立海大附属
◆君を忘れない/幸村精市/※ヒロイン死ネタ
……もう迷いはない。
俺は手術を受け、再びテニスコートに立つんだ。
「ねえ、きみ中学生だよね?」
弦一郎との電話が終わった直後、声をかけられた。
女の子だ。
「そうだよ。中学3年生」
「あ、やっぱり。私も中3なんだよ。名前なんて言うの?」
「俺は幸村精市。君は?」
「私は名字名前。幸村精市くんか…精市くんって呼んでいい?私のことは名前でいいから」
「うん、いいよ」
「ありがと」
同学年の女の子が入院してるなんて知らなかったな。
「さっきの電話、ちょっと聞いちゃったんだけど…手術するとか」
「うん、今度手術受けるんだ」
「私には精市くんは元気そうに見えるけど。ちなみに手術っていつ?」
「一週間後ぐらいかな」
「一週間後……」
「どうかした?名前」
「…ううん、何でもない。ねぇ精市くん」
「何?」
「手術受ける日まで遊びに行ってもいいかな」
「俺のところに?」
「うん。精市くん、手術するなら不安なこともあるでしょ?だから、私で良ければ話し相手ぐらいになれるし。少しでも精市くんの不安がとれたらいいなって思って」
「……」
「私も手術は何回か受けたことあるけど、手術受ける前って不安だらけだったもん。成功するかな…大丈夫かなって…」
「名前…」
「だから精市くんも不安じゃないかなって思って…」
…名前は手術を受ける俺を心配してくれてるんだな。
「正直に言えば私がヒマってのもあるんだけど。あ、でもさっき言ったのは本当だからね?」
「名前は俺を心配してくれるんだね。ふふ、いいよ遊びに来ても」
「本当?」
「うん」
「ありがと精市くん!」
「お礼言われるようなことじゃないよ。入院生活が暇なのは俺も同じだからね」
「精市くんっていい人だね」
「名字さん!こんなところに居たの?早く部屋に戻りなさい!」
「あ……やばい。じゃあ精市くん、明日遊びに行くから」
「わかった。またね名前」
「うん、またね!」
名前も入院してるってことはどこか悪いんだろうか…。
手術を何回か受けたことあるなんて言ってたけど。
一週間後、手術か…。
翌日―。
「精市くん♪」
「こんにちは名前」
「こんにちは〜。早速来てみたよって……ねぇ、窓のとこにあるの鉢物だよね?」
「ん?ああ、これは俺の後輩が持って来てくれたんだ」
「え、でも鉢物って根付くっていう意味でお見舞いにはダメなものでしょ?置いとくのやめた方がいいんじゃない?」
「うん、そうなんだけど。持って来てくれた後輩は、きっとその意味は知らないと思うんだ。ただお見舞いとして持って来たんだろうね」
「そうなんだ。じゃあ今度その意味教えてあげなきゃね」
「ふふ、そうだね」
それからいろんな話を名前とした。
名前は本当に明るい子で、話していてとても楽しい。
立海のテニス部のみんな以外でこんなに話したのは久しぶりだ。
「そろそろ部屋に戻るね私」
「うん。楽しかったよ、ありがとう名前」
「私も楽しかった。また明日来てもいい?」
「もちろんいいよ」
「ならまた明日ね、精市くん」
「うん、じゃあね」
いつの間にか夕方になってたんだな。
話し込んじゃったな。
また明日、か。
ちょっと楽しみだ。
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