拍手『読書』 食欲の秋、スポーツの秋とか言うけど。 あたしにとっては読書の秋よ! …ちょ、誰よ、暗いとか言ったの!? いいじゃない、好きなもんは好きなんだから! 「あ、面白そ…」 今日も放課後、いつものように図書室で本を探した。 なんとなく気になった本に指をかける。 すると、あたしの手より大きい手が重なった。 びっくりして大きな手をたどれば、そこにいたのは、阿部隆也くんだった。 「あ、わりぃ」 阿部くんが、慌てて手を退ける。 なんか、もったいないことしたなって思った自分がいた。 「あ、いやいや、ごめんね?あたしの方こそ…」 「別に」 阿部くんの手と触れた自分の左の手の甲が、熱い。 阿部くんが触れたところだけ、発熱してるみたいだった。 「あ、阿部くんは、この本、借りるの?」 「イヤ、別に…気になっただけだし…」 そう言って、阿部くんは図書室の壁にある時計を見上げた。 瞬間、顔が焦ったものとなった。 「やべっ、俺、部活行かねぇと!」 「あ、行ってらっしゃい、頑張ってね!」 あたしが声をかけると、阿部くんは少し笑って、 「おう」 と手を上げて、去っていった。 残されたあたしは、阿部くんと巡り合わせてくれた本を借りようと、その本に手を伸ばした。 そんな秋。 公開(2010,10,1〜2010,11,28) [*前へ] [戻る] |