拍手『花火』 季節は夏。 これでもかってくらい、太陽がさんさんと輝き、何もしてなくても、じっとり汗をかいてしまう。 夜になっても、暑苦しいのは変わらない。 それでも、夏の夜といったら、やっぱり、 「花火ですよね」 私の心を読んだかのように、骸様が私に微笑む。 「はい!夏の風物詩ですよね」 私も、骸様に微笑み返した。 「…完全に2人の世界だぴょん」 「いつものことだよ、犬」 2人が話しているのが聞こえるけど、気にしない。 私の手には、白く光る花火が火花を散らしていた。 犬は、赤く光る花火を楽しそうに振り回している。 はっきり言って、危ない。 千種は、自分の手にある青く光る花火をじっと見つめている。 表情が普段よりも、緩んでいるように見えるのは…私の気のせい? 「皆、楽しそうですね」 言いながら、隣の骸様を見た。 真っ暗で、よく見えないけど、花火の僅かな光で骸様の顔が照らされる。 綺麗。 そう、思った。 男の人に対する評価としては、変かもしれないけど、骸様は、綺麗で、そして、儚い。 いつか消えてしまうんじゃないか、と思ってしまう。 「どうかしましたか?」 「いいえ、何も」 「そうですか」 骸様は、線香花火を取り出し、火を付けた。 チリチリチリ… 線香花火は小さいけれど、綺麗に光って、そして、消えた。 ふっと暗くなる。 気が付けば、私が持っていた花火も消えていた。 「骸様…!!」 慌てて呼べば、骸様はぎゅっと私を抱きしめてくれた。 「僕は、消えませんよ。大丈夫です」 まるで私の心を読んだように、言った。 私の耳に、骸様の鼓動が聞こえる。 骸様の腕の中で、そっと目を閉じた。 消えないで。 線香花火のように。 公開(2010,8,6〜2010,9,30) [*前へ] [戻る] |