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Many happy returns of the day!

ついに、この日が来た。
俺の彼女、名前の誕生日。
0時になって、この日が来た瞬間の俺は、ただ携帯を握り締めて、表示された時刻を眺めるだけだった。


「…クソッ!」
「獄寺くん?」


十代目の声がして、はっと我に返る俺。
あぁなんて失態だ、平和な教室の中と言っても、十代目のお傍にいながらボーッとするなんて…。
右腕失格だぜ…。


「さっきからボーッとしてるけど、大丈夫?」
「い、いえ…何でもありません十代目。スミマセン」
「いや、別に謝らなくていいけどさ。元気ないなーって思って」


こんなに自分を心配してくれるなんて…感激ッス、十代目!
流石です!!


「そーいやーさ、今日だよな、名前の誕生日」


野球バカがまさかの爆弾発言。
俺は思わず固まった。


「そーだね。名前とは1年のとき同じクラスだったけど、今は違うクラスだから、なかなか会えないけど…」
「俺、0時ぴったりに、メール送ったけど、ツナは?」
「凄いね、山本。俺もさ、0時に送ろうと思ってたんだけど、寝ちゃっててさ」
「しょーがねーよな、深夜だし」
「うん…。だから、朝早くにメール送ったよ」


ダメダメだよねーなんて苦笑する十代目。
山本も、メール送ったのか…それも、0時ぴったりに。
本当は、俺だってメール送りたかった。
だけど何打てばいいのかわかんなくて。
そもそも、俺はこんなことするキャラじゃねぇし…。
けどやっぱ誕生日だし、何かしてやりてーし…。
とか思いながら携帯を握り締めてたら、朝になってたんだよな。
十代目のように、朝メールすることもなく、そのまま。
結局、今のところ、名前に何も言えてねぇ。
顔を合わせてもねぇ。


「ちくしょー…どうすりゃいいんだよ…」


只今の全財産、75円。
こんなんじゃプレゼントも買えねぇ。
そもそも、もっと前にいろいろ用意すべきだったんだろーが、何をあげれば喜ぶのかわかんねぇし、こーゆーの苦手だ。
部屋で悩みに悩んだ末、俺は名前の電話番号をプッシュした。


―――「もしもし?」
「…俺だけど」
「あ、隼人!?それとも、オレオレ詐欺!?」
「んなわけあるかよ」
「冗談だよ。どうしたの?」
「…今から、そっち行っていいか?」
「え?いいけど?」


ピンポーン。
名前の家の前。
チャイムを鳴らせば、名前が出てきた。


「悪いな、こんな時間に」
「ううん。大丈夫」


少し暗くなってきた空。
もう夕日も見ることが出来ない。


「今からちょっと、一緒に来てくれねーか?」
「え、うん、いいよ?」


戸惑う名前の手を掴んで、歩き始めた。
空を見上げれば、一番星が輝き始めてる。


「ねー隼人」
「んだよ?」


後ろを振り向けば、名前はニッコリ笑っていた。
名前は、俺の隣よりも、俺の後ろを歩くことが多い。
本人聞けば、後ろの方が落ち着く…とか言ってた気がする。


「今日は積極的だね。手、繋いでくれるなんて」
「べ、別にいいだろ」
「うん。嬉しいなーって思って」


慌てて前を向いた。
絶対、今の俺の顔は真っ赤だ。
こんな顔、見られたくない。
てか、反則だろ、あんなの!


「わー、綺麗ー!」


キラキラした目で名前がはしゃいでいる。
見上げれば、視野いっぱいに広がる満天の空。
この空き地は、俺の秘密の場所。
けど今日から、俺と名前の秘密の場所だな。
なんて思った自分に、クセェと苦笑した。


「凄いねー!ありがとう、隼人」
「お礼を言うのは俺の方なんだけど」
「え?」
「生まれてきてくれて、ありがとな…名前」
「隼人…」
「誕生日、おめでと」


思ったより、さらりと言えた。
すると、名前が泣き出した。


「な、おい、大丈夫か?」


慌てて名前の傍に行く。
なす術がなくて、名前を抱き締めた。
小さな体だった。


「はやとのばぁか…」
「馬鹿ってお前…」
「だって…忘れてると思ってたんだもん。メールもなかったし…」
「それは…何打てばいいかわからなくてだな、」
「そんなもん『おめでとう』の一言でいいのよ!それだけで…それだけで、女の子は嬉しいもんなの!」


顔を上げて、潤んだ瞳で睨む名前。
はっきり言って、逆効果だ。


「…悪かったな」


そう言って、更に名前を抱き締めた。
可愛くて仕方なかった。


「山本くんもツナもメールくれたのに…隼人のヘタレ」
「…う」
「馬鹿、理論屋、意地っ張り、ヘタレ」
「…」


…何も返せねぇ。
つか何で俺、こんなに言われてんだよ。
俺まで泣けてくるじゃねーか。


「…でも、大好き。ありがとう」


名前の手が俺の背中に回って、抱き締め返された。


「俺だって…大好きだからな」



end.(2010,10,3)

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