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不器用男の守り方
※坂田銀時の妹設定。バラガキ篇終了後。若干ネタバレかも。


「またいるんですか?」


私は正直、呆れて、うんざりしたの。
だって、いつも見張られているんだもの。


「わりぃかよ」


その人は、いつものように煙草を銜えていて、きっちり真選組の制服を着こなしていて。
凄く男前なのに。
なのに、どうして。


「私は無実ですよ」
「そんなのわかんねぇだろ」
「勝手な人ですね」
「だってお前は、あの白夜叉の妹の、坂田名前なんだからよ」


そう言って、煙草を片手に煙を吐き出す。
そして私の後ろをついてくのを諦めたようで、私まで早足で追いついて、私の横に並んだ。
いつもこんな感じなのよね。
最初は私の跡をつけていて、でも物凄くわかりやすくて。
わかってしまったら何だか居心地悪くて、声をかけてしまう。
そしたら向こうも居心地が悪いのか、私の傍へ来て並んで歩く。
いつもこの繰り返し。


「それにしてもアレだな、お前勘がいいんだな」
「否、凄くわかりやすいんですよ」
「マジでか!?」
「本当ですよ!そんなことで真選組大丈夫なんですかぁ?」


私がからかって言えば、煙草を銜えて、遠くを見るような目付きをした。


「…まあこの方が都合が良いしな」
「え?」


何を言ったのかわからなかった。


「何でもねぇよ。今日はどこ行くんだ?」
「ちょっと買い出しです」
「手伝う」


いつもこんな感じで、不思議な人。
私は容疑者で、この人は真選組の副長なのに。
見張られているのに。
この人がもし真選組じゃなかったら。
私が坂田銀時の妹じゃなかったら。
こんな出会いをしなかったら。
でも、私は私で、この人はこの人だから出会えたのよね。


「何度も言うようですけど」
「んだよ」
「お兄ちゃんとは頻繁に会いますけど、別々に暮らしてます。攘夷活動に参加したこともないです」


昔のお兄ちゃんは白夜叉として暴れてたみたいだけど、私はその頃のお兄ちゃんに一切関わらないようにされてたから、本当に何も知らないのよね。
今だって、お兄ちゃんは(お兄ちゃん曰く)善良な市民だし、私は無実よ。


「大丈夫だ」
「え?」
「今日で終わるから」


そっけなく言われたその内容の意味がわからなくて、私は首を傾げるしかなかった。



「知ってるかー、名前」
「何?お兄ちゃん」
「最近また真選組が暴れたらしいぞ。おー恐い恐い。やっぱ野蛮だねぇ」


あの人が私の前に現れなくなって、一ヶ月くらい経ってた。
そんなある日、お兄ちゃんが万事屋で私に知らせてくれた。


「どんな事件?」
「一ヶ月前にな、攘夷浪士のアジトを潰したってよ。…ってこれ、名前の家の近くじゃねえか!危なかったな、お前」


お登勢さんから貰ったと言う新聞を熱心に読んでいくお兄ちゃん。


「おいおい…名前…お前、ホントよく無事だったな」
「え?」
「捕まった奴が言ってるんだとよ、『白夜叉を誘き寄せるところだったのに』って。意味わかんねぇけど。でももし、名前が妹って知ってたなら、ヤバかったんじゃね?」


私が無事だったのは、あの人が傍にいたからだ。
もしかして、私を守ってくれてた…?


「ちょ、名前!どこ行くんだ、オイ!?」


私は気付いたら万事屋を飛び出して、かぶき町を駆け回っていて。
そしたら、見つけたの。
パトカーの脇で、一服しているあの人を。


「副長さん!」
「うお!?」


呼びかけたら、向こうはとてもびっくりしたみたいで、こっちを向いた。


「お前は…」
「私のこと、守ってくれてたんですね。ごめんなさい、気付かなくて。ありがとうございました」


一気に捲くし立てて、頭を下げた。


「礼なんて別にいらねぇよ。俺ら警察なんだ、当たり前だろォが」
「…私、わからないことがあるんです」


自信と不安と、両方あるけれど。
当たってみないよりはいいかなと思ったの。


「わざわざ副長さんが出る幕じゃないと思うんです。こんな娘一人を見張るなんて。自惚れだったら恥ずかしいですけど。ねえ副長さん、私を守ってくれたのは…」



end.(2012,3,1)

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あきゅろす。
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