◇空の下/甲斐裕次郎
退屈だなあ…この授業。
先生に見つからないように、ケータイでもいじっとこう。
ん?メールがきてる。
【名前。空がきれいさぁ】
空?
【今日は天気いいから確かにきれいだね。でも裕次郎がそんなこと言うなんて珍しいね】
【空をずっと見てたら思っただけさぁ。名前もわんと一緒に空見ないか?】
【今授業中だから無理じゃない。クラスも違うし】
【わんは屋上にいるやんにー】
【屋上?裕次郎もしかしてサボってるの?】
【実は遅刻してきたんさぁ。で、一時間目はわんの苦手な数学だから、別にいいかと思って屋上にいるさぁ】
【サボってるわけね裕次郎】
【それで名前、来るのか?】
今、退屈だからな…。
【行く。私もこの授業退屈だし】
【お、やったさぁ!わん屋上で待ってるやっしー、早く来いよ!】
【わかった。じゃあ少し待っててね】
「屋上に行くんですか?名前」
「永四郎…?もしかして今のメール見てた?」
「ええ、隣の席ですし全部見えましたよ」
「…ね、永四郎。今から屋上に行くのは先生には黙っててくれない?保健室にでも行くって先生には言うからさ」
「俺になんの得があるんです?」
「えー…。じゃあ、今度ソーキソバ奢ってあげるから!」
「…仕方ないですね。黙っててあげますよ」
「ありがとう永四郎!」
「早く甲斐くんの所に行くことですね。今ごろ、待ちくたびれてるかもしれませんよ」
「うん、また後でね永四郎!せんせーい、私ちょっと保健室に行ってきまーす!」
そんなに元気なのに、保健室に行くとは…。
サボることがバレバレだと思うんですがね…俺は。
「裕次郎ー!」
「名前!やー遅いぞ!早く来いって言ったやんにー!」
「ごめんごめん。ちょっと永四郎に捕まってたの」
「木手に?ぬぅやがー?」
「実は裕次郎とのメール見られててさ。だから黙っててって頼んでたの」
「ふーん」
「頼んできたからこの時間は大丈夫だと思うよ。それにしても、授業サボるの初めてだなー」
「名前はマジメに授業でるからなぁ」
「そりゃあね。サボりたいと思うことはあるけど、1人でサボっても楽しくないもん」
「今日はわんと一緒にサボりさぁ」
「そだね」
「名前。わんの隣に来るさぁ」
「うん。屋上から見る空って本当きれいねー」
「だろ?きれいな空だから名前と一緒に見たかったんやっしー」
「裕次郎。ありがと」
「わんの方こそ、ありがとうさぁ。授業サボってまで、名前が来てくれたことには感謝してるさぁ」
「あはは。感謝なんかしなくてもいいって。私も裕次郎と一緒にサボって、きれいな空を見れて嬉しいんだから」
「名前…」
「ねえ。一時間目が終わるまで、ずっと空見とこうよ裕次郎」
「ああ。名前が一緒ならずっと見ててもいいぐらいさぁ」
「私も裕次郎がいるなら、ずっと見ててもいいな。まあ、無理だけどね」
「授業全部サボったら、わったー呼び出しくらうだろうな」
「うん。先生達に起こられるね、絶対」
「それは嫌さあ」
「私も起こられるのは嫌よ」
そんな他愛のないことを、裕次郎と喋りながら空を見てた。
また今度、裕次郎ときれいな空を見れたらいいな。
できれば、学校が休みの時に二人でね。
↓オマケ
「名前、甲斐くん。いい加減起きなさい」
「ん…?」
「目が覚めたようですね甲斐くん」
「…き、木手!?」
「うーん…どうしたのー?ゆうじろ…」
「おはようございます名前」
「永四郎っ!?え!なんでここに!?授業は…」
「とっくに一時間目は終わりましたよ。2人は二時間目もサボる気ですか?」
「…いや、そんなつもりは」
「裕次郎…私達いつの間にか眠ってたみたいだね…」
「…そうみたいさぁ」
「さて、甲斐くんに名前。早く教室に戻らないとゴーヤ食べさせますよ」
「木手、ゴーヤはなし!名前、急いで教室に戻るさあ!」
「う、うん!永四郎、呼びに来てくれてありがとね!」
「まったく…。世話のかかる2人ですね…」
そう呟き、木手も教室に戻っていった…。
END
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