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立海大附属
◆初めましてとさよならを/切原赤也


「初めまして」



そう言って俺の目の前に現れたのは、知らないヤツだった。



「あたしは名字名前っていうの。切原赤也くんだよね。よろしく」



差し出された手を俺は無視した。



「……」



相手は立海の制服を着てたけど見たことのないヤツだったし、なんだか関わってはいけないと思った。



「つれないのね切原赤也くん。でも、いいよ別に。あなたにはこれからも逢いに来るから」



それだけ言って名字ってヤツは俺の前から去って行った。



「なんだあいつ…?」



変な女…。















それからというもの。


毎日のようにそいつは俺に逢いに来ては去って行った。



逢いに来て、話しかけてくる。
俺がうちあわなくても話しかけてくるのを止めない。



…けど、それが嫌だと思わない俺がいて。



だんだんと名字が気になり始めた……そんな時。


「赤也、ちょっといいか?」


「なんスか?柳先輩」


「毎日お前に逢いに来ている子だが…」


「名字?あいつがどうかしたんスか?あ、そういえば今日はまだ来てないなー」


「赤也…やはり知らないんだな」


「知らない…?」



柳先輩は何か言いづらそうな顔をしていた。



「柳先輩、なんスか?知らないって?あいつに何かあった…」


「いや、何かあった訳ではない。ただ…」






「柳さん、それから先はあたし自身が言います」






「名字…わかった。ならば俺は別の所に行こう」


「ありがとうございます柳さん」


「ではな」



名字は柳先輩に頭を下げて見送ると俺の前まで来る。



「切原くん、ちょっと伝えなきゃいけないことあるんだけど聞いてくれる?」


「なんだよ伝えなきゃいけないことって?それより、さっき柳先輩が言おうとしてたのは」


「うん、それも言う。だから聞いてくれる?」


「あ、あぁ」



「ありがとう切原くん。あたしね、切原くんのこと好きなの」




え……?




「それとあたし転校するんだ」




…………は?




「はぁ!?好きって…いや、その前に、転校って…!?」


「両方ともホントのこと。あたし切原くんが好き。で、明日には転校するの。だからお別れを言いに来たんだ」


「あ、明日…?」


「うん」



頭がこんがらがってきた…。

こいつは何を言っているんだ…?



俺のことが好きで。
明日には転校で…お別れを言いに来た…だと?



「名字、お前…」


「切原くんありがとう」


「え…?」


「少しの間だったけど切原くんの近くに居れた。切原くんと喋ることも出来た。楽しかったよありがとう」



名字はそう言って、笑顔を俺向ける。



なんで、そんな顔出来るんだよ…?



「あと…さよなら切原くん」


「あ、おいっ!!」

さよならと告げたとたんに名字は走り出してしまった。


追いかけようにも足が棒になったかのように動いてくれない。



「くそっ…!名字!!」



大声で呼ぶ。




せめて…せめてこれだけは伝えないといけない。



そう思った。






「名字!!俺も、俺もお前が好きだっ!!!」





気持ちを吐き出すように大声で叫んだ。





一度だけ名字は足を止めたが、振り向くことなく走り去って行ってしまった。




「………っ」




自分の気持ちに気付いたというのに、名字はもうここにはいない…。





『…さよなら切原くん』





その言葉と名字の笑顔が、俺の頭を離れることはなかった…。













END

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