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confession?

お昼に購買部でパンを買って、そのまま教室に戻ろうと思った。
廊下を歩いていれば、前の方には見慣れた坊主頭。


「梓ー!」


少し声を張って、前の方にいる坊主頭―――花井梓に声をかける。
応答も反応もなし。
聞こえなかったのかな?


「あーずーさー!」


もっと声を張ってみた。
そうやって声を発しながら、梓の元へ走っていく。
梓の背中が目の前まで迫ってきたとき、梓は急にくるりと回れ右をし、あたしと向かい合った。


「お前な、人の名前をでけぇ声で呼ぶな!ここ学校だぞ!」
「だって梓が返事してくれないから」
「大体、下の名前で呼ぶの止めろって何回言やぁわかるんだよ」
「えー?梓って名前なのに、何で梓って呼んじゃいけないわけ?あたしわかんないな、梓。教えてよ、梓」
「お前ワザと下の名前連呼してんだろ」


呆れたように言う梓に、そしらぬ顔をしてニコッと笑って誤魔化した。
でもそろそろ悪ふざけやめないと、怒っちゃうかも。


「で、何で下の名前で呼んじゃ駄目なの?」
「あ、あぁ、それは…」


何だか言いにくそうにしている梓。
手を後ろ頭のところへ持っていって、「どーすっかなー」なんて言ってる。


「理由がないってことは、呼んでもいいってことで…」
「だー!!違ぇよ、女みたいだから嫌なんだよ!!」
「…へ?」


驚いて、まじまじと梓を見つめた。
梓は恥ずかしいのか、少し頬を染めていた。
目線もあたしに合ってない。
少し上の方を向いている。


「梓って、いいと思うけど」
「は?」
「梓は、ヨグソミネバリの別名で、カバノキ科の落葉樹林。山地に自主し、樹皮は黒みがかった赤土色ではがれやすく、冬緑油に似ている匂いがする。葉は卵形で緑にぎざぎざがある。5月ごろ、尾状の雄花穂と上向きの雌花穂をつけ、果穂は楕円形。材は堅く、器具や家具材として使用。古くは弓や板木に利用された」
「…で?」
「要するに、梓っていうのは堅くてたおやかな木ってこと。あたし、梓好きだよ」
「…え?」
「しっかりしてる梓が好き」


梓の目は驚きで丸くなっていた。
まじまじとあたしを見つめている。
どうやら言葉を失っているみたいだ。


「それってどういう…」
「…あ、昼休みかなり過ぎてる!ちょ、パン食べ損なっちゃうじゃん!じゃあね!!」


あたしは、その場から駆け出した。
ドキドキドキ。
走ってるからじゃなくて、もっと違う意味で、心臓が高鳴っていた。



一方、残された花井。


「…アレってまさか」


告白、なのか?
イヤでも、木の方の梓が好きってコトかも…。


「だぁあああ!!ワケわかんねぇ!!」


そんなことをぶつぶつ言っている花井が田島に目撃され、からかわれるのはまた別の話。



end.(2010,10,26)

・・・・・・・・・・
えーっと、いかがでしたでしょうか?
星原の花井はどうも白くて、押しに弱いんですよね。
だから、ヒロインが押していく感じになっちゃいました。
でもこんなのもありかな、なんて(笑)
“梓”の木については、諸説あるようです。
今回は一番有力な説、“梓=ヨグソミネバリ”説を扱いました。
まぁどんな説にせよ、“梓”という木は、強くてたおやかな木みたいです。


雄飛様、この度は相互となって頂き、有難う御座いました!
これからもよろしくお願いします。



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あきゅろす。
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