立海大附属
◆君を忘れない・2
「お〜い幸村ー」
「あれ、ブン太と赤也じゃないか。学校早く終わったんだ?」
「おう、昼までだったんだぜぃ。で、今日は見舞いに来たってわけ」
「丸井先輩は見舞いのケーキを自分も食べたいだけでしょ」
「いいじゃん別に」
「ふふ。ブン太らしいね」
「でよ、幸村。何が食べたい?ショートケーキにチョコレートケーキ、チーズケーキにモンブランがあるぜぃ」
「ブン太が決めていいよ。俺は残ったものでいいから」
「お、やったぜ!じゃあ俺は…」
「丸井先輩、やっぱり見舞いになってないっスよ…」
「あー!ケーキだ!」
「うわあっ!何だよ、お前!ビックリさせんなよな」
「精市くん、こんにちは〜」
「こんにちは名前」
「この2人、精市くんのお友達?」
「ああ。テニス部仲間だよ」
「ふ〜ん」
「部長、誰っスか?こいつ」
「あー、こいつ呼ばわりはいけないんだぞー。私には名字名前っていう名前があるんだから」
「確かにそうだね。ブン太、赤也。彼女は名字名前。俺の友達だよ」
「へー。俺、丸井ブン太シクヨロ」
「俺は切原赤也」
「よろしくね、丸井くんに切原くん♪それで、そのケーキ私にもちょうだい?」
「ん?まぁ4個あるからいいぜぃ」
「やった!ありがと丸井くん」
「それじゃあ、みんなで屋上に行って食べようか」
「いいっスねそれ」
「おいし〜!」
「だろ?俺が知ってるケーキ屋の中で、一番うまい店のケーキなんだぜ?」
「へ〜。ホントおいしいねこのケーキ」
「名前、幸せそうだね」
「うん、幸せだよ♪」
「ちょっ、丸井先輩!俺のケーキを横から食べようとしないで下さいよっ!」
「だって赤也のケーキもうまそうなんだぜぃ?」
「だからって俺のを食べようとしないで下さいよ…」
「あはは。丸井くんって食いしん坊………っ!」
「名前…?大丈夫?顔色が…」
名前は、胸をおさえ苦しそうな顔をしていた。
「ん…へい…き。いつもの、こと…」
「おいおい。平気そうに見えないぜぃ?」
「大丈夫かよ?」
「心配、してくれて…ありがと。ごめん…私、先に戻るね…」
そう言って名前は屋上から出て行った…。
「名前…」
翌日。
名前は俺に合いに来てくれたけど、明らかに体調が悪そうだった。
大丈夫か聞いたら彼女は大丈夫って答えたけど、全然大丈夫そうには見えなかった…。
その日はそれだけで部屋に戻って行った。
明日は元気になって来るから、またいろいろ話そうね。
そう言って…。
「……名前」
その次の日。
名前は元気にやって来た。
「こんにちは、精市くん。ごめんねおとといは…」
「そんなことより、体調は大丈夫なの?」
「うん…。今は何とか大丈夫。心配かけちゃったね…ごめん」
「謝らなくていいよ。それより名前、聞きたいことがあるんだけど」
「…何?」
「君はどこが悪くて入院してるの?」
「……」
「名前」
「…私、心臓が悪いの」
「……心臓が?」
「うん。生まれつき弱くて…1年前に急に心臓の機能が低下しちゃって、それからずっと入院してるの…」
「そうなんだ…」
「時々発作が起こって、胸が苦しくなるんだ」
知らなかった…名前は心臓が悪かったなんて…。
「でも今は本当に大丈夫だから!ね?またいろいろ話そう?」
「名前」
「精市くん…?」
「本当に、大丈夫なの?」
「え…?」
「先生は大丈夫だって言った?」
「……」
「心臓が悪いのなら、いつ何が起こってもおかしくないんだ」
「それは…そうだけど…」
「昨日も顔色悪かったんだから、安静にしといた方が…」
「精市くん」
「…名前?」
「大丈夫だよ、私は。精市くんは私のことを心配してくれてるから、そんなこと言うんだよね。ありがとう、精市くん」
「………」
ありがとう、なんて…。
ただ俺は…。
名前が心配で…。
「本当に、私は大丈夫だから」
名前……。
「大丈夫、だから…」
彼女はそう言って、微笑んだ…。
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