたいんですけど…」


出来るだけ、控えめに言ったつもりだった。


「何か予定でもあるの?」
「いえ、特には」
「じゃ、仕事」


いや、ここだけは譲れない。
今まで散々、雲雀さんの我侭とか、理不尽な言動とか、色々付き合ってきたんだ。
この並中に入学して早々、有無を言わさず風紀委員会に入らされたり。
毎日放課後、応接室へ行って仕事したり。
お茶淹れたり、書類整理したり、時にはヒバードの世話したり。
草壁さんには、


「名前も慣れてきたな。最初はドジばっかりだったのに」


なんて、褒めてもらったりしたっけ…って、回想に浸ってる場合じゃない!!


「今までちゃんと仕事してきたんですし、私の意見くらい聞いて下さいよ」


散々我侭に付き合ったんですよ、って言葉は飲み込んだ。


「もっと働いてもらうから。拒否権はないよ」
「そんな…」


酷いじゃないか。
私は、何か悪いことをしたのか?
そう思ったら、気が付かない内に言っていた。


「雲雀さんなんか、嫌いです」


そして初めて、雲雀さんは今まで書類をさばいていた手を止めた。


「我侭だし、理不尽だし、私の言うことなんてちっとも聞いてくれないし。何考えてるのかさっぱりわからない」
「…」


言いながら、なんとなく悲しくなってきた。
私、何でこんなこと言ってるんだろう?
違う、そこまで言いたかったわけじゃないんだ。
恐る恐る顔を上げたら、雲雀さんはまっすぐこっちを見ていた。


「僕は好きだけど」
「…え?」
「僕を恐れることもなく、言うだけ言うくせに、我慢ばかりして溜めるだけ溜めたり、ちょっとドジったり、何考えてるか顔にすぐ出て、見てて飽きない。そんな名前が好きだよ」


それだけ言って、書類に何か書き込んでいく。


考えてみれば、雲雀さんは、確かに我侭だったりするけど、優しいところもある。
放課後の仕事で遅くなったら、バイクでちゃんと送ってくれる。
わからないことがあったら、ちゃんと教えてくれる。
困ったことがあったら、黙って手を貸してくれる。


「雲雀さ…」
「ゴールデンウィーク、休みたかったら休んでいいよ」


ほらね、本当は私の意見もちゃんと聞いてくれる。


「いいえ、やっぱり、精一杯仕事させて頂きます。部下の面倒をちゃんと見てくれる、委員長が好きですから」
「さっきは嫌いって言ってなかった?」
「さっきのは…あー、えーっと、気のせいです!」


慌てて言えば、雲雀さんはくすりと笑って言った。


「まぁいいけど」



end.(2010,5,22)



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あきゅろす。
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