◆甘い時間/観月はじめ 「どう?なんとか終わりそう?」 「そうですね…あと1時間もあれば終わると思いますが」 「観月でもそれだけかかるんだ…ごめんね」 「データを再び入力するだけです。それほど難しい訳ではありませんし、気にしなくて良いですよ名前」 「けど…」 「データをディスクに保存していなかった僕もいけなかったんです」 そう、僕の不注意でもあったんだ。 まさか名前が僕のパソコンのデータを間違って消してしまうなんて。 けれど名前が消してしまったのはほんの一部。 僕の頭の中に入っているデータだから再びデータを入れてしまえば元に戻る。 「本当にごめん。私どうしたらいいんだろう…」 「名前が落ち込んでいたってしょうがない事です。そうですね…名前は紅茶を用意してくれれば良いですよ」 「紅茶?それだけで良いの?」 「ええ、それで充分です」 「わかった。じゃあ少し待ってて」 本当はデータを入力してしまうのに1時間もかからない。 ただ、少しでも名前と居られる時間を延ばしたかっただけ。 僕の我が儘、ですね。 けして、正直には言いませんけど。 「ねー観月、この間作ったお菓子もあるんだけど食べるー?」 「お菓子ですか?あなたのお菓子は美味しいですからね。是非、お願いします」 「うん、わかった。えっと…こんなかんじで良いかな」 名前の淹れた紅茶に手作りのお菓子。 名前と二人きりの幸せの一時。 「お待たせ観月」 僕にとっての、甘い時間なんだ。 END [*前へ][次へ#] [戻る] |