1 市内にある精神病院。 その一室に、1人の少年が花を持って訪れていた。 「…………オカアサン」 そろそろ、良いでしょう? せめて、こんな晴天で空の綺麗な日に逝って欲しいよ。 だから、もう諦めてよ。 ベッドで寝ている女性に悲痛そうに話し掛ける。 そろそろ帰ろうと椅子から立った時、掠れた声がした。 良く聞いてみると、ごめんなさい。と謝りながら自分達の名前を呼んでいる。 どうやら、死ぬよりも命拾いしたらしい。 しかし、直ぐに暴れ初めた。 ナースコールを押し、速やかにその場を離れた。 「………どうだった?」 外で待っていたもう1人の少年が話し掛けて来た。 その返答に左右に首を振る。 「何十秒単位で意識がハッキリしてた」 「そぅ……アレ押した?」 「多分死なない」 そう言いながら、今度は縦に1回頷く。 「どのみち医療の発達で生き延びる」 「ぅん」 解りきってたコトだろ。 確かに解りきってたコトだ。 「ケド………」 「警察内部で迷宮入りになったこの件を調べてる奴がいる」 その言葉にビクッと反応した。 「ちゃんと《未来》が見えてるんだろ?」 その《未来》に変わりはない。 ぃゃ、変えるつもりはない。 「…………俺はな」 最後にそう付け足した。 なんせ、自分がそうだからって周りもそうとは限らない。 だから、とりあえず自分のコトを言ったまでた。 「ほら、収録に遅れるぞ」 「ぇ…もう、そんな時間?」 「時計見てみろ」 と、急いでスタジオに向かった。 [次へ#] [戻る] |