[携帯モード] [URL送信]
その感情の名はきっと、

久しぶりの並盛です。
僕は、ゆっくりと並盛を楽しもうと…したのですが、名前がちょうどよく現れて。
名前の提案で並盛商店街へと行くことになりました。
まぁ…たまには良いかもしれないですね。


「で、何しに行くんです?」


並盛商店街へ行く途中、名前に尋ねてみると。


「え?特に何も用事無いけど?」
「…ハイ?」
「否、ぶらぶらーっと外に出たかっただけだし」


ちょ、そんなことで僕とお出かけしようって言いだしたんですか!?
ノープランですか!?
てっきり何かあるのかと思ってましたよ。


「まあ、たまには良いんじゃない?」
「本当に、君には飽きることがありませんよ」
「そりゃどうも」


名前がニカッと笑う。
本当に、この子は…何なんでしょうね。
いつの間にか、心の底から笑っている自分に気付く。
こんなことは今までになかった。
僕に接してくる人間は、僕を利用することしか頭に無かったから。
僕が何を考えているかなんて、関係なく接してきたのだろう。
だから、僕の扱いが酷かったのかもしれない。


「ねぇ骸?」
「何ですか?」
「今回は、いつまでこっちに居るの?」
「どうしてそんなことを聞くんです?」
「だって…」
「だって?」
「骸、すぐに消えちゃうから…。ずっと一緒に居たいのに」
「…」


嗚呼、そうやって君はいつも、僕を惑わせる。
名前のことを思う度、変な感情が僕の中を渦巻く。
その感情を振り払うように頭を振る。
そして溜息を吐いた。


「…名前」
「何?」
「僕は、君ほどよくわからない人間に会ったことがありません」


僕が今まで会った人間で、そんな風に言ってくれた人は居ませんよ。
そう言って少し笑うと、名前も笑った。


「だって私、骸のこと大切に思ってるもん」


それを聞いた瞬間、何かの衝動が僕を襲う。
気が付いたら、名前を抱きしめていた。


「ちょ…!!骸!?どうしたの!?」


慌てたように名前が言う。
僕の腕の中で、もがくようにしていた。
でも、僕はそんなもの全て押さえつけて。


「名前」
「…は、い?」
「ありがとう」


そう言って、名前の肩に顔を埋める。
名前は何も言わず、ただ僕の背中をポンポンと叩いた。
まるであやすように。


「人間をおもちゃとしか思ってなかった僕が、こんな風になるなんて、ね」
「…え?」
「わかりましたよ名前」
「…あの、話が全然通ってないんですけど」


並盛商店街からの帰り道、夕日が照らす中で。
ずっと探していた、その感情の名をやっと見つけました。



end.(2010,1,18)



[次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!